商標が普通名称化してしまうとき
特許とか意匠とか商標というとなんだか特別なものに思えるかもしれませんが、私たちの暮らしもそれらで実はいっぱいです。掃除機の中にはゴミやほこりだけではなく、特許の中身が詰まっていますし、ちょっとしゃれた食器の模様はもしかしたら意匠登録がされているのかもしれません。
そのうち商標は、例えばアディダス、プーマなどのスポーツメーカーだったり、シャネルやルイヴィトンなどのブランド名だったり、一番想像がつきやすいものではないかと思います。
商標には、以下の4つの機能があるとされています。
自他商品等識別機能
出所表示機能
品質等保証機能
宣伝広告機能
要は自分の会社で売っている商品や提供しているサービスと他の類似商品(サービス)とを区別しやすくする役目をもつのが商標と言えるかと思います。だから、偽ブランドの輸入や流通が取り締まられるわけですね。だって偽ものは、本家本元が長い年月をかけて努力して作り上げてきた無形のブランドにただ乗りをして、上記の4つの要素をちゃっかり利用してお金儲けをしようということですから、よろしくないわけです。
商標が知れ渡っていると、それだけ模倣されるリスクが大きくなりますが、それ以外にも問題点があります。それが「普通名称化」です。
「普通名称化」とは、ある商標が有名になりすぎて、それが日常生活でも普通名詞の代わりに使われるようになることです。
有名な例では元はホッチキス社から輸入された道具だったのに、日本では紙をとめる道具の名前になってしまった「ホッチキス」があります。ホッチキスにあたる英語のステープラー(stapler)やドイツ語のヘフター(Hefter)は、どちらも「紙をとめる機械」みたいな意味で、元々の日本語の「紙綴器」と同じような言葉なのに、日本でのみ「ホッチキス」が独自の展開を遂げて広まっていったというのもなかなか興味深い話です。
ウィキペディアを見てみると、「トランポリン」、「ビデオテープ」、「セロテープ」、「ヘロイン」あたりも元は商標だったようです。あらあら、「正露丸」も普通名称化しているんですね。
このように元々登録してある商標であっても、それが広まりすぎてしまうと、逆に商標としての地位が剥奪されてしまうので注意が必要になるということです。商標として登録されている文字列などが特定の商標やサービスを判別させる力を失ってしまうからです。正露丸で言えば、元は特定の薬を指すはずだったのに、のちのち胃腸薬や腹痛でのむ苦い薬みたいな意味に一般化されてしまったということでしょうかね。
コピー機で有名な「ゼロックス」は、逆になんとか普通名称化を阻止した例として色々なところで紹介されています。これはアメリカでコピーに変わる言葉として人口に膾炙されすぎたので、ゼロックス社がいろいろ頑張って普通名称化を防ぎました。社名変更や「xerox」を動詞として使わせない(当時はコピーするを表す「xeroxing」とかいう言葉までできちゃった)など地道な努力を続けたことが奏功したようです。
まぁよっぽど有名な商標でなければ普通名称化は起きないことかもしれませんが、普段から自社商標の使用基準や監視の仕組を設けておくことは重要かと思います。もし商標ポリシーについてご相談があれば弊所までご連絡くださいね。担当弁理士がご相談にのります。