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夜明けの一本杉 Vol.7~株式会社コクブ~

第7回となる今回は、8月に仮設商店街で営業を再開した”能登の結納屋さん”、株式会社コクブの国分誠雄さんのお話をお届けします。震災を機に大学時代の友人から連絡が届いた話や復興支援を頂いた話から、一日一善を大切にする国分さんのお人柄が伝われば幸いです。よく一本杉の店舗に(サボりに)来るそうなので是非、一本杉で見かけたら話しかけてみてください!


その日

ーご自宅と一本杉のお店はもう全壊判定なんですか?
うん、後ろにあった土蔵は全壊。前の店舗は大規模半壊。後ろの方にあった日本家屋もみんな潰すんだわ。公費で更地にしてくれるからね。まだ手続き半ばなんだけど締切まだあるから。

ーじゃあもう全部取り壊して更地にして、また再建するんですか?
うん再建

ーじゃあここ(仮設店舗)じゃなくて向こう(元々店舗のあった土地)でやるんですね。
ここはね、規定では2年間しかおられんから。結局、みんな遅れると思うよ。2年間で更地にするの、遅れたらね。こないだ国会議員さんも来て柔軟に対応するって言ってたから。その国会議員さんのおかげやぞ、岸田首相迎えて、補正予算2回もくれたやろ。その恩恵に与ったんだわ。その裏には今度また、日本は火山大国やから、こないだ熊本なったろ、また南海トラフっていうのあるやろ。あんなんできると自然と地震の補助金っていうのがなくなる可能性もあるんやよ。

ー店舗はここだけですか?
これは小売りのお店。工場1つ、倉庫3つ、そのうち2つを人に貸してんねん。工場は何やっていったら、紙の箱を作っとんだわな。輪島塗の箱であったり、箸の箱であったり、お菓子屋さんの箱であったり、そういう工場をもっとる。そこがね、こないだの地震で4000万円する機械が壊れた。工場での作業は半分機械で、あとは手でやるんだぞ。新しい機械は中古で1500万円くらいで買える。管理する物件が10件ほどあったのに、みんなシャッターが壊れたり被害を受けた。

星条旗新聞でのアルバイト

私大学生の時ね、苦学生だったから土曜日曜は必ずバイトしとった。で、どこかって言ったら、今はなくなった、東京・赤坂見附のね、Stars and Stripesっていう星条旗新聞社。結構、時給よかったよ。必ず(記事を書くのが)遅れたら(記者さんは)打たれとったよ。そこは治外法権だからね。私真面目だったから卒業までさせていただいて。あの頃はアメリカ軍がベトナムに侵攻して、ベトナムの兵士に見せる新聞を作っとった。新聞も出るのと出ない部分(=記事に載る部分と載らない部分が)ある。漫画のページもあったんよ。友達みんなこれ欲しがって。タダでやっとった。

震災きっかけで繋がる縁

そんな大学生時代に教室でただ机並べて仲良くしとった奴が、震災の後、急に連絡してきた。今から55年前の話やけど、大学一緒だったんよ。わたしん時、安田講堂事件の波で学校からロックアウトで卒業式がなかったんだよ。その人とも卒業式で会わなかったんだけど、普通仲いいから電話なり、年賀状なりするじゃんか。全部音信不通(笑)それがね、震災になったらね、私、養子でここに来て途中で名前変わっとるのに、探して探して、会社にね(その友人から)電話かかってきたんだよ。そんでね、支援金を送ってきてくれたの。普通、就職すりゃ、サラリーをこんだけ使って~てするやろ?そんな中、結構なお金を送ってきてくれたの。涙が出た
うちの元社員の女の人も、いち早くこのお金使ってくださいって送ってきた。どうやって恩返ししようかなと思って。うちの会社はそんなに高くない給料で働かせとったんやけども、ありがたいよな。

一日一善

ー最後に、大切にしている言葉や信念などを教えてください。
一日一善って言葉あるの知っとる?おれも、会社で朝礼でなんか言う時、「一日一善って言葉を覚えといてくれよ」ってことを必ず言っとるんだけどね。気持ちいいがや。
朝、会社行く時、横断歩道で出てきたがる自動車がいっぱいね。そこを歩道で止まってあげて。(自動車を先に通すために止まって待っている)朝気持ちいいしいいやん。ああ、今日は少しいいことしたなって。
でもね、こないだも東京行った時3つあった。いいことしてくれた。東京はみんな忙しい。(困っている人を)無視する人もおれば正義感に燃えて支えて死ぬ人もおるけど、何があったかってね、東京行く前に大宮で降りて春日部っていうところに行きたかってん。そしたら、春日部の駅降りて東武線かな?乗ろうと思って足痛いもんで(荷物を持って)こうしてなんとか1段ずつ上がっとった。そしたら新入社員の若い子やった、「あ、私持ちます」って上まで持ってってくれた。助かったよ。
そんで今度はね、「東口どこや」って言ったら、若い、着物着たカップルの人がおったんよ。その人たちに聞いたら、普通は「誰かに聞いてください」とか「知りません」って言われたらそれまでなんだけど、東口までついてきてくれてんよ。優しい。
でもう1つは、電車に乗ったらね、優先席あるやろ?そこに座っとったおばさんが立っとった。おれと一緒ぐらいやと思っとったけど、おれ荷物もってたせいかな、どうぞどうぞって。そんな気持ちいいこと。

ーやっぱ日頃の行いが返ってきてるんですかね。
いやーわたし貧相やったけ、あれかわいそうやな~ってやってくれただけや。

ーじゃあいつも一日一善っていうのを商売においても大事にされてるんですか?
商売に一日一善ってこともないけども、まあ、そういう気持ちでね。

取材日:2024/8/26

株式会社コクブ(国分紙店 能登の結納屋さん)
店舗住所:石川県七尾市一本杉町20
https://maps.app.goo.gl/j2gcdM3qmtbe1DSQ6
仮店舗:石川県七尾市一本杉町100-24 仮設商店街内
営業時間:月・水~土 10:00-15:00
定休日:火・日
電話番号:0767-53-0512


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