史上最大のショートスクイーズ大作戦【6】一週間に13回罰金命令が下る指定業者
NYSEには指定マーケットメーカー制度(DMM: Designated Market Maker)がある。NYSEの説明によると
とされている。「真の説明責任を負う唯一の市場参加者」というほどだから、よほどの厳しい審査を経て選ばれているのだろう。
現在このDMMに指定されているのはシタデル・セキュリティ(Citadel Securities LLC)、GTSセキュリティ(GTS Securities LLC)、ヴィルトゥ・アメリカ(Virtu Americas LLC)の3社。
ブローカーチェック
FINRAにはブローカー・チェックというサイトがあるので、FIRMのタブから検索を掛けるとマーケットメーカーやブローカーなどの情報を検索することができる。真の説明責任を負うマーケットメーカーとはどんな会社かと調べてみた。
CASE#1 シタデルの場合
"citadel"と入力して検索。
関連会社がずらずらと見つかる
その中からマーケットメーカーであるCITADEL SECURITIES LLCを選ぶと
Disclosures(情報開示)が74件あって、そのうちRegulatory Event(レギュレーション案件=規制に関する事項)が73件もある?
なんだろう?と思ってDetailed Report(詳細レポート)をクリックすると、報告書をPDFでダウンロードできる。
この報告書のp.38から、73件の情報開示の中身がずらずらと述べられている。
2021年12月27日にNASDAQ MRX, LLCで「適切な価格やサイズのパラメータを超える注文を拒否し、それによって誤発注防止のためのリスク管理統制および監督手続を確立し維持することを怠った」ことで1万5000ドルの罰金命令が下っている。
NASDAX MAXだけでなく、他にも多数の取引所で同様の事例があり、12月22日と27日だけで13件の罰金、その合計額は22万5千ドル。
さらにPDFを読み進めていくと、2021年9月、3月、2020年やそれ以前、最も古いもの(73件目)は2006年3月1日まで、連綿と規則違反と罰金の歴史が並んでいる。
確認しておくが、これはNYSEが指定する「真の説明責任を負うマーケットメーカー」の話だ。
各案件に書かれた"WITHOUT ADMITTING OR DENYING THE FINDINGS, THE FIRM CONSENTED"(調査結果を認めることも否定することもなく、会社は同意しました)という文言は、「真の説明責任」からは遠いことを思わせるのだが。
CASE#2 GTSの場合
もうひとつの指定マーケットメーカーGTS Securities LLCのデータを見ると、Disclosures(情報開示)は30件。その全てがRegulatory Event(レギュレーション案件=規制に関する事項)だ。
詳細報告書によると、最新の罰金は2022年の1月12日。
CASE#3 ヴィルトゥの場合
残る指定マーケットメーカーVIRTU AMERICAS LLCは、Disclosures(情報開示)が50件。その全てがRegulatory Event(レギュレーション案件=規制に関する事項)。
詳細報告書によると、
最新の罰金案件は2021年12月22日に発生。シタデルと同じ日だ。
業界によって多少は差があるかもしれないが、監督官庁から1週間に13件の罰金処分を受ける企業が公的な指定業者であり続けるのは珍しいのではないだろうか。
金融業界の法律違反では、不法行為で得た利益に対して罰金が極端に少ないことは広く知られているが、この罰金処分の多さからみると罰金が業務上の必要経費として機能している気配さえ感じる。
罰金刑によってこれらの処罰を追えたシタデルやヴィルトゥは、今日もNYSEの指定マーケットメーカーであり続ける一方で、自社のダークプールではPFOF契約を結んだブローカーからの注文を大量に受け取っている。
悪質な空売りに対して、米国司法省(DOJ: The Department of Justice)の捜査も始まっている。報道によると調査対象にはショートヘッジファンドのMuddy Waters、Melvin Capital、Hindenburg Research、Citron Researchなどが含まれているという。
ショートヘッジファンドとともにマーケットメーカーにも捜査のメスが入ると良いのだが、どうなるだろう。
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