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美術館に行くと、今までと違うものが見えるようになるか?その15

御即位記念特別展「正倉院の世界 - 皇室がまもり伝えた美」 東京国立博物館 2019年11月23日(土)

この正倉院展は、正倉院宝物を見られるだけでなく、法隆寺献納宝物と並べてみられるという点で興味深い展示になっていました。

並べて見ると、どうやら正倉院の方が凄い。見事だったり、鮮やかだったり、美しかったり。

梅棹忠夫の「文明の生態史観」(2002年)で、ユーラシア大陸の文明は中央から左右に広がっていき、中央部分は何度も王朝が入れ替わり文明が保存されずリセットを繰り返したが、ユーラシア大陸の左端と右端には古い文明が今もなお行き続けている、左端が西ヨーロッパで右端が日本である、というような話がありました。

日本という特有のエリアだからこそ、ペルシャで失われた琵琶やガラス椀が、こんなにも鮮やかに残ることができたのでしょう。

今日の一品は、正倉院宝物「紫檀木画槽琵琶(したんもくがのそうのびわ)」。四弦の琵琶です。細工が見事。胴体の裏側の装飾が特に目をひきます。バチがあたる部分に描かれている中国風の絵も、まあまあハッキリと残っています。

BS日テレの「ぶらぶら美術・博物館」でオギヤハギの矢作が言っているところの「スゴすぎて逆に偽物っぽい」のが、正倉院宝物「白瑠璃碗」。ガラス製のお椀というか、カットグラスです。その隣にとても似たような別のカットグラス(東京国立博物館所蔵、江戸時代に大阪の古墳から出土したもの。これも相当なお宝。) が展示されていますが、ガラスの透明度が全然違う。正倉院宝物は、とても透明で、椀の側面から向こう側を透かしてみると、光が何重にも複製されて水玉模様のように輝いて見えます。

「蘭奢待(らんじゃたい)」という名で知られる香木は、天下の名香ということで、時代劇で聞いたことがある名前です。安土桃山時代には、正倉院宝物といえばコレ!だったようです。織田信長が切り取った跡に付箋が残っていますが、明治天皇が切り取った付箋もあります。近代国家の国家元首の権力の強大さが伺い知れます。

お気に入りの和菓子屋が、後継者がいなくて廃業して、あのみたらし団子の味が失われてしまいました。こんなにも簡単に途絶えてしまう世の中で、それが物なのか技術なのかに関わらず、途絶えずに引き継がれることの難しさと貴重さを感じます。

和菓子屋と正倉院宝物ではだいぶ違うのですが、正倉院宝物のような、これほど素晴らしい宝物が、1200年というこれほど長きに渡って、これほど鮮やかな状態で保存されているのは、(世界の他の例をあまり知らないのですが) 世界でも有数なはずだと、そう思わせるものがありました。

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