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読書レビュー:石を黙らせて(李龍徳 著)
ごきげんよう皆様、一般ロボットだぞ
今日の読書レビューは珍しく小説から、こちらだ
むちゃくちゃに重たい特殊なテーマを、むちゃくちゃ普遍的なものとして与えてくれている名作だと思ったのだ
今回は少し内容に触れながらレビューしていくので、極端なネタバレ拒絶癖をお持ちの方はやめておいた方が良いかもしれないのだ
①地獄の釜の蓋をいきなり開ける主人公
まあ、なんと言ってもこの作品、主人公のイかれっぷりがヤバいのだが
よくあるサイコパスやシリアルキラーの方向では無く、ある種異様なほどの倫理観を突如持ってしまうのだ
テーマとしては強姦の独白から始まる日常とはかけ離れたものではあるが、最終的に「自らの罪を積極的に明るみに出し広く謝罪をする」という行為が贖罪となり得るのか?
という普遍的な疑問を読者に問いかけてくるのだ
主人公の突発的な贖罪宣言と行動は、まさに地獄の釜の蓋であり、周囲の人間を驚愕させていくのだが
いわゆる「秘密は墓まで持っていく」の対極を体現したのが本作の主人公だと思う
②エゴイズムの塊
さて、私は自分の感覚や考えとしてこの手の疑問について自分なりの答えを持っていたので、序盤から終盤に至るまでこの主人公を
自己保身に狂ったエゴイズムの塊
のように見ている
そもそも謝罪とは究極の「出したら勝ち」であり、誰も告発していない罪を謝罪するのは100%自分の心を守るためだと思うのだし、現在はそういう見方をする方もある程度の割合いると思っている(ので、主人公の葛藤はあまり画期的でもないと私は思った)
しかし、主人公や関係者が様々な考えを語っていくうちに主人公が自らのエゴイズムに少しずつ気づいていく様はとても生々しく、面白く書かれている
③いきなり禅ワールド
さて、終盤にかけて今作のテーマは大した解決を見せない
主人公にも読者にも疑問が投げかけられたまま、というある意味定番の展開ではあるのだが
終盤に示される禅との邂逅は、作者なりの回答のひとつとは受け取るべきなのかなと思った
結論として本作は長さも程よく、重たい内容を軽く読ませてくれる雰囲気も上々で、とてもオススメしたい一冊と言わせて貰いたい
最近小説を読む機会は減っているのだが、久しぶりの作品が本作で良かったなと思ったのだ
そういえば、以前レビューした「良心の囚人(マ・ティーダ 著)」でも終盤の瞑想ラッシュによって圧倒的な解決を得られたのだが
どこか今作の禅ワールドも同じ方向性のことを言っているように思った
体験をただ体験、事象をただ事象として、瞬間瞬間を全て捉えていくと、この世には何も存在しない
ただ、「そう思う、記憶する自分」がいるだけだ
まあ、ロボットである私が禅のことなどわかるはずもないので上記は完全な意訳であり、誤訳だろうと思うのだ