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夜明けの一本杉 Vol.2 ~キノシタSHOES~

第2回となる今回は、商店街の入口すぐの靴屋さん、SHOESキノシタの木下博安さんのお話をお届けします。1995年、1996年に一本杉で行われた七尾国際石彫シンポジウムの実行委員長を始め、長年に渡って一本杉の活性化に携わってきたTHEアツい漢・木下さん。語り部処ではお魚の美味しい時期や食べ方についてお話されていたんだとか。是非店舗で聞いてみてください!(近藤)
※括弧内は筆者による補足。


その日

ー震災当日の様子を教えてください。
自宅は御祓地区じゃないから、揺れた後も、どこにも行かなかった。最初、輪島で津波が3mとかって聞いて、みんな慌ててたみたいだけど、実際は20cm。七尾は湾の奥やから、津波が吸収されて、ちっちゃくなる。実際は向こうの方は被害があったみたいだけど、私は(津波なんか)来るわけないやんって、家にいました。

ー震災後初めて一本杉に来た時はどんな感じでしたか?
当日の2時間後くらいには一応ここに確認に来たんよ。その時は外壁が剝がれたり。1番心配していたのはショーウインドウのガラス。これがどうなっとるかなっていうのが心配で見に来たんだけど、すんなり来れなかったね。(一本杉通りに入る)それぞれの橋の段差が車で通れる状況じゃなかったから。御祓川の橋もここだけ、仙対橋だけ通れた。一応、お店を全部見て確認して、何ともなかったなあと一安心。自動ドアが動かなかったけど、なんかレールから外れたみたいな感じだった。まあそれを戻したら普通に動いた。でも商品は全部落ちていた。まあそれは元に戻せば済むことやからな。

ー罹災証明とかは出たんですか?
なんも罹災にのるような被害はなし。たまたまや。被害と言えばエアコンの室外機が倒れて、廃棄するくらい。半分だか補助が出るみたいだけど、それをやってる暇がない。自宅は半壊。手続きが細かくて面倒くさい。それに今はかかりきり。

被害のほとんどなかったお店の外観

商店”街”

ーこれからの一本杉通り商店街の復興・復旧に向けて、考えていることを教えてください。
商店街の再生っていうのは難しい。それぞれの商店は復活するだろうけど。

ー商店”街”は難しいと?
商店街の商店”街”たる由縁というか定義っていうのは、いろんな業種があっていろんなものがそこで揃うっていうのが商店街でしょ。一本杉は商店”街”になるのは難しい
私も若い頃は商店街のこういう活動(活性化活動・地域おこし)は30年?40年?やってきたかな。色々やったんです。花嫁のれんも含めて。
随分前に商工会議所と、行政も絡んでたかな。あるコンサルティング会社に、これからの商店街はどうしていくべきかみたいなことをやった時に、コンサルタントの人が一本杉見に来て、「25年経ったらこの商店街はなくなるでしょう」「(25年後に)残ってるのは仏壇屋さんくらいかなー」って言って行った。今の足りないことは何かとか対策についても言って行った。でも仏壇屋さんも1軒なくなったしな。それまでの対策は、色々考えてやってきたつもりだけど、結果的にはダメだったってことだ。それが、コロナと震災で5年間早くなったってだけで。

いざ、東海岸へ

昔、アメリカの東海岸(ニューヨーク、ボストン、ワシントンDC)に視察に行ったんよ、私。一本杉の3人、徳永さん、大田さん、石田さんっていう眼鏡屋さんとね。県の視察研修に参加したけど、その時に色々勉強して。アメリカはまちづくりの組織を作って、お金もあげます、権限もあげます、やってくださ~いっていうので成功したっていうから。1番感動したのはニューヨークのソーホー(SoHo※)かな。倉庫群を街にっていうのが良かった。国レベルで言えば、ヨーロッパはもうガンガン規制したでしょ、大型店をね。だから古いところが残っとるって。
※SoHo:South of Houston Street(ハウストン通りの南)というニューヨークのダウンタウンにある地区名。1970年代に芸術家の町として盛り上がり、近年は高級ブティックやレストランが立ち並ぶまち。

ーじゃあアメリカでやってたことを七尾でやってもダメってことですか?
難しいかな。帰ってきた時は、あーでもないこーでもないって模型まで作って、ここにこんな風にってみんな言ってたんだけど。そういう熱さがなくなったっていうか、歳いったからね。なかなか思うようにはいきません。これはこれから若い人たちがやっていくことだから。口も挟まんし。

良いものを長く

ー(修理依頼の靴を受け取りに来たお客さんが見えて)靴の修理もしてるんですね。
それでなんとか息しとる。モノ売っとってもだめよ。靴修理しとるところってないんやわ。だからずいぶん遠いところからも口コミで来るわ。

ーじゃあそういう人たちのために続けようという感じですか?
それは思う。輪島で靴買えるとこなくなった、穴水で靴買えるとこなくなったとか聞くと辞められんね。細々とでもね、けどもあともうお3年かなあって(笑)

ー今ファストファッションとか流行りでみんな安い物買ってすぐ捨てるみたいな感じですもんね。修理しながら長く使えるって素敵だと思います。
良いか悪いかどっちかやんね、今ね。あの人も(修理した靴は)20年前の靴(笑)20年前の靴でも直してくれ~って持ってくるから、ダメとも言えんしね。

木下さん、インタビューに応じてくださりありがとうございました!

やるまいかい!(=やろうぜ!)

『郊外路面店や大型S.C.などの進出により市街地商店街の空洞化は益々すすむ傾向にあり、いずれの商店街も営業密度の低下や連続性の乏しさに、商店街の機能も失いつつあります。しかしこれを消費者の購買行動の変化によるものと単純に切り捨てて、なんの行動も起こさないという訳にはいきません。(中略)生活者であり、商業者でもある私達が、地元住民の生活を支える要素である商業のみならず、様々な生活機能を、有機的に複合させ、その相乗効果を求めながら、独自性を持って、その方向と役割を探索しなければなりません。』
七尾市発行「七尾国際石彫シンポジウム’95 」(1995) 展望 木下博安より引用

ーそんな商店街と全力で向き合ってきた木下さんだからこそ、これからの一本杉について考えていることはありますか?
栄えていっては欲しいと思ってる。なんてったて中心商店街の中でも、ここは中心地や。こういうショップはなくなっても、誰かが新しくこういう風にやりたいんですけどって言ったら、例えば誰かがお店を貸してあげたり。ここも3階建てで2階はそっくり70坪空いとるんよ。それをなんとかしようと私は考えとる。シルバーカラオケとか(笑)スナックみたいんじゃなくて本当にカラオケだけ、とか。広いからダンスでも良いし、そういうお年寄りの集える、暇つぶしになるような、っていう考えはあるんやけど。まあ何年か先やろね。

ーシルバーカラオケ若いもんも入れてくださいよ~(・´з`・)
だめだめ!(笑)50歳以上(笑)

ー入れない…(´;ω;`)

取材日:2024/8/27

店舗情報

SHOES キノシタ
店主:木下博安
店舗住所:石川県七尾市生駒町9-2 
営業時間:当面の間は9:30-17:00
定休日:不定休
電話番号:0767-53-0655
https://maps.app.goo.gl/KbEa9spcGbXXwrYY7


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