ロイホでタラタラ。#2 虫、ありがとう。ハエ、ありがとう。
話し手:いわいあや(い)、古内一平(古)
編集・ライティング:藤田梨紗
人間が植物たちにしてきた行為
古:僕は親父が学生時代山岳部だったこともあって、小さい頃によく山に連れて行かれてたんです。山での体験は原体験として結構あるんですよ。だから、今都会にある植物に対する見方も、山とかの自然を知っているからこその見え方ではありますね。
い:健気ですよね、街の植物たちって。見ていて感動する。コンクリートの上にたくさん種を撒き散らしているのを見ると、「あ~、健気だな~」って思います。
古:それで言うと、僕は街の植物を観て、人間って混沌としてるんだなって思っているんです。僕が写真家として活動するきっかけで、今もやっぱりそれは軸である考えがあって。人間は自分達が快適に、合理的に生きていくために環境を整え、街を整備してきましたよね。だけど元々は荒地で、山や森があったわけです。元々植物があったんですよ。だけどそれを全て更地にし、コンクリートを敷き詰めて、なにも植物がない状態にした。合理的に過ごしたいならその状態で過ごせばいいのに、わざわざ排除した植物を再度植えたりしだすんです。別のところから土を入れたりして。「いや一回土埋めてるやん」って思うんです笑 すごくばかばかしいことやってるなっていうか。そういった時間の経過を想像すると、すごい滑稽に思えたことがあって。
い:あ~なるほど~。
古:僕は街中の植物のある風景をよく撮ってるんですけど、街を撮ってるっていうよりは、その背景にある人の行為を撮ってる感覚になるんですよね。排除した自然の上にめっちゃ庭綺麗な庭をつくってる家とかが、人の混沌とした割り切れなさみたいなものを感じて、面白くて気になってみえてしまうというか。
い:なるほどね~。
土の中に生きるもの
い:都会の土は本当に硬いですよね。
古:匂いがやっぱり違うじゃないですか。
い:畑とか行くと、土がふわふわで。
古:全然違いますよね。
い:やっぱり畑って土を作るという行為から始まっているから、土に対する見方が農家の人は違う。生き物として触れ合ってる。
古:たしかに。それって結構重要だと思っていて。例えば土が生き物っていう認識ができる感度って、すごいじゃないですか。僕はすごいな~と思う。だって土やん。って思うじゃないですか。
い:土が靴についたら結構嫌です笑
古:それはなんなんですか笑
い:いや汚れるから嫌だなって思うけど、でもよく考えたらそれは自分の中での勝手な思いであって、土からしたら「お前ら~!」って思ってますよね笑
古:そうそう笑 その靴についた土には生き物がたくさんついてますからね。
い:そういう社会のシステムの中に私が入ってて、土がついたら汚い、その土がついた状態でお店に入ったらだめ、みたいな決まりがあるから「土は汚い」ってなるけど、もしそうじゃない環境にいたら「わ~、土いっぱいついた、やった~!」みたいな笑 「もしこの土だらけのまま家の中を歩いたら植物生えてくるかも、いぇ~い」とか笑
古:人間ってすごいですよね。コロナ渦になってよりそう思いますけど、無菌なんですよ、基本。けど人って無菌状態で生きられないですからね。
い:土って抗うつ作用があるらしくて。細菌とか微生物とか、そういうのから何か出てるのかな。やっぱり土に触るって精神的にすごくいいらしくて。だから土とか自然から避けていると、精神的に良くないみたい。鬱になる物質みたいなのが出やすくなるのかな。
古:その菌も、ずっと同じ場所に同じ種類と数だけしかいなかったら、腐っていくんじゃないかなって思う。人間って腸内に何億もの菌がいますよね、だからそこがうまくいかないんじゃないかなって思います。
い:まあ土は土で破傷風とか怖い病気もあるし、そういう菌もいるからたしかに怖がるのも大事だけど、何も知らずに怖がるよりも、ちゃんと知って怖がることをしないと、なんか変な方向に行っちゃうと思うんです。
古:そうそう。既にもう行ってると思うんです。現に世界的に見ても日本はアトピー性皮膚炎の患者数がめちゃくちゃ多いんです。それと、日本人の過剰な衛生観念は、なんか相関があるんじゃないかって思っていて。つまり、菌を排除しすぎてるんですよ。日本だけじゃないですか、トイレにウォシュレットがあるの。あれって良くないんですよ。ちゃんと研究をしてる人が、ウォシュレットの使いすぎは良くないって言ってる。お尻についた菌を全部取っちゃうので。お尻って入り口なので、ある一定数菌がいないといけないんです。守れないんですよね。外敵が入ってきた時にどうすることもできないくなる。けれど、今のトイレってすごいじゃないですか。においも勝手に消してくれたり。あれも良くなくて。排便したものから自分の健康状態を知るというきっかけを奪われてる。常に無臭にされると、自分が今どんな健康状態なのかを知るきっかけとなる排便行為すらも、もはやただの排泄物を出すだけの行為みたいな笑
い:便に関してもいろいろ考えたことがあるんですけど、うちらって土からできたものを食べて、便を出すじゃないですか。それは下水処理で流れていく。だけどその便っていろんな栄養があって。昔はそれを堆肥にして戻してたでしょ。でも今は、ずっと流しまくっていて。どうやって地球は栄養を得てるんだろう、その循環先ってどこに行ってるんだろうって。減り続けるだけになりますよね。
古:だから資源を使い続けるしかないってことになりますよね、今の僕らの生き方は。
い:今まで地球が溜めてきた生物も、食い尽くすしかないってことですよね。
食べること、捨てること
い:最近読んだ料理の本で、水上勉さんの本だったかな。畑をしているので、美味しそうなものを食べてる人と会うと、その人のうんこ欲しいって思うらしくて笑 どうぞ畑にしていってくださいって言いたくなるみたいな笑
古:おもしろいですねそれ笑
い:水上さん自身も、うんこしたくなったら畑に行って堆肥にしたりしてる気がする。違ったら申し訳ないけど笑 食通の最たる人は、土のことまで考えてる。ごはんを食べるってことは土を食べるってこと、みたいな。あ、そうだ。水上勉さんの『土を喰う日々』っていう本。映画にもなってる。
古:へ~。
い:食にすごい精通した方で。小さい頃はお寺の息子だったから修行させられていて。そこで、典座だったっけな、料理番みたいなのをされてて、作った野菜とかも全部残さずに使って。で、野菜とか手間がかかる部分をポイッて捨てたりすると、和尚さんが「おい、なにしてるんや。全部使え」って言われたっていうことも書いてありました。そういうのを読むと、野菜切るとき皮とか捨てるじゃないですか。それって、農薬がついているかもしれないとか皮ごと食べられないから捨ててるけど、でも皮を食べれるようになったら丸ごと全部食べれるしいいですよね。ゴミを捨てるっていう行為もすごいストレスだから。土に還したいってのがあるけど、その還す土がないっていうか。
古:たしかに。
い:生ゴミ回収とか別であればいいけど。虫出るけど、それも必要な存在なんですよね。価値観を変えないといけない気がする。虫、ありがとう。ハエ、ありがとう。みたいな笑
古:あはは 笑
いわいあや 写真家
1982年生まれ。福岡県出身、東京都在住。 中央大学文学部史学科卒業。 会社員を経て、パオラスタジオ勤務後、小林康仁氏に師事。 2014年からフリーランスに。雑誌、広告、 映像制作を中心に活動中。おもに、身のまわりの人やものを撮影。
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