コント『サークル』 Conva
ハチカイ 警備員、ダウ90000 吉原怜那、大喜利芸人の田野からなるコントユニットConva。
Convaのコント『サークル』が大傑作なので紹介させていただきます。
同人サークルの友人同士である警備員と吉原の会話が中心となるコント。
シャツのボタンを限界まで閉めて、ジーンズにインした過度にステレオタイプな「オタク」を演じる警備員の絶妙な間の取り方、「とはいえとはいえ〜」「一体どこにいるのやらキョロキョロ」といった「オタク」特有の台詞回し、腕の動かし方や落ち着きのない仕草などが完璧。
オタク談義で盛り上がる二人だが、吉原がダンスサークルの先輩や教授と話し始めると話し方や仕草が完全に別の「キャラ」に変わってしまうので、警備員は次第に混乱していく。
吉原の一人でさまざまな人格を演じ分ける演技力も光る。
「どの吉原が本物の吉原なのか?」と疑心暗鬼に陥っていく警備員。
「吉原が吉原に食べられちゃった」
オタクの吉原
パリピの吉原
色目づかいをする吉原
フェミニストの吉原
いろんな吉原の人格が混濁していき、吉原は自分の人格同士で会話を始めていく。
ここで吉原は退場し、吉原と同じ服を着た田野が登場する。
田野は自分のことを「お好み焼きのカスを落とすところに溜まったあれ」と表現する。さらに田野は警備員に「他の吉原の人格も信頼している。付き合ってほしい」と告白し、警備員が受け入れたところで、舞台は暗転していく。
警備員と吉原の演技力があまりに卓越しており、台詞や仕草のリアリティがかなり高いので、終始笑わせられると同時に、ペルソナを被りすぎて吉原が解離性同一障害に陥ってしまうというちょっと現代社会的な恐怖も感じさせるコントである。
ペルソナとは、スイスの心理学者ユングが唱えた概念で、人が他人と付き合っていく時に演じる性格、いわば「仮面」のこと。本当は奔放な性格だけど、職場では大人しく振る舞ったり、内向的な性格だけど、多くの人が集まる場所では明るく振る舞ってみようといった、人が多かれ少なかれ身につけているものだ。
もちろんペルソナは社会生活を送るうえで、なくてはならないものなのだが、このコントのようにペルソナを被りすぎて、相手の本当の人格や性格が理解できないことが、現代は増えている。
自我や個性を出さないこと、周り合わせることが社会人の至上の価値とされている現代日本では度々見られる現象だ。結果的に心から他人のことが信頼できなかったり、人間関係の問題が生じる。
このコントでも、ペルソナの使い分けによって警備員と吉原の信頼関係にヒビが入ってしまう。
田野演じる「おっさん吉原」が登場し、警備員はますます困惑するが、最終的に彼は「おっさん吉原」の愛の告白を受け入れる。どれだけペルソナを演じ分けていても、ペルソナを含めて吉原は吉原なのだから。
爆笑し過ぎて気付きづらいけれど、色々考えさせれられるしちょっと感動する傑作コントなのでした。