見出し画像

2024年下半期自選十句鑑賞 その8

さおきちさん
蜜柑の御句、あわき湿度という措辞が言い得ていると思います。握ると蜜柑はしっとりなじみますよね。
煙草干すの御句は元々農村だったところに大きな道路ができてしまった景でしょうか?昔からある建物は往々にして道路よりも相対的に低くなりがち。煙草畑のかたわらに取り残されたような小屋ならば、なんとも寂しい風景。田畑の広がる景色は美しいのですけどねぇ。生活の便利を追い求めると、無粋なバイパスとか抜けちゃってねぇ。
お早いご快癒をお祈りいたします。

小田毬藻さん
草笛の御句が微笑ましくて佳いですね。子供たちは登校時に草笛吹きながら歩いてくるんだなとわかります。窓の下は草笛だらけでしょうね。
桃の力凄いなぁ、と素直に感心したのが痴話喧嘩の御句。あんな美味しい物を喧嘩しながらいただくわけにはまいりません。仲直りして分け合って美味しいねと召し上がる二人が見えてきます。睦まじきは美しき。

蒼空蒼子さん
蜜柑の灯るって素敵な表現。入院中の患者さんたちはトレーの上の蜜柑を嬉しくご覧になるのでしょう。蜜柑の色も香りもあたたかいですね。
春のバスも深い内容を詠んでおられますね。人はいつか死ぬ、その真理を春のバスがゆったりと運んで走っていきます。遺された人の悲しみを知っているみたいに。
検査着を使った方が畳んで台に置かれたのをどこか痛々しい気持ちでご覧になったのかしら・・・。検査結果があまり良くなかったことを予感させる寒さです。

柚木みゆきさん
すくすく きゅるきゅる オノマトペの使われた御句のしらべが佳いですね。
天の川の御句、涙の単位という発想が新しいと思いました。一夜泣き明かして『涙1』二晩目も泣いて『涙2』親しい方のご逝去なのか、それとも失恋か、理由は何であれ「でせうか」と問いかける句末が切ないです。
冬苺の御句に救われたような気がしました。母子ともに健やかであってほしいものです。

はぐれ栃餅さん
築地松の御句は視点の誘導が滑らか。「角の鋭角」は敷地の変形ゆえと読みましたが、松の先にいわし雲を配することで自然に読者の目線が空へと誘われます。松の緑と雲の白、色彩の対比が活きています。
星月夜は漱石の句を本句取りなさったものでしょう。月が綺麗に対して、星月夜は愛に応える、素敵!ロマンティックな御句。
黒板も学校生活においては日常の出来事でしょう。「冬を」となさったのがテクニカルポイントでしたね!

冬野ともさん
香水を一滴。これは休日出勤に気が乗らない自分を励ますための、ですね。ともさんにとっての出陣支度はおしゃれだわ。
新雪の御句は直喩が素晴らしく効いています。靴の跡がくっきりとついていたのだと思いますが、この「痛み」とは、きりきり刺しこむような痛みでしょうか。鈍痛ではなさそうな。

まっちゃこ良々さん
お母様は生前ご家族に愛されていらっしゃったのですねぇ。好物を命日に各自が持参するくらい。みんながお母様の優しかったことを懐かしみながら召し上がるんでしょう。佳い光景です。
喪服の輪が花見、という意外な取り合わせにちょっとビックリしましたが、葬儀ではなく法事ならあり得ますね。爛漫が効いてます。

佐藤志裕さん
引継書の御句がとても気になります。葉桜の頃に引継ということは、前任者が急にお辞めになったか、病気等で休職なさったか。後を受ける人も大変ですよね。筆圧が強いということは、責任感のある、真面目な方だった?ひょっとしたら退職したくない想いがあって、文字を書く手に力が入っていたのかも。一句からさまざまなことを想像しました。それだけの力のある御句でした。

香田ちりさん
ちりさんの日常詠は微笑ましい御句がとても多いですね。
蚊に対して「夫からどうぞ」とは(笑)パートナーへの信頼があればこそでしょう。
ゼリーをスプーンですくって「お、この断面は」と気づくところに俳人魂を感じます。「清き」と形容されたのも、季語の清涼感が増して佳かったですね。

うからうからさん
春夜を胸元にしまうってかっこいいですね!コートとありますが、これは春コートと読みました。お花見の夜かしら。何かちょっと恋のかけひきがあったのかな?想像がふくらみますね。
同様に、赤い水着も意味深。気を引きたくて赤を選んだのに!という気持ちでしょうかね。嫉妬も恋のエッセンス。句材としては美味しいところです。



いいなと思ったら応援しよう!