見出し画像

夜明けの一本杉 Vol.8~木下精肉店~

第8回となる今回は、おやつに人気の揚げたてコロッケが食べられる木下精肉店の木下美和子さんのお話をお届けします。木下さんの親しみやすい雰囲気からか、お店の前を通る商店街の奥様方がみーんなお店に吸い込まれていく人気店。店内での「出会い」はまさに出会いの一本杉ならでは。揚げ物は16時以降、目の前で揚げてもらえます。皆さんもおやつに是非!(近藤)


その日

ー震災当日は何をされていたんですか?
私、当日はここにいなかったんですよ。だから怖さを知らないっていうか。ここに震度5が来た時に「こわいこわいこわい」ってぐーっと手を壁に添えたくらいで。県外にいたので、ちょっとわからないんです。

ーお店は全然被害もなく…?
そうですね。水が出なかった分だけお店できなかったっていうか。お肉切る機械も倒れて。でも息子が近くにいたので。すぐ直したり、元に戻したりとかしてて。あと家の中は本当に食器が散乱していました。そんな感じはみんなどこもしてましたからね。

ー今の営業状況はもう普段通りという感じですか?
もう通常通り。私も主人ももう歳いって。で、息子が帰ってきてくれて息子がもうほとんどやってくれてるので、だから「なんかかんか」って言われたら「こうだよね~」、「これするから」って言われたら「じゃあこの分お金出すね~」とか、「これ知りたいんだけど~」とか言うたら「好きにして~」とか。ほとんど息子がしてるので。今のところは通常通りでやれています。

道後ハイカラ通りみたいだった

嫁に来て、もう43、4年。そん時は沢山(商店が)あったから。もう軒並みあった。今はもう全然減ってきて。1人になって商売できなくて辞めたりとか、息子さん娘さんが継がないって言って、じゃあまあ細々とできる範囲でするって言ってできなくなったりとか。寂しいですね。
前に道後温泉の前の通り(道後温泉商店街/道後ハイカラ通り)に行った時、「昔の一本杉や!」って思ったんです。私が子供の頃も、文化の日になると露天商、カステラ、金魚すくい、たこ焼きとかがこの通りに沢山出て、簡単に通れないくらい人でいっぱいになってた。道後温泉の前もおんなじようなもの売ってるお店が連なってるのに、活気であふれてて。理想ですけど、こんな商店街にしたいって思って。
だからおんなじ業種でもいいので、「専門店」が連なる、「このストラップ可愛いから買っちゃおう」みたいな、ふらっと歩いてもいいものが見つかる、買いたくなる、そんな商店街にしたいんです。このお菓子ならこのお店、このお菓子ならこっち、このお肉ならここのお店、コロッケならここ、みたいな。ほら、ろうそくの高澤ろうそく店さん、醤油の鳥居醤油店さんとか洋服ならミズカミさんみたいな。ライバル店(お肉屋さん)でも全然いいです。本当に何でもいいので商品にこだわりを持った「専門店」が連なる商店街になったらいいな~って思います。

少子高齢化の音

ー一本杉にもっとどんな人が来てほしいですか?
若い人、家族連れにもっと来てほしいと思います。子供の声が全然聞こえないので。この御祓地区でも子供は8人とかしかいないんです。そもそも町内のお店があんまり開いてないし、人口も減ってきてるし。若い人があんまりいなくて。ほら、ある程度年齢いくと、お肉を食べないこともないけど、やっぱり子供さんがいると、どうしてもご飯がお肉系になるじゃない?本当に昔はそんな感じで子供が多くて、お肉が沢山売れて、めちゃくちゃ忙しかった。段々まちが寂しくなってくると、店の売上もそんなに。でも、自分ももしかしたら、そういうあれになったら(=歳をとったら)、スーパーで肉も野菜も日用品も一緒に揃えるかな~っていう感じがあるので、しょうがないのかな。

「出会い」を大切に
ー一本杉で御商売されている中で大切にしていることを教えてください。
やっぱり、「人と人との出会い」。いっぱい来てくださったり、話すると今度また来てくださったり。結構普通の商店というかスーパーとかと違って、こうして話しながらお買い物できる。それがやっぱり商売の強みかなって。「お肉美味しかったよ~」「揚げ物美味しかったよ~」って言ってくれて、また来るね~って言ってくれるのが嬉しいし、コロッケとかああいう揚げ物も、富山の高岡からも「本当に美味しいから来たよ~」とか言って、金沢からも「コロッケ買いに来たよ~」って突然来てくれて。で、「今時間が、揚げる時間じゃないよ~」とか言って(笑)ちょっと遠くから来た人に対しては「じゃあちょっとまっとって~コロッケ火通してあげるから~」とか言って(笑)そういう出会いっていうのはやっぱり嬉しくて、良いですね。
それと、「正直な商売」。個人(営業)なもんで、やっぱり正直な商売をしようかなと思って。

ーちなみにコロッケは何時くらいに揚がるんですか??
16時過ぎから火入れるんです。なので16時過ぎに来ていただければ。

ー自分のお店に関して、将来のビジョンや夢があれば教えてください。
自分のお店は商店街の方々が井戸端会議できるような場所にしたいなって思ってます。お店の前をふらっと通った時にふらっとお店入って話して「買いに来たわけじゃないやろ!?」みたいな。地域の人がふらっと集まれるところにしたいです。

取材日:2024/8/27


木下精肉店
店舗住所:石川県七尾市一本杉町21
https://maps.app.goo.gl/2QKfZGq8J9QrNoU1A
営業時間:月~土 8:00-18:00
定休日:日
電話番号:0767-53-0403

いいなと思ったら応援しよう!