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夜明けの一本杉 Vol.4~戸田眼鏡店~

第4回となる今回は、商店街の入口に130年続く、時計・眼鏡のお店、戸田眼鏡店の戸田和貴さんのお話をお届けします。東京の大学を卒業し他業種に就いた後、家業を継ぐために眼鏡屋さんで修行し、一本杉に戻ってきた戸田さん。そんな戸田さんが感じる東京と七尾との違い、店主として一本杉で大切にしていることとは…?(近藤)※括弧内は筆者による補足。

その日

ー震災当日の様子を教えてください。
1回目の地震で外に出て、2回目の揺れで目の前の中山薬局さんがわーっと崩れたのを見て。その後津波が来るっていう話だったので、避難場所の小丸山公園にみんなで行ったんですけど、途中もやっぱり家崩れたりとかしとって、夢なんじゃないかなって。実感がない…けど津波が来たらやばいし…って感じで。
店としては、トイレが壊れたり、所々ヒビが入ったりとか、あと床もちょっと割れたりとか。あとそこの(店舗入口付近の)地面の段差ができたのが地味にちょっと…お客さんも車停めづらかったりとか、最初段差で転ぶ人もおったりとか。まあ、全壊とか崩れたとこに比べればうちはまだましやけど…

ー罹災証明は一部損壊とかですか?
いや、半壊。

ー半壊なんですね!?全然見えないです…
そう。やっぱり、2階もひどかったりとか。あまりにも周りのインパクトが大きすぎてアレやけど。うちはまだ商売が自分達のとこでできとるだけまだマシかなって。

ーじゃあもう修繕とかなしでこのままずっとご商売されるんですか?
いや、今ずっと頼んどるんけど、やっぱりなかなかすぐには来てもらえんくて。やっともうすぐトイレ直るかなあってとこねんけど、それもちょっといつになるか、まだちょっと分からないかな。店の修繕はまだそれよりもかかるかなって感じ。

ー修繕しつつこれからも続けていくって感じですかね。
うん、もちろんもちろん。

眼鏡を通してその人の人生に寄り添う

ーご商売を続ける中で、これまでで1番印象に残っている出来事や思い出はありますか?
これが!っていうのはないけど、小さい子が頻繁に来てくれることかな。子供専用の治療用眼鏡をおれが帰ってきてからやり始めて、みんな色々来てくれたりとか、小さい子は調整も結構頻繁にやらなダメだから、そういうのも来てくれとったり。そういうのは印象深いかな。根本は目を、成長する上でしっかりと治していく、治療していかなだめだから、そこに対して責任もってやれるのはいいかなって思う。

ーその人の人生に何年も関わるみたいな感じですね。
そうやね。人の目って8歳にはもう完成してしまうから。だから眼鏡治療は早ければ早いほど良くて。今うちで来とる子で1番小さい子は大体3歳くらいから来てくれるんだけど、大体それで8歳までとか、しっかりかけてもらって、治療して。大きくなってそんなに度数が強くならんでよかったねって感じになれれば。

一緒に年を取るサイクル

ー一本杉に新しいお店ができるとして、どんな方にお店を開いてもらいたいですか?
個人的には、うちの親とかもそうだけど、今親世代がおって、自分達世代がおって。みんなどんどん歳は取っていくもんで、今、跡継ぎがおらんところは辞めざるを得んと思うし、実際辞めとるとこも多いし。やっぱりおれくらい、30代の人とか、20代の人とかでも良いし、若い人たちが空いとるとこ入ってきてくれて、でまたみんなでこっから年取ってくみたいなサイクルをつくってかないと、どっかで途切れた時点で終わるわけで。若い人とか、あと個人的に居酒屋さんとかそういう…(笑)いまは一本杉には居酒屋は一軒もないから(笑)そういうお店とかもあると、また夜とかでも人の通りがあったりとか、賑わいとしてはまあいいんかなーと、個人的には思いますけど。

真面目に、誠実に

ーお店の将来のビジョンやご自身の夢があれば教えてください。
店舗を増やすとかっていうのは全くなくて、この場で真面目に、誠実に。お客さんがずっと来てくれるようなお店づくりをしていって、続けていきたいかな。

ー続けていくのが1番の目標って感じですか?
そうね。勿論ご飯もちゃんと食べられて(笑)だからめちゃめちゃ儲けて何がしたいっていうよりも、しっかりと商売をここでやってくっていうのが目標かな。結構うちながくて、おれで5代目なんだけど、年数で言うと130年ちょっとやっとるお店で。そりゃやっぱり続けるために帰ってきたっていうのもあって、ここでちゃんと商売をしていくっていうのが目標かな。

東京と七尾の違い

ー最後に、自分を表わす言葉や大切にしている言葉を教えてください。
まあ、「誠実さ」かな。そこに尽きるかね。
ー何故それを選んだんですか?
おれもずっと東京におってん。大学から15年くらいおって、で4年前に帰ってきてんけど。向こうでは色々働いて、最後修行で眼鏡屋さんで働いて(七尾に)来てんけど。やっぱりね、東京やし、土日とか特にお客さん来たりとか。そん時にお店の売上も個人の売上も大事やから、接客について販売するわけやけど、一個一個がおざなりになるっていうか。時間かけとると結構早くしろって店長から言われたりとか。おれはもっとその人に対して、検査もそうやし、時間を使ってやりたいんやけど、お店の売らなあかんていうのもあるから。そういう風に、全部に誠実に向き合えたかって言ったらそんなことはなくて。それが今帰ってきて自分がメインでやっていくから、そこは自分でできるがいね。東京の眼鏡屋いたときみたいにバンバンバンバン人が来るわけでもないし(笑)そういう経験があって、やっぱり一人一人に向き合っていきたいなっていうのは根本にあるかな。帰ってきてね、今どっかの眼鏡屋さんに雇われとる訳でもないから。それやったら一緒やったかもしれんけど、自分らでやれとるから。そこはやっぱ大事にしていきたいなって、経験から思ってるかな。どうしてもね、サラリーマンとかやってるとね(笑)

ー時間とかに追われちゃって(笑)
次のお客さんも待っとるし、とか。

ーわかります!(笑)

取材日:2024/8/27

店舗情報
戸田眼鏡店
店舗住所:石川県七尾市生駒町8-1
https://maps.app.goo.gl/PdJWogeabnn2VBDr6
営業時間:平日9:00-18:00 日曜日10:00-16:00
定休日:無休(年に数回不定休あり)
電話番号:0767-52-0420




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