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奈良少年刑務所詩集

人の感性はどう育つのだろうか。

この本は二つの巡り合わせで手に取ることができました。

ひとつは、ぼくが県庁の児童虐待、DVさらには青少年の非行防止・対策をする係にいること。

もうひとつは、最近もっぱら詩に興味が深まっていること。

こういう「今」にいなければ、決して手に取ることはなかったと思います。

さて、この本は殺人、強盗、レイプを含む凶悪犯罪を犯した少年を投獄する奈良少年刑務所における話です。

ここで、彼、彼女らの更生のための「社会性涵養プログラム」が開発されました。

得てして非行少年は幼い頃から感情を育む機会が乏しいです。
親から虐待されていたり、DVを常に見せつけられていたりしており、その内面は硬く、荒いことが多い。

要は、環境です。
最初から犯罪者になるべく生まれてくる赤ちゃんなんて、いないはずです。

少年たちが置かれた荒んだ「環境」が彼らを社会の弱い立場に追い込み、誰の目の届かないスキマに突き落とすこともあるのです。

そしてそれが結果的に犯罪を起こし、悲しみの連鎖すら生む…

もちろん、犯罪を犯した当人としての償いはしなければなりません。

しかし、もっと目を向けるべき「社会の構造」があるのです。

「構造的問題」は、現在の仕事に関わるようになってから殊更意識するようになりました。
(組織における問題も構造から発生していますし)

話を戻すと、そういった背景にある犯罪少年たちに情操教育を施そうというのが「社会性涵養プログラム」であり、この本で紹介されている詩はこのプログラムのなかで自らの感情を自覚した犯罪少年らが描いたものです。

このプログラムの効果は絶大だったようです。

多くの詩はとても真っ直ぐです。
心根から発しています。
だから読者にも込められた「感情」が届きます。

多くの詩はありのままです。
生の感情、地中深くから掘り起こされ、まだ艶やかなままです。
普段乾いた感情しか目にできないぼくらにとってそれらはとても瑞々しく映ります。

詩を通し、犯罪少年とその環境についても知ることができるうえ、感情のエネルギーも感じることができると思います。

この本は、感情についてより豊かな可能性を示唆してくれました。

感情と論理の両輪。

ぼくは人が携わる全てのベースは人間性に根ざしたものだと思っているのですが、そんな思いをより強めてくれたりもしました。

新潮文庫の夏フェア対象にもなっています。
ぜひ読んでみてください!!

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