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中央省庁を地方に移して大丈夫なのか。

「役所の理屈のために,日本国があるわけではない。」
2024年10月1日,第102代総理大臣就任にあたっての記者会見で石破・総理が述べた言葉です。文脈としては,文化庁の移転に際する役所側の抵抗を念頭にしたものだと思われます。

石破総理は初代・地方創生大臣を務めた経験を持ち,地方創生には強い想いを持っておられることかと思いますが,中央省庁の移転について,国家公務員の成り手の確保という観点から懸念することを書き留めておこうと思います。

・国家公務員のなり手を確保できるのか。

国家公務員のなり手に関する問題は深刻です。すでに官僚人気が下がり気味だと,問題視されています。主として2025年4月の採用となる国家公務員を選抜する2024年実施の国家公務員試験では総合職,一般職ともに過去最低の倍率を更新しました。
今後,中央省庁の移転により,勤務地が就活生当人にとって無縁の地方となることで学生の志望順位がさらに低下することはないのでしょうか。勤務地は学生にとって重要なファクターです。地元以外の地方勤務となる場合,優秀な人材の確保にいっそう苦労することが考えられます。本省(民間企業で言うと本社)が首都・東京にあるということはそれだけで魅力的な要素になっているのです。

《意見》 リモートワークを推進するべき

意見の一つとして,行政の中心を東京に維持しつつ,希望する一部の職員については地方(地元等が想定されます)からのフルリモート勤務ができるようにするなどの制度設計がまず必要かと考えています。こうすることで,省庁の地方移転による弊害を最小にしつつ,恩恵も少なからず享受できるはずです。この点,前向きな議論を期待したいところです。

また,ワーケーションについても,国家公務員は先進的であるとは言えません。特に農林水産省は農泊として,農村地域への滞在型旅行を推進しています。国家公務員自らがワーケーションを通じ,地方への滞在を実践できるように制度の改革を推進すべきです。
地方創生のキーワードとして”関係人口”というものがあります。これはその地域に繰り返し訪れるなど,継続的に多様な形で関わる人のことを指します。関係人口を増やすために,まずその地域に滞在してもらうことは重要なはずです。

結びに

以上,取り留めもなく書きましたが,中央省庁の地方移転に慎重な議論が必要なことは論を俟ちません。とはいえ,地方創生は差し迫った課題ですから,迅速かつ深い議論を期待します。

最終更新日2025年1月19日

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