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『青春宇宙速度 -アオハルベロシティ-』(一枚絵から徹夜で書いたプロット的な何か)


何故、いきなり第七巻なのか。





12歳でMIT(マサチューセッツ工科大学)を卒業した天才宇宙工学博士の少女。
一時期、メディアや雑誌でも随分と騒がれていた。

とある事件がきっかけとなり、彼女は人間社会から自らを断絶した。

帰国後は日本の公立高校へ編入するが、
一度も登校せず誰も彼女の顔を知らない。



ある日のことだった。
確かあの日はほんの少し雨が降っていた気がする。
クラスで進路希望調査書が配られた。

引きこもりの彼女の自宅へ送り届けるため、
帰宅部で暇人の僕は担任教師に頼まれ
彼女の自宅へ届けることになった。
断る隙も無かった。

彼女の自宅に着き、ベルを鳴らす。
担任から予め色々と話は聞いた。
流石、帰国子女だけあって豪華な家だ。(……?)

庭にあるスペースシャトルのオブジェが目に留まる。
オブジェの台座には苔が生えていて長年放置されているようだった。

ベルを鳴らしても誰も出てこない。
僕は3~4回ほど鳴らした。
顔も見たことない同級生……、
クラスでは目立つほうだと自負しているが、
根がコミュ障の僕には得体のしれない恐怖しかない。

兎に角、さっさと終わらせて帰ろう。
しびれを切らし、ドアを叩く。

ゆっくりとドアが開く。

隙間から覗く、長髪の女子。
僕の中の帰国子女のイメージとかなりかけ離れた
標準的な日本人。

こっちを睨みつけているが、怯えているようにも見えた。
不思議な感覚だった。

僕は彼女に両親は不在かと尋ねる。
彼女は無言。

しばらくの沈黙。

件の進路希望調査の用紙を見せる。
彼女はため息をつき、ドアを閉める。

一旦ドアを閉めてチェーンロックか何かを外すのかと思いきや、
そのまま10分ほど待たされた。

いやこれは流石に。
限界だ。
再びドアを叩く。
柱がきしむ程。

「せめて用紙を記入してくれないか?期日は明日なんだ」
必死に説得を試みる。

功を奏したのか、ドアが開いた。

彼女の手に持っているのは、なんだ?
鉄パイプ?いや、見た質感からして強化されたアルミニウム合金か
ロケットなんかに使われている素材だ。

ふと、庭のオブジェが頭をよぎる。

次の瞬間、彼女は手に持ったパイプで僕を思いっきり殴りつけてきた。

間一髪、かわして命拾いした。
一体なんなんだ、この物騒な女は。

兎に角、進路希望調査書の話をして何とか説得を試みる。

提出日が迫っているということを理解してくれたらしい。
別に頭のネジが飛んでいるとか、そういう類ではないようだ。

彼女は落ち着きを取り戻し、僕を家の中に招き入れた。

NASAにJAXA、宇宙や天体関連のインテリア。
廊下にはみ出るくらい大量に積まれた
工学関係・機械関係・宇宙事業関連の書籍。
外国語で書かれているものが多い。

内容はさっぱりだが、
航空機や宇宙や天体観測が好きな僕には
実に興味深いものだった。

それから、無造作に置かれている
額に入った表彰状やメダルにトロフィー。

小さい頃の彼女だろうか?
写真に写っている女の子は
帽子にローブ姿、満面の笑み。
隣に写っているのはおそらく父親だろう。
海外の学校……?で撮ったのだろうか。

散らかった廊下を抜けて
リビングへ案内される。
僕と彼女はカウチに腰を掛ける。


「粗茶ですが」
出された飲み物は生ぬるい、海外製のエナジードリンクだった。

「ええ…頂きます……」






ああ、
そうだ、そういえば……

『第一宇宙速度』というものがある。

地表近くの低軌道をまわる人工衛星の速度、ジェット機の約30倍の速度。
毎秒速8km、時速にして2万8800km。

これを超えられなければ宇宙に到達することはできず地球の軌道に沿って彷徨い、最後には落下する。

この『第一宇宙速度』の√2倍、『第二宇宙速度』を超えない限り、所謂『宇宙飛行』になり得ない。

このことから、『第二宇宙速度』は『地球脱出速度』なんて呼ばれたりしている。




ある時にこの出来事を思い出すだろう。
僕には確信がある。

それは多分、数年後の夏。

よくよく考えてみたら、
始まりはこの進路希望調査書の
ペライチを届けたあの日だった。

君と僕を繋ぎ、
二人で作った出会い、
偶然、冒険の始まり。

これは『第一宇宙速度』を突破するまでの

僕たちの、夏の軌跡。

僕たちの、『青春宇宙速度』だ。









水着の女の子の一枚絵を描いて、
なんだか気分が乗ってきてしまい、
なんだかんだ徹夜だ。

帰ったら、すぐ寝よう……。


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