2024年下半期自選十句鑑賞 その4
佐藤直哉さん
揚羽蝶を見かける時期といえば夏。殊に大きな黒揚羽などがやってくると午後を感じますね。そのような気配を感じ取って句にできる、繊細な感覚ですね。
月見の御句は卓にこぼれている水に月が映り込んでいたのでしょうか?まずそれを拭き取って、月を愛でるひととき。豊かな時間が流れています。
阿部八富利さん
『鷹』の八富利さんなんだなぁとnoteの記事を拝読してすっごく感じました。
十句の中では裸足の御句が実感あふれていてとても好きです。今年の夏は特に猛暑で毎日こうだったと。
案山子も発想が楽しいですね。めちゃくちゃおしゃれな服を着せられてる案山子、想像しました。こういうかろやかな御句も八富利さんらしいと感じます。
たーとるQ/海亀九衛門さん
若干 THE 情けない男! という御句が多めな気がしますが、人生の経験値を積んでいっそう句境を広げたってことですね。
牡丹焚火の御句の美しいこと!黙って火を見つめているQちゃんが現地にいたみたい。
銀杏の散り方を「叫び出すやうに」とは言い得て妙。ぶわっと吹き出す黄落を思いました。
樹海ソースさん
南風の御句は樹海ソースさんの内面の詩世界を存分に発揮された一句と感じました。むくむく太る積乱雲はまさに孵化するかのようで。自然を見つめる独自の視点が「俳人」です。
八月の御句もとても佳かったです。水の臭い、シンクを叩く水音、暗い台所に八月のむわっとする空気が満ちていますね。
コンフィさん
八月とガム、この取り合わせは新鮮ですね。ガムが噛まれることで熱を持つ、これってコンフィさんならではの実感でしょう?オリジナリティ凄い。
石榴の御句には一瞬ぎょっとする感覚もあるのですが、あの爆ぜた形が胎内から出ようとしている胎児の欲求を象徴しているようにも思えてきます。詩的真実ってやつでしょう。
強く言いきることで発生する詩を十七音に定着させる手法。これからのコンフィさんからますます目が離せません。
細川鮪目さん
しゃぼん玉の御句に心もってかれました。夜にしゃぼん玉を吹いている人がいるってなんだか寂しいと感じます。そしてそれは決して月にはなれずに割れてしまう。場所が屋上というのも佳き。
滝飛沫=透明の百合 この比喩は抜群ですね!美しいし、新しいと思います。
星月夜の御句は数限りない星たちが山肌をこすりながら動いて、無数の傷をつくったみたいに思えます。恒河沙という語の選択も的確で。
麦のパパさん
ほたるのにおい=水糊 この発想が斬新!素直な感覚を全部平仮名で表記することでまっすぐ表現されましたね。
鯉が「あぶあぶ」すごく面白いオノマトペに「霜夜の端を吸う」とは!対象の捉え方が麦のパパさん独自で、しかもリアルで、うわっやられたー!と思いました。
個人的に不機嫌なゴリラも推します。なんか楽しくて好き。
北欧小町さん
マヨルカ島が、行ったことないのになんだか懐かしいように思えてくるのが不思議です。ここで弾いているのはピアノ?ヴァイオリン?フラメンコギターならさらにエモい。
蚊を打ってからの手相、この小さな気づきを一句になさったのがすごく佳かったと思います。語順というか展開が上手い!
寺清水の水年貢の帳簿というのも興味深くて、句材を見付けてくるのが上手な人だなぁと感心しました。
ヒマラヤで平謝りさん
ヒマさんの口語句には毎度「やられたっ!」と感じます。よく知っているはずの感情をさらりと詠まれてしまって。翡翠と死にゆくぼく、くやしさと月、十一月とはぐれメタル!これは思いつかないでしょ普通。
冬暖かの御句も好きですねぇ。鉄塔を詠もうと思ったとして、「怪獣」は出てきませんわ。感性が素直なんでしょうね、ヒマさん。いつまでも少年の心を忘れないというか。
今度「花冷」で句集出してくださいよ。絶対佳いと思う。
あみまさん
ユーモアセンス抜群ですね!
若水のウォシュレット使ってみたいなぁ。籠枕の食べこぼしがルマンドとか、どうでもいいかもしれないけどなんだか妙に可笑しくて。のり巻きの字面も楽しいです。
蛙とか狛犬とかラクダとか動物が登場する御句も優しくて佳いですねぇ。
あみまさんの句境の自由闊達なところを見習いたい!