骨退院
いまの精神科は昔と比べて医療環境の進歩はめざましいです。
入院もかつてほど長くなることはなく、ある病院などは月間二人以上の退院許可を出すノルマを達成している、なんて具合に早期治療、早期退院にかじを切る時代になりました。
しかし、精神科に付き物の入院の長期化はやはりあります。
看護師いわく、「病院の中でしか暮らせない人々もいる。私たちは社会にいいことをしている」という強引な思い込みがある。
なぜなら、医師やナースのみなさんは患者さんを苦労して退院させても、またすぐにその患者さんが再入院してしまう苦い経験を何度も味わっているからです。
そんな「回転ドア」と呼ばれる患者達は、親族すらロクに面会に来ない閉鎖された病棟の暮らしの中で人生を諦め、そのまま「西へ行く*」
そして亡くなった患者さんは家の恥だからと家族が葬儀に誰もやって来ない中、役所の職員や病院の関係者が御骨を拾って病院をようやく去っていく.....................
その最期を精神科の言葉で「骨退院」と言いますが、当事者を見捨てたうえに尚、それを望む家族も大勢いるのです。
「死して屍(しかばね)、拾う者無し」というのは時代劇だけの言葉ではない。
死んだ仲間が去ってベッドが かたずけられた後、我々遺された者たちは 形見分けをしながら、彼らの思い出話をしてジュースで別れを告げたものです。
*精神科の隠語。死亡すること。
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