2024年下半期自選十句鑑賞 その7
とまやさん
木守柚子がイイですね~。「月の滴る音」これも素敵。「聴く」を選択なさった意図もわかります。柚子の黄色は月の雫から、なんでしょうね。
豊の秋の「一の柱」は国産みのお話でしょうか?「空ひらく」が明るくて、天の御柱の雲の先まで高く高く伸びている様子が見えてきます。
寒オリオンとライオンの音の響きも美しい!
叶安さん
桜蕊降るの御句がもう好き過ぎます。心という漢字が散り落ちた桜蕊に見えてきます。その発見は書からなのでしょう。安さんならではの視点か、と。
夜の秋も雨ではなく雨冠の縦の線なのか!って書家の感覚をちらりと見せてもらえたように思います。深いんですね、縦画。夜の秋も深まっていくんですね。
船の骨組みを描写しての一句は水軍の街に暮らす安さんの眼が見つけたもの。月冴ゆとの取り合わせに寒さと美しさを見ました。
中村すじこさん
英虞湾の景が美しいです。煌々と名月。月下の英虞湾。湾そのものが呼吸していて、それを豊かだと感じているすじこさんがいて。この豊かな海からきらめく真珠が生まれてくるんですね。
柚子の香を月の香とみなす一句も素敵な把握です。あの黄色、あの形、月と関連がないはずはない、という俳人の目線。
三月兎さん
積乱雲の御句の断定が凄い!雲は水の粒であるという事実をはるかに突き抜け、「淋しいほど膨る」と定義!兎さんならではの詩が生まれました。
寝酒の御句には静かで優しい時間が感じられます。ゆっくり更ける夜、実際の月を見ないで熟れたかどうかを想像するに留めているから季重なりも活きています。
葦屋蛙城さん
夏の海の御句、幼い頃に同じ体験をしました。波打ち際に裸足でいると足裏から砂が波によって取られていくんですよね。あれは楽しくて好きでした。懐かしい。
虫の声を意識するのは静かな時間。一日中眼鏡をかけて働いていて、ようやく一息ついた時に秋の虫の声が聞こえた。余韻が残る句末ですね。
里山子さん
口語日常詠で詩を発生させることが私には難しいのですけど、里山子さんの御句にはその難しさを超えて手になさった実感がありますね。とてもかろやかな詠みぶりに思わずクスっと笑ってしまいます。
桃に語りかけているような口調の一句は、ご自身が桃に生まれてよかったとつぶやいているのかも?上五の入り方が秀逸です。
狼の御句は、季語としての「狼」の力はどうだろうかと思いますが、つぶやきそのものに破壊力があって、一句たらしめていることに驚愕します。
蜘蛛野澄香さん
桃の御句に「傷む」と言う語の意味の深さを見ました。透き通るように熟れ切って果汁滴らせる桃を思い浮かべます。「啜る」の動詞がぴたりとはまりますね。
凸凹の書き順についての俳句はこれまで見たことがありません。新しい目の付け所ですね。しかもGIF、現代的な発想。柚子との取り合わせも効いてます。
野山めぐさん
春の朝の御句の景をいろいろ想像しました。例えば…新卒で就職が決まった男性。朝、身支度しようとネクタイを1本とったら、他のネクタイと絡まってしまった。ほどくのも面倒だけど、出勤しなくてはならないし、憂鬱。春って希望に満ち溢れてるばかりじゃない季節です。日々俳句を楽しみたいですね。
飯村祐知子さん
夕凪の御句、曳船の様子を写生されているのが印象に残ります。小さな船だけど、大型船舶を引っ張っていく力、健気ですよね、曳船。よほど大きな艦船を曳いているのでしょう。小さな声で頑張れって言いたい気持ちになります。
椿の御句は祐知子さんの優しさがにじんでいます。道後の露天風呂を想像。
島崎寛永さん
夏、冷奴を食べる頃に、実感として「あずましくない」関東と思われたのでしょう。お疲れ様です。
人間の手本は生徒さんたちにとっての?正直なつぶやきと思いました。
2025年は寛永さんの思うところ・やりたいことが職場でも発揮・実現できるといいですね。応援してます。