時代錯誤のポスター問題 千葉県教委「宣伝物として適切」と回答

(IRIS千葉ではnoteを利用していないため、IRISが代理で発信します。)

 IRIS千葉では、千葉県教委に対し10月20日付で次のような質問状を送付しました。

 このたび、千葉県教育委員会教職員課が作成した教員募集のためのポスター(以下「本件ポスター」といいます。)がネット上で反響を巻き起こしています。全教千葉教職員組合のXアカウントが2024年10月18日19時10分に投稿したポストの中で紹介されているもので、「教え子から届く結婚報告。長年続けてきたご褒美だ。」という言葉が書かれています。
 同ポストに対するリプライ(資料1)や、全国の教育関係者からのコメント(資料2)を見ると、総じて、本件ポスターに否定的な意見が書かれています。「教員の労働条件を改善するのが先」「なぜ連絡先が分かるのか」「他人の結婚を報告されても嬉しくない」「結婚できない教員がみじめ」「祝儀を出さなければならないのは災難」「性の多様性への配慮に欠ける」「誤字がある」といった指摘もありますが、特に目立つのは、結婚=幸せという価値観を表しているように見えることへの批判や疑問の声です。
 これだけ否定的な意見が寄せられるポスターは、教員募集の目的に反することはもちろん、千葉県の教育全体への信用を大きく損なわせるものであることは明らかです。千葉県教育委員会として責任の所在を明らかにするとともに、関係者への適切な処分を行っていただきたく、下記の事項について質問いたします。

 これに対し千葉県教委教職員課から、11月8日付で回答がありました。回答は公開するとあらかじめ県教委に伝えてありますので、組合からの質問と当局からの回答を掲載し、回答それぞれについてコメントを付け加えたいと思います。

質問1 本件ポスターに書かれた文言の発案や承認を行ったのは、それぞれどのような立場の方でしょうか。
<回答>
・本ポスターは、令和5年10月に、教員不足の解消と優秀な人材確保に向け、「~千の葉の先生になる~ 教員の魅力発信に向けた『教員採用プロモーション事業』」の一環として作成したものとなります。
・また、ポスターを含む事業全般を、民間のノウハウを活用して行うこととし、人材情報サービス会社に事業委託しました。
・ポスターに記載されている文書については、県内各地の現職教諭の「生声」をベースに、委託業者と県教育委員会の双方で確認を行い、最終文案としました。 なお、ポスターに描かれた黒板の文書は、県立学校の教室をお借りし、描いております。
<コメント>
 「民間のノウハウを活用」とありますが、千葉県教委は今年度行われた教員採用試験を巡っても、民間委託により手痛い失敗をしたばかりです。
 仮に、「民間のノウハウ」なるものがあったとしても、それを適切にマネジメントする能力を行政側が備える必要があります。事業を民間に丸投げすることで、行政としての責任感が希薄になっていた面がないかどうか、機会を改めて県教委に問うていきたいと思います。

質問2 本件ポスターに対するネット上の反応から見て、本件ポスターを用いて教員募集のための広報を行ったことは、地方公務員法上の信用失墜行為にあたるでしょうか。また、何らかの処分等は考えていらっしゃるでしょうか。
<回答>
・本ポスターを御覧になる方は、不特定多数いらっしゃいますので受け止め方は様々にあると思われます。否定的な御意見については、貴重な御意見として受け止めさせていただきます。
・県教育委員会としましては、本ポスターを御覧になり、少しでも教員という職業に興味、関心を持たれた方が、本プロモーションのメイン広報となる教員採用情報サイト 「千の葉の先生ホームルーム」にお入りいただき、プロモーション動画や他の情報を御覧になっていただければ幸いと考えております。ポスターに記載された言葉の全てではありませんが、動画等によりその真意が伝わるものと認識しております。
・よって、本ポスターを用いた広報が、地方公務員法等への抵触やそれに付随する処分等に該当するとは考えておりません。
<コメント>
 「受け止め方は様々」というのは、一般論としては確かにその通りです。しかし、教員以外の方と思われるアカウントも含め、ほぼ全てが否定的なコメントを返すという状況(資料1により、県教委はそれを把握しているはず)を見れば、あのポスターが不適切なものであったことは明らかでしょう。
 立場上、内心ではそうと分かっていても認めるわけにはいかないでしょうから、回答としてはこれが精一杯だと思います。それでも、私たちが様々な声を伝えたことで、自分たちが発信した内容への評価が担当者には伝わったと思いますので、今後の情報発信のあり方に多少なりとも変化があることを期待したいと思います。

質問3 本件ポスターは、教員募集の宣伝物として適切なものだったと言えるでしょうか。
<回答>
・御質問状の資料にあるとおり、否定的な御意見について貴重な御意見として受け止めさせていただきたいと考えておりますが、学校現場や関係団体などから一定の好評を得ていることも事実であり、宣伝物として適切なものと認識しております。
・なお、「褒」の字の誤りにつきましては、作成直後に気付き、直ぐに修正版を配付しなおしたところですが、当初公表したときのものが画像として拡散し、いわゆる「デジタ ルタトゥ」として削除しきれない状況にあると考えられます。
<コメント>
 「学校現場や関係団体などから一定の好評を得ていることも事実」との記述が目を引きます。あの内容で好評価を与えるというのは、いったいどういう了見の個人または団体なのでしょう。そして、最終的に県教委として「宣伝物として適切なもの」と結論づけています。極めて問題のある認識です。
 「事実」と言い切る以上、県教委は具体的に何件かの意見を把握しているはずです。それが一体どのような内容で、どのような個人・団体から寄せられたものなのか、県教委に確認していきたいと思います。

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