7.少子化対策としての効果⁉@無痛分娩
TwitterなどのSNSで盛り上がっている無痛分娩ネタを、専門家の入駒慎吾が解説していくシリーズです。今回の自民党総裁選演説会で飛び出した“少子化対策”という文脈での「無痛分娩」。これには、どういう意味があるのか考えてみましょう。
少子化対策の分解
そもそも正解のない少子化対策ですが、私なりに分析すると、子供を産み育てるまでの時間軸での切り口と医療・託児インフラ整備などの構造的な切り口、それと最も重要な文化的な切り口に分けられると思います。無痛分娩は、この時間軸での切り口では、出産の瞬間だけと捉えられがちです。しかし、出産の怖さを軽減することで、妊娠に臨むことを支える効果もあると考えます。また、痛くないお産の経験により、「これなら、もう1人産めそう!」とおっしゃる方は多い印象です。
少子化対策における無痛分娩の効果(時間軸)
無痛分娩を選択できるようにするには?
少子化対策における無痛分娩自体の効果が何となくイメージできたと思います。しかし、これだけでは、少子化対策にはなりません。この無痛分娩を選択できる世の中にしていかなければならないのです。これが、本質的には少子化対策の一部になるはずですね。
実際には、①無痛分娩を提供できる施設の整備、②無痛分娩費用の捻出、③無痛分娩に関する情報、などの構造的な切り口からの議論も必要になってきます。今回の自民党総裁選演説会での議論は、この中の“お金”に関する部分だけに焦点が当てられていたと思います。このような一部だけを改善する方針は、安全性の面からはとても気になります。
日本の無痛分娩の現状
現在、日本の無痛分娩を支えているのは、その80%以上が産婦人科医です。基本的には、規模の大きくない診療所で、自ら麻酔を担当し、お産も取っています。ここに、自己負担のなくなった妊婦さんが殺到して、無痛分娩が急増したら、それはもうパンクしてしまいますね。金銭的なサポートの前に、社会インフラとしての「無痛分娩をできる施設」を整えることから着手すべきだと考えます。
リテラシーが問われる
ここで、これを商機と捉えて、新規参入してくる施設もあるでしょう。無痛分娩のノウハウがあっての新規参入であればいいのですが、違うことが多いことが問題となります。構造的な切り口の全体を整えないと、危険になる可能性があるんですね。これを回避するために、みなさんができることは無痛分娩リテラシーを上げておくことでしょう。これを機に、無痛分娩の情報をしっかり吟味できる目を養っておきたいものですね。自分が受ける医療のこと、そしてその医療提供施設のことを十分理解できるようになっておくことが重要です。そのためのプラットフォームとして、このnote記事がお役に立てれば、筆者としてとても光栄です。