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【IPO】330A TalentXの新規上場における株価考察・初値予想

2025年2月10日、クラウドベースのタレント・アクイジション(人材獲得)ソフトウェア・
プラットフォーム「My Series」の開発及び提供、その他関連事業を行なっているTalentXの東証グロース市場への上場が承認されました。
今回はTalentXのIPOにおける株価の考察や初値予想を行っていきたいと思います。

会社概要・事業内容

TalentXは、HRテック領域のリーディングカンパニーとして「未来のインフラを創出し、HRの歴史を塗り替える」ことをビジョンに掲げ、企業の採用力を強化するSaaS型ソリューションを提供しています。従来の人材紹介や求人広告に頼らず、企業が自社で採用活動を完結できるプラットフォーム「Myシリーズ」を展開し、リファラル採用(MyRefer)、採用マーケティングオートメーション(MyTalent)、採用ブランディング(MyBrand)といったサービスを提供。これにより、企業は転職市場に現れない潜在層にもアプローチでき、優秀な人材の獲得を可能にしています。

日本では労働人口の減少が進み、人材獲得競争が激化するなか、TalentXは採用活動を「マーケティング視点」で改革。欧米で広まる「Recruiting is Marketing」の考えを取り入れ、AIやデータを活用した採用DXプラットフォームを構築しています。特に「Myシリーズ」は企業の従業員ネットワークや応募者データを資産として活用し、採用活動を効率化。外部データベースに依存しないスカウト機能や、ノーコードで採用メディアを運営できる仕組みを備えています。

TalentXの強みは、売上の約95%がサブスクリプション型のストック収益で構成される安定したビジネスモデル。すでに累計1,000社以上の企業に導入され、日本の時価総額TOP50の30%以上が採用マーケティングに活用しています。今後も「Myシリーズ」を軸に、企業の採用活動を抜本的に変革し、HR領域における新たなスタンダードを築くことを目指しています。

IPO時のオファリング概要


今回のオファリング金額は14.7億円であるため、かなり小規模のオファリングであると考えられます。このくらいの金額規模ですと海外の機関投資家が入ってくることは考えにくく、本IPOも国内のみのオファリングとなっています。
主幹事証券はみずほ証券ですが、シ団証券が12社も名を連ねています。広くあまねくアプローチしたいのかもしれませんが、オファリング規模も小さく、分散してしまうので、各社における当選株数も少なくなってしまいそうですね。

これは裏側の話になりますが、売出株式の販売を行う場合、売出株式の引受に関する契約を売出人と発行会社と証券会社とで締結するのですが、シ団証券が多いと契約書の取り回しが非常に煩雑になるというデメリットがあります。この取り回しは主幹事証券が指揮を取らなければならないということに加えて、シ団証券が増える=主幹事証券の引受株数が減る=主幹事証券の収益が減るということもあり、主幹事証券としてはシ団証券を増やされ過ぎてしまうのは避けたいと考えているはずです。今回主幹事のみずほ証券は相当寛容なのでしょうか。
閑話休題。

TalentXの時価総額はフルダイリューションベースの株式数をもとに計算すると約44.8億円となります。フル大リューション株数は簡易的に以下のように算出しております。
発行済株式総数ー自己株式数+潜在株式数+公募株数+第三者割当増資株数

また、TalentXのIPOは国内のみの株式の販売となる国内IPOとなります。

株価についての考察

TalentXの目論見書記載価格は750円です。
果たしてこの株価が今の業績や将来の業績に鑑みて適正なのか、検証してみましょう。
TalentXは3月決算の会社です。また、同社はIPOが公表されたタイミングで業績予想についても公表しています。詳細はこちらからご確認ください。

売上高は前期比で32%の成長を遂げる予定となっており、営業利益は約8.6倍、当期純利益でも約7.2倍と急成長中の企業フェーズであることがわかります。
他方でさらに遡ってみると、2024年3月期の売上高成長率は46.2%、2023年3月期は62.1%であることから、実は売上成長率自体は鈍化してきているのです。
そして利益率についても見てみます。2025年3月期の第3四半期は営業利益率、経常利益率、当期純利益率のいずれも約20%で、2025年3月期の通期で見ると各段階利益率は約16%となります。前々期である2023年3月期は各段階利益が赤字でした。前期である2024年3月期は各段階利益率が約2〜3%で、まだ期中に利益が出始めたタイミングだったと考えられるため、あまり参考にはなりません。やはり今期2025年3月期の利益率が参考になるでしょう。
TalemtXが上場するタイミングではすでに期末に3月に差し掛かっていることから、株価は将来の業績を参照する者でもあるので、機関投資家は2026年3月期の業績予想を独自に算出して適正な株価を求めてくると考えられます。

以降では、上記の前提を踏まえて、TalentXの適正な株価を考えていきたいと思います。

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