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人生初の歌舞伎がとても楽しかったから歌舞伎未経験のみんなにもお勧めしたい。


ココロオドルセリフ「チケット余ってるから来ない?」

7月某日仕事中、職場の同僚からの突然のチャット。
「歌舞伎のチケットが1枚余ってて、明日来れる?」

職場の歌舞伎好きの数名で歌舞伎を見に行く予定だったのだそうだが、そのうちの1名が急遽行けなくなり、チケットが1枚余っているとのこと。
たぶん「どうせアイツ暇だから声かけてみるか」的なノリで私に白羽の矢が立ったのだろうが、ありがてぇ。
暇&フッ軽&ミーハーな私、「行きます!」の即レス。

「チケット余ってるから来ない?」ってセリフ、あらゆる創作物で散々目にしてきたきたけど、私はまだ言われたことなかったな。新たな物語の始まりを感じさせる、大好きなセリフ。

歌舞伎観劇ビフォー・アフター

歌舞伎に行く前の私:
「歌舞伎って着物で行かなきゃアカンのよね?」
「え、えび、えびぞうとか出てるヤツだよね?」
「そもそも演劇そんな興味無。。」

歌舞伎に行った後の私:
「めちゃめちゃ楽しかった!滝が滝がぁぁ!」
「歌舞伎でしか得られない面白さがある(ドヤァ)」
「古典の中にもケレン味溢れる舞台だった(キリッ)」

こんなに未知だったけど楽しめたよ。

この記事は私のような歌舞伎初心者に歌舞伎をお勧めする目的で書いているので、歌舞伎受精卵小僧(ヒロアカ風)の皆さまを安心させるためにも、私の低すぎる歌舞伎レベルを晒しておきます。こんな低レベルでも十分楽しめました。

歌舞伎って着物で行かなきゃアカンのよね?

今思うと笑えるのですが、誘われた時に一番最初に頭に浮かんだ心配事は「来ていく着物が無いんだけど‥」でした。
私が行ったのは東京・銀座にある歌舞伎座という劇場ですが、着物どころかドレスコードは無いようです。
Tシャツジーパンの人とかもいました。もちろん着物姿の女性もいました。つまり、自由です。

江戸時代に書かれたストーリーを古語で演じるんだよね?理解不能!理解不能!

後程詳しく書いていますが、私が観た舞台は1980年代に書かれた脚本といことで、セリフも若干古語っぽいかな?くらいで、全く理解できない日本語というわけではありませんでした。
それから、有料のイヤホンガイドを借りれば解説をしてくれるので、ほぼ100%理解できました。
また舞台上に本物の滝が出現したり、宙乗り(ワイヤーにつるされて宙を舞う)や客席での立ち回りなどがあって、観客を飽きさせない数々の演出がありました。

TVに出てる歌舞伎俳優しか知らないのだが。

重度のテレビっ子なので、テレビに出てる歌舞伎俳優は知っています。
そして私が行った舞台、多分かなり豪華キャストだったようで、テレビを観ている人であれば分かる歌舞伎俳優がたくさん出演していました。

2時間くらいで終わるんだよね?

私が行った舞台は3部構成で、トータルで4時間弱ありました。
途中2回の休憩(幕間)がありました。

私が行った舞台について

正直、語彙力と知識量が追い付いていないのですが、とにかく楽しかったということを記録したくて、そして歌舞伎未経験のあなたにその魅力を伝えたくて、頑張って書きます。

これ↓に行ったのですが、残念ながら7月で公演終了ということで、皆さんがこの記事を読んでいる頃にはサイトが閉鎖しているかもしれないので、自分の言葉でつづります。

名前:
「七月大歌舞伎」「千成瓢薫風聚光」「裏表太閤記」「松本幸四郎宙乗り相勤め申し候」とかいろんな名前を冠していて、素人の私にはよくわからなかったのですが、恐らく「裏表太閤記」がメインのタイトル的なものです。

あらすじ:
太閤記は、これまで小説や大河ドラマ、映画などでたくさん作品化されてきました。
”太閤”は豊臣秀吉のことです。秀吉の出世物語が”表”で、その出世物語の”裏にあった、明智光秀、織田信長、信長の息子とその妻である織田信忠とお通、鈴木喜多頭重成とその息子の孫市らの話を同時に描くことで、物語に奥行きが生まれています。

出演:
歌舞伎の「か」の字も知らない私でも分かるレベルの豪華キャストでした。
詳細はフライヤーの画像をご覧ください。
注目すべきは、今回の舞台の主役(本来歌舞伎に”主役”があるのかわかりませんが、イヤホンガイドではそう言っていました)である松本幸四郎がひとり3役をこなしている点や、松本白鸚と松本幸四郎・市川染五郎の高麗屋親子3代での演技です。
あとは、よくテレビドラマやバラエティ番組に出てきて私でも知っている市川中車(香川照之)や尾上松也、尾上右近などは白塗りの化粧をしていても顔が分かりますしオーラがあるように感じました。
マイク無しでの発声だったので、当たり前ですが人によって声の出し方やボリュームも違ってそれも面白かったです。

舞台のフライヤー

構成:
序幕・二幕目・大詰の3幕構成です。計4時間弱です。途中2回の休憩(幕間)がありますのでトイレが近い方も安心してください。
1.序幕
織田信長を本能寺で討つまでに至った、明智光秀の苦悩や、織田家を根絶やしにするべく、織田信長の息子だけでなく、その妻であり明智光秀の実の妹であるお通にも追手が迫りくる様子などが描かれています。
2.2幕目
秀吉の水攻めで追い込まれた高松城の城主・鈴木喜多頭重成が、秀吉と和睦するために息子孫市に自身の首を取らせたり、無事秀吉と和睦し、家臣となった孫市の秀吉への忠誠心、そして女で一人で息子を明智勢の追手から守り抜いたお通のたくましさなどが描かれています。
明智光秀を討ちに行く途中、秀吉と孫市、お通を乗せた船が大荒れの海で難破しかけますが、お通が自身の身を海の神様に捧げたことにより、海の神様は秀吉と孫市を空を飛ぶ船に乗せ、琵琶湖まで運びます。このシーンは高麗屋3代で演じるシーンのため、客席からは「高麗屋!」の掛け声がかかり、湧いていましたし、よその家族ではありますが私もなんだか胸がじーんと熱くなりました。
そして最後は本物の滝に打たれながらのド派手な大立ち回りによって、秀吉と孫市が明智光秀を討つ、盛大なクライマックスを迎えます。
3.大詰め
舞台は中国に移り、孫悟空が天空で暴れまわったり、「宙乗り」と言ってワイヤーで吊られて宙を舞ったり、沙悟浄と猪八戒のコミカルな演劇があったり、まあなんやかんやで天空の神様的な人から金のひょうたんをゲットして、めでたしめでたし。
という夢を、猿と揶揄されていた秀吉が見ていて「ああめでたい夢を見ました。これから迎える太平の世をみんなでお祝いしましょう」ということで、最後に出てきた役者が躍るシーンで幕が閉じます。
この華やかに踊るシーンは、イヤホンガイドによると、来てくれた観客への感謝とお見送りの意味もあるそうです。

幕間で食べたごはん。

歌舞伎、たのしかった。

観ている途中も、帰り道も、ずっとこのひと言を反芻していました。
元来演劇にそこまで興味が無く、観に行く機会があってもそこまで集中できずにいつも途中で退屈してしまう、そんな私ですが、歌舞伎ではなぜかその退屈が無かった。退屈する間もなく、私は舞台上の壮大なセットや絢爛豪華な衣装、大迫力の場面展開などにその都度見入って、俳優達の鬼気迫る演技に圧倒されていました。
ストーリーもとても面白かった。秀吉が天下を獲る、という結末も知っている話ではありますが、裏にはこんな人間ドラマがあったのだな、と引き込まれるものがありました。
イマドキの映画の方がよっぽど、映像鮮やかでド派手なアクションシーンと音響で、見ごたえがあるはずなのに、シンプル、と言ってよいのかわかりませんが、音楽や舞台セットとともに、歌舞伎俳優の人たちの気迫迫る演技に、悲喜こもごもを感じ取り、とても感動しました。感動的なシーンでは思わず泣きそうになりました。

歌舞伎は、古典か、モダンか。

ちょっとカッコつけたようなタイトルですが、歌舞伎って古いのか?新しいのか?と考えました。
歌舞伎は江戸時代に生まれ、もはや無形文化財になっていますので、歴史的には古典文化であり間違いなく"古い"。でもこれまで一切歌舞伎との接点が無く、歌舞伎初体験だった私にとっては、むしろ"新しい"体験でした。劇場にも複数いた外国人にとっても同様なのではないでしょうか。
例えば、感情の高まりをあの有名な「見得」を切ることで表したり、「引き抜き」といって演出の一種として客の前で一瞬で衣装を変えたり、客席で立ち回りをしたり、舞台上に本物の滝が現れたり。
イヤホンガイドによると、これらは最近できた演出方法ではなく、江戸時代からあったそうなのです。滝も、冷房設備の無かった江戸時代において、涼を演出されるものであったそうです。
歴史あるこれらの表現技法を、私は初めて観て知って、そして実際に劇場で「ハッと」驚かされるというのは、なんとも新しくて不思議な体験でした。

「歌舞伎でしか得られない面白さがある(ドヤァ)」

至極当たり前のことをドヤ顔で言っていますが、でも私はこのようなものを結局まだ観たことがない。
観たことないですが、もしかしたら大衆演劇とかは似ているのかもしれない。またイヤホンガイドによると今回の舞台は古典的な歌舞伎だけではなく、狂言や能、人形浄瑠璃の表現技法や衣装やら何やらを取り入れていると言っていたので、そこらへん界隈は似ているのかもしれないし、まだ違いが分かっていないというのが正直なところなので、詳しい人に怒られちゃうかもしれないけど、少なくとも私の浅い経験値の中では、このようなものは観たことがなかったし、歌舞伎ならではの面白さがありました。

初心者がとっつきやすい舞台だったらしい

一緒に行った人たちは歌舞伎愛好家でしたが、彼女たち曰く「初心者の人でも分かりやすいストーリー」とのこと。
また、滝や宙乗りなど観客を飽きさせない仕掛けが多く、いわゆる「外連味」に溢れる舞台だったそうで、私の歌舞伎デビュー戦にふさわしい舞台だったと言えます。

初心者向けアドバイス

①何を観るか

・初心者がとっつきやすい舞台を選ぶ
これ一番大事!中高生の頃に校外学習みたいなので行った、能の舞台、全く理解できなかったトラウマがあります。字幕付きでも理解できなかった。
そういうのではなくて、今回の太閤記のようになじみがあって理解しやすいストーリーのものが良いと思います。
・下調べをする
大まかなあらすじを理解できてさえいれば、話について行けると思います。
例えば今回の太閤記であれば、最低限明智光秀や織田信長、秀吉の関係性を把握しておくとか。あとは俳優の関係性、例えば松本白鸚・松本幸四郎・市川染五郎は高麗屋の親子3代であるとか、知っているとなお話が楽しめると思いました。

②事前準備

・オフィスカジュアル的な服を用意しておく
冒頭でも書いた通り、特にドレスコードとかは無く、自由で良いみたいです。Tシャツジーパン姿の若い男性を見かけたのですが、なんとなく浮いていたので、オフィスカジュアルがちょうど良いようにも思います。男性なら襟付きのシャツを着るとか、女性ならブラウスやワンピースを着るとか。
・思い切って良い席を取る
今回、チケットを譲り受けたのもあって、良い席に座れました。1階席の前の方で、顔も見える、舞台や花道から遠すぎず近すぎずで良かったです。飽きずに集中して見れたのも席のおかげもあると思います。

③当日

・双眼鏡か、自分が持ってる中で一番度が強い眼鏡を持っていく
俳優の顔や表情が見えた方が面白いです。私はオシャレを優先してしまい、度が弱い方の眼鏡を持って行ってしまって後悔しました。
・寒暖差を調整できる服を持っていく
空調が結構効いているので、調整できる上着などがあると良いです。
・飲食物は事前に準備しておく
舞台によっては、4時間弱の長丁場になります。中には飲食店やお土産屋さん、自動販売機などたくさんありますが、ちょっと高いので、安く済ませたい人は事前に買って持ち込むことをお勧めします。私が行った歌舞伎座は持ち込みOKでしたが、劇場によってルールが違うかもしれないので、必ず確認してください。
・ちょっと早めに着くようにする
会場前、周辺がかなり混みあいます。歌舞伎座は東銀座駅直結ですが、みんなこの駅から来るので、地上へ続くエスカレーターは人がひしめき合っていました。
・イヤホンガイドを借りる
 あらすじを理解していても、イヤホンガイドの適切なタイミングでの適切な解説があると、より楽しめます。セリフの説明などのストーリーに関することだけではなく、どの俳優が演じているのか、この演出にはどういう意味や歴史があるのか、など色々解説してくれます。800円と若干高いですが、おススメです。

以上、歌舞伎初心者による感想とアドバイスでした。
次、いつ行くか分かりませんが、またいつか行きたいです。


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