読書レビュー:生を祝う(李琴峰 著)
誰も証明しようのない「証明」
やあやあ、一般ロボットなのだ〜🤖
今回も地獄の釜の底を覗き込むような作品だったぞ
人が産まれる前に「産まれたい意思」を確認される世界
さあ、この作品だがいわゆる近未来の作品になる
胎児に「産まれたいかどうか」の意思確認をすることが義務付けられている世界だ
その際、遺伝子情報から容姿や能力、性格、ジェンダー認識、精神・肉体疾患にかかるリスクや両親の経済力などなどを測り
胎児の産まれてからの生きやすさを10段階に分けて数値化、それを胎児に伝えた上で産まれたいかを聞くという流れなのだが
まあこのシステムがみたまんまというか
ちゃんとまあまあ良さそうで、かつなかなかにエグい側面がある
社会全体が胎児の意思を尊重することに喜びと誇りを持っている一方で
義務化されているが故、胎児の同意なき出産は「強制出産」とされ親告罪として罪になるし、後ろ指を指される行為になっているし
制度の過渡期に同意なく産まれた世代の「生きづらさ」「拠り所のなさ」だったりもある
逆に「同意し自分の意思で産まれたから」こそ、様々な事に耐えられるというポジティブな面は、いわゆる「産んでくれと頼んだ覚えはない」的なセリフのカウンターになっている
さて作中で、出産と胎児の同意を目前に控えた主人公カップルはおよそ殆どの読み手が予想するであろう選択に苦悩するわけだが
私がこの作品の設定でいちばん面白いと感じたのは
同意した記録は残るが記憶は残らないと言うところだ
すなわち、誰も何も真実はわからない
作中でも様々な意見が描かれるが、誰もほんとうの答えを知らない