IRIS代表に対する愛知県教育委員の発言について

 IRISではこれまで、本事案について概略的にしかツイートしてきませんでした。それは、法的な措置をとるケースを考えてのことです。しかし、法律相談の結果、それよりも運動によって社会に訴えていくほうがよいと判断しましたので、本記事に全容をまとめました。

1 事案の概要
 2022年3月28日、IRISが提出した部活動に関する3本の請願書について口頭陳述を行うため、愛知県教育委員会定例会の場にIRIS代表が出席した。
 口頭陳述の冒頭、請願書提出に至った経緯を説明するため、代表自身と部活動との関わりについて述べる箇所があった。不本意ながら部活動に従事させられた経験を取り上げた上で、「初任者としての、社会人としての大切なスタートの時間を奪われた」「人生の10年間を部活によって奪われた」と述べた。
 請願の審査にあたり、委員の一人がこの箇所のことを取り上げ、およそ次のように発言した。(代表のメモによる)
「10年間を部活によって奪われたという言葉を聞いてショックを受けました。子どもたちがこういう言葉を投げつけられた時にどう思うのでしょう。」

<2022.4.14追記>
 愛知県教育委員会が作成した会議録により、委員の発言の詳細が明らかになりました。ただし一部実際の発言とは異なる部分があります。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
(塩谷委員)
請願者の「自分の10年を奪われた」という言葉にショックを受けた。子供たちが教師からそのような言葉を聞いたときに何を思うのか。今回の請願は教師側一方からのものであると思う。主役は子供であり、子供が何を求めているのかを考えるとおのずと道は見えてくると思う。働き方改革において、この数年教育委員会でも様々な議論がなされ、少しずつではあるが改革はなされてきたと思う。ただ、全国大会を主催しないということは現状難しいのではないかと個人的に思う。
<2022.4.18追記>
 委員の発言中、会議録で「聞いた」とされている部分は、実際には「投げつけられた」という表現だったことが確認できました。IRISからの問い合わせに対し、県教委事務局から正式に回答がありました。

2 委員の発言の問題点(代表の一人称で記述します)

(1)教員の率直な思いを否定している
 「10年間を部活によって奪われた」というのは、私自身が人生を振り返ったときに出てきた率直な思いです。評価をする前に、まず、受け止めていただきたかったです。教育委員の方々を信頼してありのままを話したのに、頭から否定されたことにショックを受けました。

(2)教員の専門職性や矜持を否定している
 誓って申し上げますが、これまで受け持ってきた児童生徒に対し、部活動のマイナス面を強調するような発言をしたり、自分が部活動の被害者だなどと語ったりしたことはありません。自分の思いと、教員としての言動との間には明確な線引きをしています。それは教員としての専門職性の一部であり矜持だと考えています。
 今回の発言も、口頭陳述者として、教育委員の前だからこそ行ったものです。それなのに、子どもの前でも同じように発言する人物であるかのようにみなされたことは心外です。とりわけ、「投げつける」という表現を使われたことがショックでした。

(3)一種の公開パワハラである
 規則により、傍聴者は委員の発言に抗議したり質問したりすることはできません。もしそれをやってしまうと、退室が命じられる場合もあります。そのように、こちらからの反論が封じられた中で、教育委員が一方的に陳述者の発言を非難することは、一種の公開パワハラです。(会場には、教育委員以外にも県の幹部や他の傍聴者など数十名がいました。)教育長はじめ、看過した他の教育委員の責任も問われます。

(4)請願権の行使をためらわせる行為である
 請願権は、すべての人に認められた憲法上の権利です。教育委員会における口頭陳述は規則で定められたものであり、請願権そのものの中に含まれるわけではありませんが、請願権をより実効性のあるものにする役割を果たしています。
 市民が勇気を出して公の場に立ち、自分の思いを語っているのに、請願の中身ではなく市民の考えについて批判的に論評する行為。たしかに教育委員会の場では自由闊達な議論が認められるべきですが、このような行為が横行すると、市民としては、口頭陳述をすることにためらいを感じてしまいます。ひいては、請願書の提出そのものに及び腰になってしまうおそれがあります。

3 IRISとしての対応
 請願書はIRISとして提出したものであり、口頭陳述はIRIS代表の立場で行ったものである。したがって、当該教育委員による発言および教育委員会による対応(不作為)はIRISに対して向けられたものと理解し、組織として対応していく。
 法的な措置はとらず、SNS等を使った発信、教育委員会への意見書(抗議文)送付、報道機関への情報提供等を行っていく。

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