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君の先端を切り落とす
君の先端を切り落とす
はらり、髪の毛
パチリ、手の爪
君との接続がなくなった断片は
瞬時に周辺要素と化し
風景の一部になる
具体的、可燃ゴミ
ぼくはその断片を愛さなくても
罪にはならないだろうか
#詩
はじめての、ふうせん
今日、はじめて見たね。
ふうせん。
ふくらんだときの
おどろいた顔。
おかしいね。
ふわふわしてるね。
軽くはじいたときの音と
君の心のはずむ音が
一緒だね。
君の、はじめてにふれる感動を
僕も、分けてもらっているよ。
これは
君にしかできない贈りもの。
#詩
『もう少し、ゆっくり、道を』
もう少し、ゆっくり、歩いてもいい。
ぼくらは忘れがち。
みんな同じ地球のうえに立っているけど、
行き先がみんな違うということを。
ひとりひとりの名前がついた道を、
もつということを。
目に見えない道の
総和がわたしたちの社会。
たまには交差するかもね。
その時はよろしくね。
#詩
『青と白と緑、それから黄色』
青
網膜を染めあげ、まぶたを透過する、空の青
白
輪郭が際立ち、えんぴつの濃淡が残る、雲の白
緑
風は葉が反射する光にリズムをもたらし、
五感を手筈に従って刺激する、生の緑
黄
君がおもむろに取りだしたアメスピ
紫煙がぼくの目を曇らせる、耽溺の黄
それらはたちどころにぼくの感情を洗い流すのに過不足なく、不自然でもない
次第に現れては溶ける煙
感情も煙になって消える
ぼくも君も、生きてい
『そういう状態なんだ』
今の、この、
椅子に座り続けるような悩みは
近くで眺めてみても
引いて眺めてみても
我ながら、ばかばかしく、虚しい
この椅子はけっこうふわふわだからね
けれど、それは確かな切実さを
ふわふわ静かに矯正される体の歪みのようなものを
訴えてくる
ああ、おそらく
わたしは幸せで
そしてまた、不幸なんだろう
『そういう状態なんだ』 #詩