夜明けの一本杉Vol.9~漆陶舗あらき~
第9回となる今回は、幕末の嘉永年間創業、輪島塗や九谷焼などの販売を行う漆陶舗あらきの新城礼子さんのお話をお届けします。震災直後は店舗や商店街の様子を見てもうお店を辞めることも考えたという新城さん。一本杉通り商店街のある人の言葉で、再起を決意したそう。4月から仮店舗での営業再開に漕ぎつけました。(近藤)
店舗再建に向けて
ー現在の営業状況、復旧状況について教えてください。
4月の初旬から、今の仮店舗に災害から免れたものだけを陳列して営業はできている状況です。元の店舗の解体は8月にて終了しました。
ーなるほど。今は店舗の再建に向けて動かれているというところですね。クラウドファンディングも拝見しました。
本当に皆さんのご協力やご支援をいただきながら何とか前に…まあ時々こう振り返りたくもなるんですけど…。やっぱり決断が早かったねってみんなに言われるんですけど、早かったのは早かったなりに(苦労がありました)。中々自分たちの思うようなものを持ち出せなかったりって言うのも沢山あるんですけど、今は店舗再建に向けて動いています。
今のところ当店に関しては、今の現状を維持しながらお店は再建していくつもりなんですけど、「今まで通り」っていうものには中々ならないかなって思っているんです。時間も勿論かかるし、1番七尾市の軸となっている和倉温泉の復旧が中々そんな簡単なものではないなと思っているので。当店もどちらかと言うと和倉の旅館さんにお仕事を頂いていた業種なんです。例えば結婚式の引き出物であったり、仏事・御法要の記念品であったり、旅館さんの売店にもいくつか出店させていただいていたものですから。そういったところが今機能していないという状況が、いつまで続くのかというところが今1番不安で。「今までの」業種形態、お店をそのままやっていくっていうのは中々難しいのかなと思っています。
川嶋さんとの出会い
震災当初、社長はお店や町中の様子を見て、「もう無理かな…」と言っていたんです。私もその言葉を聞いて、これからは孫守りをしながら年金生活かな~と思っていました。
そしたら、1週間もしないうちに「やっぱりやる!」と言い出したんです。そこで、理由をたずねると、一本杉で川嶋さんと出会い「僕は絶対この一本杉で再建するので、あらきさんも絶対再建してください!」と言われたそうです。川嶋さんは、今では予約困難なお店としても有名な料理人さんですよね。その腕を持った彼は、別に一本杉でなくても「金澤 川島」とか「六本木 川嶋」でもやって行けると思うんです。でも、この一本杉を選んで再建しようと決意している姿にきっと社長は突き動かされたのだと思います。
ーそんな中で、自分のお店に関して夢やビジョンなどはありますか?
これまでのお店は色んなジャンルのものがあって、みんなうちにくれば何かあるやろ、それらしきものがあるんじゃないかっていうイメージを持ってくださっていました。それをこれからも継続して、「あらきにくれば何か(求めているものを)買えるやろ」っていうお店づくりをしていきたいと思っています。その中で、新しいお店はスペースが限られているというのがネックになってくると思います。それでも、石川の伝統工芸品に特化したものから、幅広い商品を取り扱って、これまでやってきたノウハウや業者とのお付き合いから、あらきに来たら何かあるよっていうお店にしたいです。
ー新しい店舗は飲食店もセットなんですよね!
そういう風にしていかないとダメなのかなという思いもありつつ、社長の夢も半分あるんですけど(笑)飲食で人も集える、そこでうちの商品の器も使うという夢を抱いています。新しくできる飲食店のスペースは、輪島塗の絵付け体験や沈金体験などの体験コーナーとして利用したり、飲食店なんだけど、多目的に使える場所としても動かしていけたらいいなと思います。
オリジナルの伝統工芸品
ー今後どのようなお客様が増えたら嬉しいですか?
今までにも少しあったのが、企業様からのオリジナル商品を作ってもらえないかっていうお問い合わせで。それもいくつか商品化できたんです。そういう経験をもう少し強みにできないかなっていうところで、うちの商品は石川の伝統工芸品なんですけど、輪島塗、九谷焼、山中塗の伝統工芸品を使ってのオリジナル商品化っていうものを、まあ伝統工芸品は手作りなのでそんなに大量生産はできないんですけど、小口でのオリジナル商品を企業様に紹介できないかなって思っています。
ーすごくいいですね。学校の卒業記念品とか、成人式の記念品でもらえたら私も嬉しいなって思います。
そうですね。そういったものをやっていけたら良いなと思っています。
ー最後に復興への思いの丈をぶつけてください!
この震災は皆さん個々のお店なりに、色んなことを見つめ直すいいきっかけにもなってると思うんです。震災で落ち込むのではなくて、ちょっと目先を変えて、今だからこれってできるんじゃない?とかこんなことやってみてもいいんじゃない?って、もっともっとチャレンジしていっていただけたらいいんじゃないかなって思います。
皆さん前を向いて、もちろん自分たちもだけど、諦めずに、前に進んでもらえたらなって思います。皆さん手つないで、一緒に。
取材日:2024/9/4
店舗情報
漆陶舗あらき
石川県七尾市生駒町16-4(旧十二銀行跡)
https://maps.app.goo.gl/fTLDNrck6ah8ek3M8
営業時間:9:00-17:00
定休日:火
電話番号:0767-52-4141