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英語の自動詞と他動詞攻略


「を」

 それなりに信用できる判定基準が有る。雑に和訳してみて、「を」を使いたくなったら大抵他動詞だ。

  • I go to the school (〜行く。自動詞)

  • I visit the school (〜訪れる。他動詞)

 自動詞ならば、「に」とか「へ」になって前置詞を入れることになる。上例のように、似た意味の動詞なのに自動詞 / 他動詞が分かれるgovisitがこれですっきり分別できるのは有名だが、

  • going my way (我が道行く。他動詞)

 これ、ちょっとすごくないだろうか。知った時にはいたく感動した。goの他動詞というマイナーな存在を一発で理解できる。日本の英語教育における全和訳主義は正しかった。

I don't like like

 そんな素晴らしい日本中学の英語教育過程において、早々、以下のようなクソ設問を食らった記憶が有る。


空所を埋めよ.
I like [    ] .      (he / his / him)



 洟たれの中坊であろうと0.1秒で正答できなければならない、当然にhimだ。が、かの素晴らしい教科書Sunshine(まだ有るんだなぁ)には、以下のような記述があった。

  • 主格  は/が  例: I / he / they

  • 所有格 の    例: my / his / their

  • 目的格 を/に  例: me / him / them 

 我らが「を」が燦然と輝いているが、そんなことより、付されていた「和訳した時に『は / が』になる場合は主格を用いよ」という記述が大変に大雑把であり、しかも何をとち狂ったかSVOだのSVCだのと言う文型の教育が当時全くなかったので、哀れ愚かであった私は困惑しながら唯一のよすがであったこの記述に縋り、「he」を補充して失点したのである。
 英語教育の悪口を重ねていくと紙幅が3万文字必要なのでここまでにするが、とにかく、どストレート和訳時の「を」へ完全に頼っては行けない、と言うことのようだ。なんてこったい。

他動詞は他動詞らしく

 しかし、実はlikeの場合は比較的単純な解決方法が有り、「〜が好き」というproblematicな定訳を避け、「〜を好む」を第一訳にしておけばいいだけである。第一訳という勝手に発明した言葉を叩き込んでみたが、ようは、和訳作業時に一旦設置してみる日本語のことだ。

  • I like his poems. (私は彼の詩を好む

  • I like cheese. (私はチーズを好む

 無事、他動詞らしく「」が出現した。このままの和訳だと「好む」という日本語がいかにも不自然なので、「彼が好き」だとか「チーズが好きでやんす」だとか、適当にほぐす必要が有るだろう。しかし、この「ほぐす」手間を覚悟で、一旦「好む」とするのが英文法的には無難だ。他の他動詞はもっぱら「」を使うことになるのだから。二度手間に見えるかもしれないが、「和訳しなさい」と迫られてもいなければ、一段階目の理解「私は彼を好む」で解釈を終えて次の英文へ写ればいいのだし、殆どの場合問題ない。

もちろん、本来はここで「解釈 = 和訳」と擦り込んでいる英語教育への糾弾を書き連ねたいのなのだが、紙幅が4万文字必要になるのでまたの機会にしたい。



  さて、「一旦、『好む』のような他動詞らしくなる和訳を置いておく」という技巧を見たところで、次の設問を考えてみたい。


空所を埋めよ
I finally [    ] the park. (ようやく公園に着いたよ)

  1. reaches

  2. reached

  3. reaches to 

  4. reached to



 ここのfinallyは「ついに」くらいの意味で、憶えておくと使いやすい副詞である。さて問題は空所となっている述部(V)だが、まず三単現のsを持っている1と3は即却下されねばならない。と言う訳で、事実上「reachは他動詞ですか自動詞ですか(=toを入れますか入れませんか?)」と言う問いだ。
 一瞥した瞬間に正答できれば世話ないが、次善としては「あれ〜、……どっちだったかな」と頭を抱えるところになるだろう。最悪なのが「和訳すると「公園を」じゃなくて「公園に」だから4だ!!!」と速やかに誤答することである。そう、正解は2だ。到達するという意味のreach他動詞である。
 「を」の話をしておいて早速裏切られてばかりじゃねえか使えねえな、と言うのはちょっと待って欲しい。つまりは、ここでもlikeで使ったような技巧が有効なのだ。reachに、「手中に収める」くらいの第一訳を用意しておけば、

  • I finally reached the park (私はついに公園手中に収めた)

となり、他動詞であると自然に理解できる。「手中に収める」は無茶苦茶に大袈裟であるが、ほぐす覚悟であれば問題ないし、そもそもreachという単語のコア的な意味にとてもよく合っている。「にゅっと手を伸ばす」、というのがreachの中核的な意味だ。ちょっと遠いものを手に取るとか。場所の話が良ければ、「山頂を手中に収める / reach the summit」がいい例になるだろう。

なお、麻雀やビンゴの「リーチ」は全く関係ない。あれは中国語由来で、そもそもrではなくlである(lizhi)。格闘技の「リーチ」(ダルシムが秀でるアレ)はこのreachであり、まさに、「にゅっと手を伸ば」した時の案配だ。


にゅっ



 他の具体例は追々出していくとして、このlikereachの様に、ちょっとコツのいる単語も有る。
 


ここまでのまとめ

  1. 「を」は大抵他動詞

  2. ただし、「を」になりやすいような和訳を心得ておくべき単語も有る


register / refer

 次に、他動詞 / 自動詞を日本人が誤りがちな単語として、registerreferを紹介したい。まず確認しておきたいが、registと言う英単語はない。 動詞の時点でregisterである。「いやもちろん知ってるけど〜、ここでは文字数が〜」と言う謎の抵抗勢力が時折沸くが、本当にシビアならば「reg」くらいまで縮めるべきであり、無理解を糊塗するためにこんな恥ずかしい6文字を使い続けてはならない。そもそも知らなかったのならばしょうがないので、以下の例題でついでに憶えましょう。


空所を埋めよ
John [    ] the course.

  1. register 

  2. is registering

  3. register for

  4. is registering for


Please [    ] the paper which we published last year concerning our incubator for frogs for the detail.

  1. refer

  2. refer to

  3. referring

  4. referred


 まず、TOEICを始めとする多くの試験におけるプチ知識だが、「あれ、registerだのreferだのって、過去形とかで最後のr重ねるんだっけ?」という心配は不要である。英語としてありうる形しか選択肢に出現しないので、上のようにregisterとreferで振る舞いが変わっていても「ふーんそうなんだー」と感心しておけば良い。勿論、市井の定期試験などでは保証出来ないのであしからず。(こんなマイナーなもん良くも引っ張ってきたなカスと言いたくなる選択肢は有りうるが、上のような形なら問題ない)
 で、本題。まずregisterの方だが、1と3は三単現のsを欠いてるし、そもそも素朴な現在形ではとんちきな意味になるので誤りだ。と言う訳でやはり「自動詞ですか他動詞ですか(forを入れますか入れませんか)」という問いに帰着する。これは、知識一発「この意味のregisterは自動詞!」で即答しても良いし、「彼はそのコースに登録した。……「を」がないじゃん、自動詞!」でもよい。正解は4だ、近い将来を示す現在進行形。

  • John is registering for the course (Johnはもうじきそのコースに登録する)

 次にreferの方。見た目も意味もゴツい英文を意図的に持ってきたが、冷静に考えるとwhich以下はどうでも良い。特にTOEICは異常に制限時間が厳しいので「あ〜、which以降はどうでもよさそうだなぁ」と思いながらざっと眺め、「やっぱどうでもいいなぁ〜」でさっさと回答すべきである。「ざっと眺め」で文構造が把握できないなら、もう読まずに回答しても良い。その時点の力ではどうせ回答時間が不足するので、ならば多少雑にでも前進して1問でも多くこなすべきだ。
 と言うわけで、Pleaseも置いてくれている分かりやすい命令文に相応しい単語を探すだけの作業になり、3と4はいかにも論外だろう。そこで、やはり自動詞 or 他動詞で悩むことになる。結論を述べよう、正解は2だ。

  • Please refer to the paper which we published last year concerning our incubator for frogs for the detail. (詳細については昨年私どもが発表した、蛙用の孵化器に関する論文を参照してください)

 なんで自動詞だよ「論文」って書いてるじゃねえか、と言う話だが、しょうがない、この意味のreferは泣いても喚いても自動詞である。registerともども他動詞と勘違いされやすいので挙げているが、referの方は「」を使ってもなお間違えるのでより厄介だ。


registerとreferの他動詞 (〜させる)

 上で「この意味のregister」「この意味のrefer」とわざわざ書いたが、これらの記述は意味が有る。つまり、他動詞のregisterreferが、違う意味で存在するのだ。

  • She registered the complaint using the form.

  • Interns were referred to the manual.

 いずれの単語も存外分かりやすく、「Oに(自動詞の意味を)させる」というイメージで大きく外さない。つまり、registerの文は、Johnが何かのコースへ登録したのと同じイメージで、「彼女はフォームを用いて、苦情(データベースだかへ)登録させた」というのが、第一訳的な意味となる。敢えてすっきりとした和訳を目指すなら、「彼女はフォームで苦情を(どこかへ)飛び込ませた」を経て、「彼女はフォームで苦情を送った」となるだろう。いきなり「送った」としてしまうと理解が難しいが、「それをどこかへ登録させた」と一旦解釈すれば、自動詞の場合との関連が明快だ。referもすっと理解できるだろう、「インターン生にマニュアルを参照させた」だ。
 で、何故こんな話をしたのかと言うと、どうもこの手の動詞は、「そもそも最初に他動詞が存在しており、その目的語が自身である場合は自動詞になる」という動きをしているらしい。上の議論、あるいは一般的な学習順とは逆の順番だ。Johnは自身をコースへ登録させ、我々は、蛙の論文を自身に参照させるように命ぜられているのである。自動詞と他動詞が存在している動詞は、こう言う点を疑ってみると理解しやすくなるかもしれない。

 さて、まだ「で、referの第一訳はどうすんねん」問題は解決してないので、次で見ていこう。


look, listen そして refer (〜べく意識を向ける)

 さてlooklistenだ。賢明な読者の一部は気づいていたかもしれないこいつらに、ここまで目を背けてきたが、流石にこんな超基本単語を無視できまい。

  • She looked at the blackboard agape. (彼女はぽかんと黒板見ていた)

  • Listen to the radio program for traffic information. (交通情報を得るためにそのラジオ番組聞いておけ)

 apageは、あまりに文がぶっきらぼうだったので短い副詞を足しただけで、憶えなくて良い。問題は、looklistenも、「を」と訳したくなるのに前置詞が入ってること、つまり自動詞であると言うことだ。
 このことについては色々考えたり調べたりしてみているのだが、どうも、「〜するために意識を向ける」という第一訳にでもするしかないようである。

  • She looked at the blackboard agape. (彼女はぽかんと、見るために黒板意識を向けていた)

  • Listen to the radio program for traffic information. (交通情報を得るためにそのラジオ番組意識を向けて聞いておけ)

  • Please refer to the paper which we published last year concerning our incubator for frogs for the detail. (参照するためにその論文意識を向けてください)

 「」が削除され、前置詞のattoが全て「」として座った(「に」でもよい)。あとは、必要ならばほぐせばいいと言うことになる。この論理はまんざら強弁でもなく、一応ちゃんと座っており、つまりlooklistenはそれを「見よう」「聞こう」という意志が伴う場合にしか使われない。「何も見えねえ!」は「I can't see!」であり、lookではないのだ。referも、意志を持って本なり事実なりを参照することになるだろう。たまたま目に入ってきた情報へ「参照」と言う言葉を使うのは、日本語の感覚でも不自然だ。
 この手の動詞は、何かを知覚するものに多いようで、嗅ぐを意味するsniffも自動詞を持っている(ただし他動詞も有る)。

  • She sniffed at the cheese.

  • He tried to sniff the perfume. 

 他動詞が共存しているのは、嗅覚は対象を体に取り入れる感覚が有るからだろうか。まさしく体に入れるしかない、味覚のtasteは他動詞しかない。

 以上の4点を踏まえれば、自動詞や他動詞の理解に苦しむことがちょっと減り、TOEICに興味があればPart5の学習が多少スムーズになるだろう。以上の記述はあまり外していないと思うが、まとまっている既存の文章を見つけられなかったので、今回書いてみた。

まとめ

  1. 「を」は大抵他動詞

  2. ただし、「を」になりやすいような和訳を心得ておくべき単語も有る

  3. 他動詞から自動詞が派生した動詞も有り、心得ると理解しやすい。他動詞の意味は、「Oを(自動詞の意味)させる」

  4. 知覚系の動詞には「意識を向けて知覚する」とでも解釈すべき自動詞が存在する

  5. registと書いたら殺す


例とか

  以下、簡単な例を列挙しておく。

  • dependは「〜頼る」と訳したくなるので、自動詞(onが必要)
    It depends on the weather conditions.

  • agreeは「〜同意する」と訳したくなるので、自動詞(withが必要)
    I agree with you.

  • discussは他動詞なので、「〜について話し合う」ではなく「〜論ずる」と憶えるべき。aboutは入れない
    We discussed the environment issue.

  • locateは他動詞なので「〜に位置する」ではなく「〜設置する」「〜見つける」と憶えるべき
    Our headquarters is located near the station.

  • donateは「〜寄附する」なので、寄附した物品を目的語にする他動詞。ただし「孤児院に寄附したんだよね〜」と大雑把に言いたい時にも対応しており、この時は自動詞。いずれにせよ、寄附を受けとる対象は目的語でないのでtoで繋ぐ必要が有る。
    He donated $100 million to the university.

  • considerは、何かテーマが決まっている時は他動詞なので、「熟考」よりも「〜考慮する」と憶えておくと良い。aboutは入れない
    We considered purchasing the shelf.


 なお、「第一訳」という言葉だが、「一時的訳」という長いものか、「姑息訳」という分かりにくい名前しか思いついてないせいで困ったが、多分二度と使わないのでよしとしよう(姑息と言う言葉は、本来の意味が全然知られてないくせに、代替できる二字熟語が無いのが困ったものである)
 しかし、他動詞のmeetはどうしたものかね。これは良い説明が思いついていない。固いsee、と憶えておくのが大雑把なテクニックではあるが。


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