むにゃむにゃはくちゃくちゃである《iquotlog》
3歳の息子が今夜寝る前さいごに放ったことばは、
「こ! た!」
だった。息子はダウン症で、言語面の発育もゆっくりである。
『ハイキュー』のTVアニメを毎晩家族で熱心に観ており、きょうは「ゴミ捨て場の戦い」がついに再現した回だったのだ。かつてライバル同士だった仙台の烏野高校と東京の音駒(ねこま)高校の練習試合。カラスとネコの試合だから、ゴミ捨て場の戦い。そして画面に大きく猫とカラスの威嚇しあう姿!!
「こ! た!」
(ねこ! いた!)
なぜか語尾しか発音しない息子。ここぞと猫に反応した息子。「きゃー! かわいい!」とそんな息子にコート外で黄色い声をあげる妻とぼく。何故か沸き上がるように踊っている娘。そして間もなく息子就寝。息子を除く3人はそこからまだ3話分観た。『ハイキュー』面白いぞ!
はじめは枕に頭を載せて寝ていた息子、いつの間にか回転レシーブ後の姿勢で逆さまに寝ている息子。インターハイ地方予選で初戦を突破した回のエンディング、その息子がむくっと起き上がった。
むくっと起きて、座って、口をむにゃむにゃ。
その息子が不意にあげてきたトスにぼくは、
「世界中の寝ぼけた人は、寝ぼけてるとき何食べてるねーん!」
と、今まで考えたこともなかったようなスパイクで答える。息子はレシーブできず、また別角度で就寝。
そうだ、寝ぼけているときに人は何故口が動きがちなのか。考えたこともなかった。
「猫もやで!」
妻が言う。
「こ! た!」
(猫もやった!)
とぼくが言う。そういえばうちの飼い猫も寝ぼけながら口が動くのだ。
あの現象はいったい何なのか。夢で食事しているのか。だとしたら寝ぼけをあらわす擬音語「むにゃむにゃ」は今日から「くちゃくちゃ」にすべきだ。あの、納豆パックを開けたときについているフィルムのはがれるときのような、糸を引く口の動き。
肉か。
魚か。
納豆か。
寝ているときに夢で食べている。寝ながらのむにゃむにゃの正体を知りたい。映画、アニメ、日常観察。そう、これまでの観察から考えると、なんとなく、夢で食べているものは世界共通の何かしらメジャーな食べ物のような気がする。そしてある程度の粘り気があるような。
息子が喋れたら、起こして何を食べていたのか聞いてみたいものだ。
「こ! た!」