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2024年下半期自選十句鑑賞 その3

沖原イヲさん
風鈴に海を見せるように なんて優しい!きっと佳い音で鳴ってくれますね。
渡り鳥の御句はカメラワークが素敵です。宇宙の果てから地球を見ていたのがグングン近づいて、青い球体だった地球が平面になると、渡り鳥が群れ成して飛んでいる場面。まるで『ザ・サイエンス』とか『ネイチャー』とかいうテレビ番組のワンシーンです。上田五千石の句のよう。
イヲさんの御句の語り口が多彩で、読んでてわくわくしちゃう。

夏湖乃さん
青虫の御句は頭韻が面白いですね。「あ」の音の繰り返しで明るいリズムが生まれ、下五の「透きとほる」にピシっと着地、気持ちいい!と感じます。
案山子の御句は優しさあふれる景。子どもを高い高いであやすようなしぐさ、目に浮かびました。そんな風に抜いてもらったら、役目を終えた案山子もさぞや嬉しかろう、と。
日々俳句を楽しんで詠んでいらっしゃることが伝わります。

木村弩凡(どぼん)さん
水着、いいですねぇ~。お子さんがめいっぱい泳いで疲れて眠ってしまって、その間に親は水着を干してやる、また明日泳ぐから。夏休みの実感、と思いました。微笑ましい景。
秋茄子の御句も好きです。とろりほどける、なんとも美味しそう!
貰い湯を私は子供の頃に経験しましたが、今ってそういうことあります?親戚のお家とか、気安いお宅でないとできないことですよね。そういう助け合いのできる地域に住むことがもう幸せなのかも。

海沢ひかりさん
聖夜の御句がとても好きです。「ほげほげ」って赤ちゃんの様子を表すオノマトペとして天才的に上手い!みんな赤ちゃんのまわりに集まってきて、優しく見ている様子が、聖夜の厳かで清らかで暖かな空気感に似合っていると思いました。
水温むの猫は水を飲んでいるところ?うちにも猫が居るのでリズムわかります~。

翡翠工房さん
フラスコの影に涼しさを見出されるのが佳いですね~。
三葉虫は化石を掘り出しているところでしょうか?夏休みの宿題だとしたら、時間かかるけど楽しい!宿題と思います。
海牛の角を「惚ける」と表現されてるのが素敵!小望月との取り合わせも佳き~。

家守らびすけさん
ネクターと鷗外忌の取り合わせにビックリ!!そして意外にも合う!なんか合ってる!7月9日ならネクターが温くて甘いのも納得です。なんというか鷗外の文体にネクターが似合いそうな。
寝酒の御句は寂しいのだけど、何か達観めいてもいて、下五「けり」が佳いですね。

亀田かつおぶしさん
夏の鴨の「しぴしぴ」「ぽよ」が楽しすぎます~。なんと自由なオノマトペでしょうか。
鰤の眼の二千が超迫力!市場のコンクリートの床にずらーーーっと鰤鰤鰤。眼だけを言ったことで余計にその力が迫ってきますね。
能登に一日も早く平穏が訪れますように・・・・

ぞんぬ/塗野尊人さん
八月の御句が印象的です。波音の方が波の映像よりもあとからやってくるのは科学的に正しいのだろうと思いますが、どの波音がどの波に対応するかなんて聞き分けはできないとも思うのです。そこをあえてぞんぬさんは一句に詠まれた。八月だから成り立つ、波に関する斬新な把握、と感じました。
十句がそれぞれの語り口で詠まれていて、型にはまらない詠みぶりがとても羨ましいです。

五味海秀魚さん
夏休の御句に度肝を抜かれました。そう言われてみたらそうだなと妙に納得です。理由はわかりませんが。
ハンモックは描写の順序が佳いですね!百もハンモックが吊られている場所って、大きな大きな船の、船員が雑魚寝している船底かしら?大航海時代の新大陸を目指す船かも。
牡丹焚火の視点も素敵ですね。体のどの部分にもっとも焚火の熱を感じるか、明確に捉えて詠まれたことが、句の真実味につながっていると思いました。

真井とうかさん
夏の海が俯瞰図となるのは・・・パラセーリングでしょうか!帆に風を受けて海の上高く高く鳥の視点で。
秋の火葬場から千の雲が生まれるという詩が素晴らしいですね。煙が立ち上っていく様子を亡骸がみんな雲となって空へ昇るところなのだと思えたなら、遺される寂しさも悲しみも少し薄らぐような気がして。
※とうかさんのプロフィールに固定されていたので鑑賞文書いたのですが、
 2022年の自選十句でした(汗)

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