【ゲスト講義第1回】ノートテイキングの基礎
2月10日に開催された講義「ノートテイキングの基礎」の振り返り記事です(この講義の1回目の投稿はこちらです。こちらの記事でカバーできていないお話がしっかりあります!)。
ゲスト講師として白倉淳一先生(ブログ)をお迎えました。その1時間半の講義の要点を、筆者(よしむら)が特に学びが多かったと感じたことを中心にお伝えします。
ノートテイキングで最も大事なこと
①自分が訳す時に役立つように書く(役に立たないなら書かない方がいい)
当日、白倉先生は「これだけ覚えて帰ってね」と言われていました。逐次通訳において、話者の発言を再現する手段としてノートテイキングを行います。したがって再現の邪魔になってしまうなら取るべきではなく、書かない方がいい場面もあると強調されていました。それは、判読不能な文字、話の流れがつかみにくい単語の羅列、判別できない記号を書かないことです。原発言の再現の役に立たない・逆効果をもたらしてしまうノートテイキングを避けよう、ということです。
この重要性は、通訳訓練を受けられたみなさんだけでなく、どなたでも普段の生活から想像しやすいと思います。TVでおいしそうな煮物料理が紹介されているけれど、どうしても最後まで観れない。そこで、そのメニューを後で作るために、料理名、番組名、放送局、可能なら時間帯など軽くノートにまとめておけば、ウェブ検索を後で行えます。確かに、調味料のバランス、数々の調理テクニックに驚かされ、書きつけたくなるかもしれません。しかし確実なレシピを得るには、番組サイトに辿り着く情報を残しておくことの方がより重要です。
②あらゆる「訳出資源」の大切さを忘れない
上記の補足として、もう一つお話されていたのが、原発言、資料、関連知識が同様に大切であることでした。ノートテイキングはリソースの1つに過ぎず、こういった「訳出資源」を最大限活用するのが大切となります。
必ずノートに取る情報
白倉先生が最もノートに取るべきとお話されていたのは、以下の情報についてです。
①意味・文章の構造
通訳においてはすべての言葉が等価ではないため、話者のメインメッセージを見極め、頭に浮かべたイメージから、通訳者が話を再現できるかがとても重要です。
話の流れを再現するために文章の構造の柱になる言葉は要チェックです。逐次通訳においては、数十秒から数分の話を再現するためです。
主に気を付けるものには例えば…
・「だれが・なにを・どうした」
・因果、時系列、論理
・叙法(事実・仮定などがわかる助動詞など)
・時制、単数複数、特定・非特定
といったものがあります。
ここで特に強調されていたのが、「話の大枠のノートが取れていると細部も表現できるようになる」ということです。樹木でいえば幹に当たる「意味や文章の構造」が理解できていれば、枝葉である細部も後から補足していけるのです。そういった付帯的な情報を訳すことを実際に現場で何度も経験されたそうです。
②固有名詞・数字
とにかく忘れてしまわないように、他の事項をノート中であっても、途中で切り替えて書き留める必要があります。
練習の重要性・目的
筆者のような初学者向けの練習方法の紹介の前に、ノートテイキングの練習の重要性について白倉先生のご意見を確認したいと思います。
ノートテイキングは継続的な練習によって、自動化(習熟)させることが重要です。先述の他のリソース(原発言、資料、関連知識)を最大限に活用できるようになるからです。
これは、慣れている野菜炒めの火の強さや炒め時間に心配がない状態、つまり自動化している状態であるからこそ、他のメニューや片付けを同時に行うことができるのと、とても似ていると思いました。
初心者におすすめの練習方法
白倉先生より「まごころを込めて」紹介していただいた初学者向けのノートテイキング練習方法です。
①印刷された文章を読みながら、ノートを取る
②取ったノートを元に訳出する
③(録音を分析して)再度①→②と繰り返す
ここで気を付けるポイントは以下です。
・簡単な文章からはじめる
・同じものでノートをとり、訳出をする、という繰り返しで型を作ることを目指す
・訳出時のノートは読まず、眺めて再現する
・毎回やり方を工夫してみる(ノートを取る時間や意識する弱点に変化をつける)
筆者も実際に取り組んでみて発見がありました。それはノートテイキングに慣れていない人ほど、進歩のスピードが早いかもしれません。練習の重要性でお話させていただいたように、だんだんと自動化していくと同時に、気が付く情報の量が増えます。その上、自分なりの読みやすい字の大きさや記号も、研究を重ねる中で利用すれば「聞く・理解する」にリソースを割くことができそうだと、僅かながらも希望が持ててきました。
まとめ
・ノートテイキングで最も大事なこと
①自分が訳す時に役立つように書く(役立たないなら書かない方がいい)
②あらゆる「訳出資源」の大切さを忘れない
・必ずノートに取る情報
①意味・文章の構造
②固有名詞・数字
・練習を重ねて、自動化する必要がある
・初学者はやさしい書かれた文章で、何度も練習すると良い
今回はとても貴重なお話をしていただきありがとうございました。
本文ではあまり触れることのできなかった内容は、こちらの投稿からも確認していただければ幸いです。
白倉先生、第二回講義もぜひよろしくお願いいたします。
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