2024年下半期自選十句鑑賞 その1
俳号のリンクからその方の自選十句へ飛べます。リプ欄に書ききれなかった(字数制限で)部分もここには書いてます。
常幸龍BCADさん
なんといっても「白露のみづとみづ」に心臓を鷲掴みされました。「一滴となるや」からの展開が素晴らしい!白露(はくろ)は時候の季語として『一句一遊』の兼題となっていましたが「しらつゆ」を思わせる語の使い方がとても好きです。映像を持たない時候の季語には明確な景 お手本ですね。
あいかわらずオノマトペの達人ですよね!「しくしく」夜がふくらむとは・・・・牡丹焚火の熱と香が周囲に満ちていく時間経過を詩的に表現し得ていると思います。
押見げばげばさん
春の月と受胎の色、この取り合わせが大好きです。柔らかくてあたたかな色に違いないと思いました。下五「ありにけり」の強い言いきりに共感。
梵鐘の御句からは、菜の花が蝶に変わる瞬間を見せてもらったような気がして。聴覚情報から視覚情報へ展開していくのも佳いなぁと思いました。
星涼しの句からは、聞こえないはずの音までも聞くことのできる耳を持つ俳人であるとわかりますね。げばさんの感性が凄い。
眩む凡さん
いつも眩む凡さんの発想や視点に驚かされています。標識の男が出てくるとか他の誰が発想できるでしょう?蛇穴に入りてからの電球!その取り合わせがどこから出てくるのか・・・かと思うと牡丹焚くのようなしっとりと情感あふれる御句も詠まれる。謎です、謎、あなたの存在自体がもう大きな謎すぎる!
もちろん褒めてます。絶賛です。これからお詠みになる御句もとても楽しみにしています。
長谷川水素さん
言葉の使い方が独特。正統なる庶民とか永久の階級とか。そういうセンスは俳句にとってとても重要なファクターです。他の人に真似できない部分とも言えますね。
造花の御句、どこにもそう書いてないのに、なぜか供花かな、と。交通事故の現場で捧げられた造花。もしくは盆帰省の折に見かけた他家の墓所に見た造花。映画のワンシーンみたいに景を描く力が素晴らしいと思います。
私もタケコプターをひょいと出してみたいわぁ。
嶋村らぴさん
らぴさんの感性が最上の形で表出しているのが八月の鳩と思います。パッと見た感じは鳩ってふくよか。でもいつもせわしなげに何かをついばんでいる。日常の観察で得たものを詩の言葉に昇華させられる、それこそらぴさんの俳句の力、俳筋力ですね。
星月夜の御句にも惹かれます。怖いと感じる反面、確かな真実の提示とも思えるし、「致死量」という硬い語が詩語になってる!という感動。
ものごとの捉え方において、らぴさんはずっとらぴさんらしく『俳人』であり続ける、そういう方ですよねぇ。
あなぐまはるさん
万緑の御句に対比の素晴らしさを感じます。今を盛りと生い茂る樹々に対して「いつかは終わる愛のうた」。永遠を思わせるものにごく短い時間で終わってしまうであろうものを取り合わせる、ここにははるさんの独特の感性が現れているのでは?「うた」と平仮名表記なので歌・唄・詩などのあらゆる詩歌を指しているのかも。人の気持ち・エネルギーが形を成した「うた」には万緑に負けず劣らず大きな熱量を感じ取ることもできますね。この一句はまるっと大きな生命賛歌と捉えることもできそうです。
七瀬ゆきこさん
八月のサイダーは献血のお礼にもらったものでしょうか?「あげて」「貰ふ」そのやりとりにちょっとした俳諧味を感じます。こういう語り口は他で見たことないなぁ、と。
ゆきこさんならではのユーモアかも?と特に思ったのは檸檬の御句。檸檬って「囚はれる」ものなのね!?と思ったら下五で発光期とは。これには一本とられました!脱帽!
日常生活もかろやかにすずやかに一句に変換してしまわれる、俳筋力の成せる業でしょう。目の離せない俳人のお一人。
ぽっぽ水須ゆき子さん
バナナ!吊るしてない我が家では誰にも声をかけられない寂しいヤツです。ぽっぽさんちのバナナは美味しく熟れていきそう。
あと、凩の御句が好き!「紺を削ぐ」って素敵な描写ですよね。海岸沿いを走っている電車が思い浮かびました。「削ぐ」という動詞の選択も、凩の強さや寒さを感じさせますね。
とうもろこしの御句共感します。とうもろこしで勘弁してもらえる程度の不始末があったんだ、それで赦してくれるお隣さんなんだ、いいなぁ、と。
ちゃんと暮らしてる人、ぽっぽさん。俳句は生活の中にあるんだと気づかせてくれます。
三浦海栗さん
マスクメロンを見て「網を編んでる」と感じ取れる心が素晴らしいですね。「海風の温室」は周辺情報を必要十分に提示できてると思います。
色鳥とリカちゃんハウスを取り合わせるなんて画期的!色鳥がお家の中にまで入ってきてくれそうな。綺麗な声で歌ってくれるんでしょうね。
役馬嘶く焚火から労働歌 二回目の写真俳句「天」おめでとうございます。言葉の経済効率がものすごくイイ一句、ある地域のある時代をありありと描いて見せる描写力が羨ましいです。十七音に無限の可能性を見せていただきました。
元野おぺらさん
石榴の御句にはどっちから見るかで同じ事象が全く違うものになると改めて気づかされます。これが争いの原因になると皆が気づいたら地球上の紛争ずいぶん減るのでは?邪教って語は恐ろしいですね。
ラグビーの御句の描写がすごく「わかる!」ってなりました。一部を描いて全体を見せる手法!
寒造は「斜度」という語を選ぶセンスに「おぉ、さすがおぺらさん」と思いました。「雪崩るる」と「寒造」縁語を上手く配されましたね!