質権(動産質)の即時取得
-----2022/2/3 追記-------
いつも読んでくださりありがとうございます! この記事のアクセス数が多いようですので,質権の記述を少し加筆しました。
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1 即時取得の要件(192条)
・動産取引 ←相続・伐採・採取は×
・平穏 ←186条1項で推定
・公然 ←186条1項で推定
・善意 ←186条1項で推定
・無過失 ←188条で推定(判例)
・占有の開始(取得)
2 試験での出題
(1)行政書士R1第31問 正誤問題
債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても,債権者は,その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは,質権を即時取得することができる。
答え:正しい
・動産取引…質権設定はこれに当たる。
・平穏公然善意無過失…認められる。
・占有の開始
…質権の設定は,占有(引渡し)が効力発生要件である(344条)。よって,認められる。
※質権設定は処分行為だから,処分権限を有する者(所有者)でないと設定できないはず。そこで質権の即時取得という考え方が登場する。
※抵当権設定も同様に処分行為だから,処分権限を有する者でないと設定できない。ただ,抵当権は占有を伴わない担保物権であるし,主な目的物は不動産であるため,即時取得は論点とならない。
【質権の補足】
・動産質は占有が効力発生要件(344条「引き渡す」)かつ第三者対抗要件(352条)だが,存続要件ではないため,質物の返還のみでは消滅はしない(第三者への対抗力を失うのみ)。ちなみに,効力発生要件の「引き渡す」には占有改定は含まれない。公示手段として不十分であること,留置的効力(347条本文)を確保するため。
・これに対して,不動産質の場合は,質物の占有が第三者対抗要件ではないため,質物の返還によって質権の効力は左右されない(判例)。
・質物が第三者に奪われた者(動産質権者)は,動産質権に基づく返還請求権ではなく,占有回収の訴えで返還を求めることができる(353条)。動産占有を第三者対抗要件とした352条とのバランス。ちなみに,動産占有はあくまで「第三者」対抗要件であるから,質権設定者に質物を奪われた場合は,動産質権に基づく返還請求をすることができる。
・これに対して,不動産質の場合は,質物の占有が第三者対抗要件とされてないため,質物が奪われた場合,質権に基づく返還請求をすることができる。
・「奪われた」とは,質権者の意に反して占有を喪失したことを意味する。遺失,詐欺に基づく引渡しなどはこれに含まれないため,このような場合はもう質物を取り戻す手段がなくなる。
(2)司・予備共通H27 民法第13問
Aが,A所有の甲動産を占有するBに対し,所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ,Bは,Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。この場合に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいのはどれか。
1 占有者が占有物について行使する権利は,適法に有するものと推定されるから,Bは,質権の即時取得の成立を基礎付ける事実を主張・立証する必要はない。
2 Bは,Cとの間で質権設定の合意をし,その合意に基づいてCから甲動産の引渡しを受けたことを主張・立証する必要がある。
3 Bは,質権の被担保債権の発生原因事実を主張・立証する必要はなく,Aが,質権の被担保債権の消滅原因事実を主張・立証する必要がある。
4 Bは,Cに甲動産の所有権がないことについてBが善意であることを主張・立証する必要はないが,Bに過失がないことを主張・立証する必要がある。
答え:2
Stg:所有権に基づく返還請求権としての甲引渡請求権
Kg:①Aが甲動産の所有権を有すること
②Bが甲動産を占有していること
E:Bに占有権原があること(質権の即時取得)
【1】動産取引
①被担保債権の発生原因事実(∵成立に関する付従性)
②質権設定合意
③②に基づく甲動産の引渡し(∵占有が質権の効力発生要件(344条))
【2】占有の取得
上記③にて主張済み
R:相手方の過失
夫Cに甲動産の所有権がないことについて,Bに過失があること
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