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特許庁発送書類のデジタル化=特許事務担当者の感じるメリット=

2024年4月1日から特許庁からの発送書類を電子で受けとれるようになりました。設定は簡単です。インターネット出願ソフトで設定するだけで、これまで紙で郵送されていた書類の多くがデジタルデータで受領できます。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/hassou_digitalize.html

IPTech弁理士法人では、特許証・登録証、識別番号通知、年金領収書、包括委任状番号通知等、電子で受け取れるものはすべて電子で受けとるようにしています。その結果、次の業務が効率化できました。

  1. 郵便物への受領印の押印、開封、仕分け作業

  2. 郵便物のスキャニング

  3. スキャンデータの所定のフォルダへのアップロードと担当ごとのふりわけ

  4. スキャンデータのデータベースソフトへの取り込み

  5. スキャンデータの個々の案件フォルダへの格納

デジタルデータで受領できる書類については1と2はなくなり、3から5は自動化処理を進めた結果、ほとんどの書類で手作業が大幅に減りました。
同一顧客で同日登録の複数件の商標登録証がある場合などは、デジタル化&自動化の恩恵を強く感じます。手入力での作業では入力ミスやファイルの取り違え等にも気をつけねばなりません。が、デジタルデータ=HTMLをデータベースソフトに取り込むのなら、そういうヒューマンエラーに神経を割かなくてよいからです。

顧客から不満はでない?

実際にやってみるまで特許事務担当者として最も気になったのは、「特許証、登録証を紙で欲しい顧客にはどう対応したらいいのか?」という点でした。
これについては1カ月以上前から特許査定・登録査定受領報告時に「4月1日以降は登録証は電子データのみとなります。原紙の郵送はありません」と説明、周知し、お客様のご理解を求めました。幸い、紙の特許証・登録証をどうしても送ってほしいと希望されることもありませんでした。
もしかしたら、お客様の方でも特許証・登録証の原本を送られても、保管場所や管理ルールなどの問題からもてあまし気味だったのでは?とすら感じます。

デジタルならではのスピード感がある

ヒューマンエラーが防げたり、作業効率が上がったりというのもデジタルデータ受領のメリットですが、もうひとつよかったのは、事務所での手続き後の、特許庁での処理の速さです。
設定登録料納付手続きを例に挙げると、納付日から特許証・登録証発送日までだいたい1週間ほどです。
以前は納付日から特許証・登録証の受領まで1カ月ほどかかっていました。紙原本がないというだけでここまで速いのかと驚きます。

紙の保管に手間と場所をとられない

年金領収書や識別番号通知書は、事務所によっては顧客へ郵送しているかと思います。郵便料金も値上がりしたことですし、デジタルデータでメールやチャットアプリに添付して納品が完了したほうがコストは抑えられます。
また、こういった書類(物理)をファイリングする手間、そのファイルを保管しておく手間と場所も、電子化なら省けます。

たとえ所内業務の自動化まではしていなかったとしても、デジタルデータで受領するメリットは十分にあります。

電子特殊申請は怖くない

特許庁からの発送書類だけでなく、申請書類も多くの手続書類でデジタル化が進みました。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/shinsei_digitalize.html

電子特殊申請を使って提出可能になってとても助かっているのは、30条証明書の提出、包括委任状の提出、異議(受け)事件の各種書類の提出です。
これまで、紙に印刷して郵便局窓口で簡易書留で提出していた書類をインターネット出願ソフトで提出できるので、印刷用紙・インクカートリッジ・封筒・郵送料が節約できます。事務担当者が郵便局まで移動して離席することもないので、少人数の事務所にはとても便利なはずです。

コスパやタイパばかり重視するのはいかがなものかというご意見もあるかと思います。しかし、発送書類や申請書類のデジタル化によって、特許事務担当者の雑用が減ってリソースを他の業務にふりわけられるようになったのは、とても喜ばしいと感じます。

デジタル化は進めども、紙で届く書類、紙で提出する申請書類はなくなっていません。
異議番号通知や異議書類の副本、移転登録申請や名義変更に用いる譲渡証書等は紙提出が必須です。それらの書類の保管期間なども、次回の投稿で書いてみたいと思います。