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モーツァルトとホシムクドリ
今回はモーツァルトが飼っていたホシムクドリのお話です。
あえてセリフをほとんど入れずに描き、背景は空の色をイメージしています。
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モーツァルトの飼っていたホシムクドリのナフ(ドイツ語で道化師)は飼い主の作曲したピアノ協奏曲17番第3楽章(下の動画26分6秒から)の冒頭のメロディを少しアレンジをきかせてさえずっていたと言われています。そしてそれをモーツァルトは楽譜に起こし、「美しかった!」と賞賛していたエピソードがあります。
この漫画を描いたのにはわけがあります。
2025年1月24日の夜、私が飼っている文鳥「ナフ」が3歳と11ヶ月で息を引き取ってしまいました。23日の夜に異変が起きてからたった1日でのことでした。
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ナフはこの200年以上前に生きていたホシムクドリにあやかって付けた名前です。
ナフさんはちょっと私の姿が見えなくなるとチュンチュンと呼び鳴きし、必死に後をつけていました。本当に可愛い子でした。
この漫画でホシムクドリのナフが紙を噛むいたずらをしたり、肩に乗ってくつろいでいたり、痙攣しながらモーツァルトの手の中でその生を終える最期は文鳥のナフさんが辿ったのをそのまま描きました。
そして愛鳥を手に涙を流すモーツァルトは私でもあり、同じようにナフさんを可愛がっていた私の家族でもあります。
亡くなった直後は何かしてないと涙が止まらなくなるので昼間はヴァイオリンを練習し、音出しの出来ない夜にこの漫画を描いていました。この世にいる人達に完全に忘れられた時が本当の死だという考えがあります。ホシムクドリも文鳥も、この2羽のナフには2度目の死を迎えさせないようにこのような形で記憶を残そうと思いました。
最後のページはこの世を去ったモーツァルトがあの世でナフと再会します。これは虹の橋の詩を参考にしたものです。そしていつか私もこの詩のようであってほしいと願っています。
「虹の橋」 作エドナ・クライン=リーキー
天国の入り口の少し手前に「虹の橋」と呼ばれる橋があります。
愛された動物達は、お別れが来ると この虹の橋に旅立ちます。
そこに行った動物たちは、広い草原や丘を走り回り、思い切り遊んでいます。
ぽかぽか降り注ぐ日差しの下で美味しいごはんを食べ、綺麗な水を飲んでいます。
あの子達は、暖かく気持ちのいい場所にいます。
病気だった動物も、寿命を全うした動物も、元気になり、活力にあふれています。
怪我をした動物も、不自由な体だった動物も、健康な体になり、生き生きしています。
私達の記憶と夢の中にある、あの元気だった頃のように。
あの子たちは、みな満足して安らいでいます。
でも、1つだけ足りないものがあります。
あの子たちにとって特別だったあの人、別れなければならなかったあの人がいないのです。
あの子たちは、今日も走り回って遊びます。
ある日、あの子は急に立ち止まり、目を凝らします。
キラキラ光る目が一点を見つめ、希望と喜びに体が震えます。
突然、弾かれたように走り出します。
緑の草原の上を飛ぶように走ります。
足が、もどかしく宙をかきます。
早く、早く…
あなたを見つけたのです。
あなたと、あなたの大切なあの子は、ついに再逢できたのです。
固く固く抱き合います。もう2度と離れません。
幸福のキスがあなたの顔に降り注ぎます。
あなたは優しく何度も体を撫でます。
頭を撫でながら、信頼にあふれた真っ直ぐな目を覗き込みます。
そう、お別れしても、決して忘れることのなかった目を。
そしてあなたは、虹の橋を渡り天国に向かいます。愛するあの子と一緒に。
最後に、ナフさん。
ありがとう。また会う日まで。