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夜明けの一本杉Vol.15~きもの処 凛屋~

第15回となる今回は、きもの処 凛屋から若林千秋さんのお話をお届けします。お店の名前通り”凛”とした立ち振る舞いと、丁寧な言葉遣いが印象的だった若林さん。商売における心がけから花嫁のれんのことまでたっぷりと聞かせてくださいました。素敵なお着物と女将さんの待つお店に足を運んでみてはいかがでしょうか。 (森)  ※2024年9月現在、金沢店のみ営業中


“身近な呉服屋”として

ー一本杉で商売をするうえで大切にしていることを教えてください。
地元に密着した商売をさせていただいています。もちろん新規のお客様も大切ですが、長いお付き合いの方や地元の方に愛されるようなお店でありたいと思っています。数年前に亡くなった義父が「いかにお客さんのお役に立てるか」ということをとても大事にする人だったので、私もそれを心に留めてやっています。

ーなるほど。”身近な呉服屋”というモットーも、そういった心がけが関係しているんでしょうか?
そうですね。みなさん、着物って身近なものではないですよね?

ーはい、私にとっては非日常ですね(笑)
おっしゃる通り着物って非日常的で、着物そのもののことや、お手入れだとか色々なことが分からないという方って多くいらっしゃるんですね。そういった色々なことを、まずはどんなちっちゃなことでもいいからお聞きする。そしてやったことがないこともできる限り対応するようにしています。商売をしている限り、商材を販売するというのがメインにはなるんですが、お客様がすでに持っているものの中で何か問題を解決をすることも店の業務の柱となっていますね。

花嫁のれんあれこれ

ー語り部では花嫁のれんのお話をされていたと伺いました。
うちは呉服店で花嫁のれんそのものを販売したり製作したりするお店でもあるので、花嫁のれんの謂れや使い方だったり、一枚一枚に込められている想いについてお話させていただいていました。震災前は店の前と中にもう一枚と常設展示していて、今お店は閉まっていますが「お店や町が暗くならないように」と思ってなんとなくずっと手前に一枚飾ってあります。

見る人の気分を晴れやかにしてくれます

ーそうだったんですね!花嫁のれんのこと、もっとお聞きしたいです(笑)
そうですね(笑)  良く出てくる柄は伝統柄でいうと花車やおしどりです。花車は、御所車(牛車)というものにいっぱいのお花が乗っているものです。それが華やかで花嫁さんを思わせるということで使われますね。あとはおしどりです。おしどり夫婦、ということですね。

ー時代によっても花嫁のれんに色々な違いがあるとか。
本当に昔の、昭和初期とかの方がかなり面白い柄が多いように感じますね。自由な発想と言いますか。その後、みなさんが当たり前のようにご用意されるようになった時代は定番柄が決まってきていました。要はカタログみたいなものがあって、そこから選ぶような時代が来たんです。花嫁のれんの風習が段々と薄れてきた今は、花嫁のれんをご用意される方はやはり「他にはないデザインのものを」とこだわってお作りになられますね。

ーなるほど。現代ではお住まいに仏間がない方も多いと思いますが、それでも花嫁のれんを作ることってできるのでしょうか。
鋭い質問ですね!(笑) 本当は仏間の入口に掛けて、花嫁さんがくぐってお仏壇にお参りするというのが花嫁のれんの正式な使い方にはなるんですが、仰る通り今お仏壇や、そもそも和室がないという方もたくさんいらっしゃいます。ですので今はみなさん柔軟に考えて、披露宴会場にかけられたりとか、披露宴のお色直しで入場される時にくぐられたりっていう演出などに使われたりもしていますね。

ーその時々でのれんが使われる場面も変化してきたんですね。勉強になります!

日常を一本杉に

ー一本杉通りで商売をされてきた中で印象に残っていることはありますか。私は金沢の生まれ育ちで、結婚して嫁いできました。右も左も分からずに嫁に来たのですが、色々な方にお会いしても「一本杉の凛屋の嫁です」とご挨拶するとみなさんすぐ「ああ、一本杉ね」と分かってくださったのを覚えています。
あとは、義父がすごく楽しい人だったんです(笑) こっちに来てからたくさんの方に「一本杉の高明さんのところね〜」「高明さん、面白いよね」と言っていただけて。これから商売に身を置くにあたって、お義父さんだったり前の世代が長くやってきたことの延長線上に今自分がいるんだなという気持ちになりました。

ーお義父様はどのような方だったんでしょうか。
とにかく優しい人でしたし、町の皆さんともよく親しくしていて、色々なことにとても一生懸命な人でした。本当に様々なところで言われたんです、「あ〜あのお父さん面白いよな」って。それでこっちは「はい(笑)」みたいな。

ー素敵です!では最後に、一本杉復興への想いをお聞かせください。
一本杉の良さとして、老舗のお店がたくさん並んでいて、面白い女将さんたちがいらっしゃるというのがあります。なので「ここが元気じゃないと」という気持ちはありますね。ですので遠方からのお客様に復興した姿をお見せするのはもちろん、より地元の方にも来ていただいて、「やっぱり一本杉やね」と思っていただけるくらいに通りが元気になったらなと思います。
道を歩いたら近所の方がいて、お互いに挨拶する。そういう日常が今静かになってしまっています。個々のお店が頑張って復興することが商店街全体の復興になると私は思っていて、みなさん色々なものを抱えていらっしゃると思うんですが、それぞれが少しずつ課題を解決していってまた元のような日常が戻ってくると良いなと思います。

ーありがとうございました!

取材日:2024/9/9

店舗情報
きもの処 凛屋
店舗住所:石川県七尾市一本杉町8(臨時休業中)
https://maps.app.goo.gl/6SGRmzUhzwr3wKfd7

きもの処 凛屋・金沢店
店舗住所:石川県金沢市弥生2丁目21−7(営業中)
https://maps.app.goo.gl/MKCQhdQmCgMPSeNh6
営業時間:11:00~18:00
定休日:水曜日・第一火曜日
電話番号:076-254-0440



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