IRIS提出の3本の請願審査にかかる愛知県教委定例会(2022.3)の会議録抜粋
愛知県教育委員会2022年3月定例会(2022年3月28日実施)会議録より、IRISが提出した3本の請願の審査に関する部分を抜粋しました。PDFファイルからコピーしたため、所々に不要なスペースが入っていますが、ご容赦ください。
請願第17号 全国中学校体育大会を主催しないことを求める請願
長谷川教育長が各委員に諮り、「賛成者なし」により本請願は不採択とされた。
〔委員の主な意見及び事務局の説明〕
(度会委員)
教員の働き方改革と部活動問題はいろいろな場でかねてから真摯に話し合われてきている。歩み寄りながら、長い目で見て時間をかけて検討して いく必要がある大切な問題と考えている。また、中学生時代は子供の体力が 一番伸びる大切な時期である。その中で、全国中学校体育大会は今まで培わ れてきた子供たちの体力に大きな功績を残してきたと考える。現状は各県が 回り番で主催すると聞いているが、愛知県が主催しないとなると他県の負担 はどうなるか。愛知県内の子供たちは参加できないのか。また、参加できる としても自分の県がホストになれないという心理面への配慮はどうか。
(岩田保健体育課長)
全国中学校体育大会は全国を8ブロックに分け、輪番制で主催している。東海地方は、愛知・岐阜・三重・静岡の4県で担当している。実際、昨年度 大会を開催予定であったが、4競技について愛知県が主催することになって いた。愛知県が主催しないとなると、施設・会場や教員の事前の準備、当日 の運営に至るまで他の3県に負担がかかることとなる。また、主催しない 場合においても、愛知県の生徒で全国大会への出場権がある者に関しては、 出場は可能であると考えている。「上位に残れないのではないか」などの心理 的な問題については、心情をくみ取れるところではないため、回答は差し 控える。
(岡田委員)
教師生活のほとんどを中学校で過ごし、部活動指導に携わり、負担の大きさも教育的効果の大きさも経験してきた。平日はもちろん、土日も休み なく部活動を行っていたため、家庭を顧みずということが当たり前の状況で あった。正直辞めたいと思ったこともあったが、辞めなかったのは部活動を 通して子供たちと共有できる感動があったからである。多くの子供たちが 部活動を通して得られる友情や思い出は何物にも代え難いと言っている。 校長として部活動指導を職員にお願いする立場でもあったが、部活動に命を 懸けている先生、不本意にも希望しない部活動を指導している先生など様々 であった。子供たちが部活動全員参加という形であった場合、希望を聞いた 上で全教員に校務分掌としてお願いするしかなかった。部活動が教員の多忙 化の原因であることを承知しながら、教員にお願いしていたのは、部活動の 教育的効果に期待する部分が大きかったということにほかならない。働き方 改革の中で部活動指導の見直しが徐々にではあるが進んできている。外部 人材の活用、活動時間の制限などを行っているが、部活動指導をやりたく ない人はやらなくてもよいという状況までには程遠いと感じている。部活動 問題の難しさは教育的効果と多忙化のはざまにある。部活動の教育的効果に 代わるもの、かつ多忙化につながらないものがあればすぐにでもなくすこと が可能であるが、そうでない場合、学校の教育活動から排除することは 大きなリスクを伴う。学校教育に深く根ざしている部活動を法的に白か黒か で判断することは難しい。全国大会という貴重な体験を経験できる中学生は わずかであるが、得難い感動があり、悪影響ばかりではないと考えている。
(塩谷委員)
請願者の「自分の10年を奪われた」という言葉にショックを受けた。子供たちが教師からそのような言葉を聞いたときに何を思うのか。今回の請願は教師側一方からのものであると思う。主役は子供であり、子供が何を 求めているのかを考えるとおのずと道は見えてくると思う。働き方改革に おいて、この数年教育委員会でも様々な議論がなされ、少しずつではあるが 改革はなされてきたと思う。ただ、全国大会を主催しないということは現状 難しいのではないかと個人的に思う。
請願第18号 部活動指導業務の適法な命令を求める請願
長谷川教育長が各委員に諮り、「賛成者なし」により本請願は不採択とされた。
〔委員の主な意見及び事務局の説明〕
(塩谷委員)
部活動指導を勤務時間外に職務として命令できるのか。
(岩田保健体育課長)
勤務時間内については校長から職務として命令できるが、勤務時間外は 任意であり、命令できないものと考える。
(塩谷委員)
現在、問題が起きているという事例はあるか。
(岩田保健体育課長)
問題という捉え方ではないが、部活動は教育活動に関連づけて行う教育的効果の高い活動であり、勤務時間外に及んでまで活動を行うことが実態としてあると認識している。今後の働き方改革の中で見直していく必要がある。
(佐々委員)
愛知県で取り組んでいることはあるか。
(岩田保健体育課長)
部活動指導ガイドラインにのっとり、より活動時間の縮減を図るよう継続 して取り組んでいる。顧問となる教員の負担を軽減するために、複数顧問制 の導入や外部指導者の活用などに取り組んでいる。県立学校では総合指導員 として今年度24名から来年度36名に拡大配置し、中学校では配置事業費 補助金として、専門的な指導ができる外部指導者の配置が進むよう取り組ん でいる。
(佐々委員)
少しずつ改善されていると感じるが、一気に解決する案件でないと思う。この問題が根本的に是正されない原因はどこにあると考えているか。
(岩田保健体育課長)
教育的効果が認められてきた一方で、教員の献身的な思い、極端に言えば 犠牲のようなものの上に成り立っていたことは事実である。今後は教育的 効果をできるだけ維持しながら、働き方改革として見直していく。
(佐々委員)
先生方の献身的な取組によって成り立っていることは十分理解しているつもりである。教員の給与の問題や時間外労働に対する対価などに根深い ものがあると感じている。愛知県だけで解決できる問題ではなく、国など もっと大きなところ、根本的なところにある根深い問題であると考えている。 議論がなされていくことは大事なことであり、子供たち不在の議論になら ないよう前向きに取り組まれていくと良い。
(岩田保健体育課長)
中学校においては、部活動の地域移行についての取組が行われている。現在、実践研究を市町村に委託しており、市町村と検討しながら次年度以降 に各市町村に参考となるようなものが示せればと考えている。非常に根深く 大きな問題と認識しており、広く議論されるべき課題である。いろいろな 御意見をいただきながら真摯に取り組んで参りたい。
(河野委員)
様々な意見を聞きながら課題解決を図っていくことが重要であると思う。地域移行ということであれば、学校現場だけではない様々な立場の人と協議 していくことが必要である。様々な意見を取り入れて課題解決を図るような取組や工夫はあるか。
(岩田保健体育課長)
先述の取組が県教育委員会の中心的な取組であるが、今後どういう方向で 進めるか、しっかりと状況を確認しながら進めていく。
請願第19号 勤務時間外の部活動指導業務を強制しないことを求める請願
長谷川教育長が各委員に諮り、「賛成者少数」により本請願は不採択とされた。
〔委員の主な意見及び事務局の説明〕
(岡田委員)
部活動指導が勤務時間外に行われる場合、強制によって行われるような ことはあってはならない。中には「部活動指導は当たり前」という考えを 持っている校長もいるかもしれない。部活動が子供の教育にとって有意義で あり、子供たちや保護者のニーズに応えるものであることを教員に理解して もらう努力をしていかなくてはならないと思う。
(塩谷委員)
教員に求められている仕事の量はばくだいである。部活動まで手が回らないということも実際起きていると思う。しかしながら、家庭の事情や環境 面から見ても、生徒全員が平等に経験できるものは学校の部活動しかないの ではないか。部活動の重要性は子供や保護者からも意見があがると思うが、 教員の負担を軽減するためには今までと同じことをやっていては意味がない。 思い切った改革が必要である。今回の請願をきっかけとして大きく踏み出せ れば良いと思う。