史上最大のショートスクイーズ大作戦【1】MOASSと$GMEと$AMC
GME騒動とショートスクイーズ
MOASS = Mother Of All Short Squeezesとは何か。
2021年1月22日に42ドル前後だったアメリカのゲーム機器販売会社GameStop(ニューヨーク証券取引所NYSE上場)の株式銘柄$GMEが、それからわずか一週間後の1月28日に10倍以上の483ドルまで10倍以上に駆け上ったGameStop事件については日本でも各種媒体で報じられた。
しかし、突発的な現象としての紹介が多く、その背後にあるMOASS思想や米国株式市場の構造的な土台ともなっているショートスクイーズの仕組みについて丁寧に整理した日本語の記事は見かけた記憶がない。
この話題を知って、事件の構造を知ってから「これは勝てる」と確信して自己資金を突っ込み、1年間この問題を追いかけてきている立場から情報を整理してみようと思う。
ショートスクイーズの構造を把握するにはさまざまな側面があるので、このnoteをまとめきるまでには時間がかかるかもしれないが、昨年1月、あるいは6月に比べて大きく価格が下がっている2022年1月末現時点でも、私は構造的な勝利を確信し、$AMCと$GMEの買い増しを続けていることは先にお伝えしておこう。
MOASSのゴール
MOASS思想の中心となる銘柄は $GME と $AMC の2銘柄。その他にも複数のショートスクイーズ銘柄が存在している。MOASSのショートスクイーズが起こった際の予想金額は1株下限200ドル、上限50万(500K)ドルあたりか。人々の集団心理が絡むから、どこまで上昇するかは正確にはわからない。しかし、それでも50万ドルという金額が「あり得なくはない」ということをこの先の記事でさまざまな角度から紹介していこう。
ちなみに、1979年に株式公開されたBerkshire Hathaway Inc. ($BRK.A)の価格は、現在から遡れば245ドル相当。同銘柄が2022年1月18日に付けた最高値は487,255ドルである。1989倍。
1月29日現在で15.06ドルの$AMCと97.91ドルの$GMEが数万ドルになることも、5000倍以上になることも、理論的には十分にありえるし、その理論的可能性を高めてくれるのがショートスクイーズだと言えるだろう。
このNOTEの進め方
今現在も進行中の事案で、今からでも参加可能な「構造的なゲーム」でもあるので、このnoteはすべてを整理し完成してから公開するのではなく順不同でトピックを書き、粗い文章のままでも順次公開し、事後にブラッシュアップしていくスタイルで進める。
MOASS関連キーワード
・ショート = 空売り。株価が高いときに証券会社から株を借り、株価が下がったときに市場で株を買い、証券会社に株を返すことで差額を利益とする投資手法。
・貸株 = 証券会社が持ち株を顧客に貸すこと。貸株の手数料が証券会社の利益となる。
・ショートスクイーズ = ショートをかけた側は市場から株を買い戻すことができず、損失を出して高値で買い戻さざるを得ない現象が積み重なり価格が急上昇する現象。
・MOASS = Mother Of All Short Squeezesのイニシャルによる造語。「すべてのショートスクイーズの母」の意。空前絶後のショートスクイーズ連鎖によって、「1%の人口が握る99%の富」から大きく富の転換を図る思想、論考。
・$AMC = AMC Entertainment Holdings, Inc. アメリカの大手映画チェーンの上場株式(ニューヨーク証券取引所)。かつて日本にも進出していたが現在は撤退。
・$GME = GameStop Corp. アメリカのゲーム関連商品小売販売店の上場株(ニューヨーク証券取引所)。
・reddit = アメリカを中心とする英語圏で人気のインターネット掲示板。匿名制だが、ハンドルネームや履歴によってユーザーの識別やコミニュティ内の経験値の区別が容易。
・WSB = WallsStreetBetsの略称。redditで発生した個人(アマチュア)投資家のグループ/コミニュティ。
・APE = エイプ。MOASSを背景に $GME や $AMC などのショートスクイーズ銘柄の価格上昇を確信し、たとえ現在株価が下がっても気にせず買い増しをする投資家の自称。WSBから、特にショートスクイーズ銘柄の所有者を特別視する観点から派生した。常識的な投資とは言い難いが、猿のように目的に向かってまっしぐらに、握力を頼りに突き進む投資手法から生まれた自虐的な呼称だと思われる。APEコミニュティでは、お互いがAPEであることを誇りに思っている。
・Diamond Hands(ダイヤモンドハンド)/Paper Hands(ペーパーハンド) = APEが自分や他人の「握力」を区分するために用いた呼称。最近は以前ほど用いられない。ダイヤモンドハンドはどれだけ価格が下がっても、あるいは多少価格が上がっても持ち株を手放さない高握力への尊称。ペーパーハンドは、価格の下落や多少の価格上昇程度で持ち株を売ってしまう低握力への別称。
・HODL = holdの書き間違えから生まれ、APEがダイヤモンドハンドで持ち株を固く握り続けることを示す用語として定着した。大文字で書くことが多い。ソクラテスに倣って“I hodl, therefore I am”(我握る、故に我在り)という名言も発生した。
・DD = Due Diligence(デューデリジェンス)。投資の一般用語で、投資対象とする企業や株の状況を詳細に調査し、投資が適正かどうかの判断材料を積み重ね検討すること。redditでは数限りなくDDが積み重ねられ、論考に綻びがあった場合には淘汰、補修が行われるため、$GME $AMC に対するDDの質と量は群を抜いている。これらのDDがAPEの基礎知識となっている。
・ヘッジファンド = 投資機関や個人からの資金を運用して投資を行う。金融派生商品など、複数の金融商品に分散化させてリスク管理(ヘッジ)を行う。
・ショートヘッジファンド(SHF)=ショートを中心に投資を行うヘッジファンド。単に投資対象の株価下落に賭けるだけでなく、過剰にショートをかけることで将来性ある企業を多数倒産に追い込んできた疑いが持たれており、個人投資家からは嫌われている。
・シタデル = ショートヘッジファンドの中でも規模が大きい。ヘッジファンドはCitadel Advisors LLCだが、NYSE(ニューヨーク証券取引所)の指定マーケットメーカー(Citadel Securities LLC)も兼ねており、不公正が疑われている。APEからは「クソ」(Shit)とかけてShitadelと書かれることも多い。
・ケン・グリフィン = Kenneth Griffin。シタデルの創立者。CEO。APEの間ではショートヘッジファンドの親玉のような扱いで敵視されている。かつて彼の家にディナーに招かれた客人が、サラダ用マヨネーズを他人に渡さず独占するケンを目撃したエピソードからMayoの異名を持つ。ケンちゃん、Kenny Boyなどとも。
・SEC = Securities and Exchange Commission。米国証券取引委員会。「投資家を保護し、公正で秩序のある効率的な市場を維持し、資本形成を促進すること」を使命とする国家機関だが、そのモットーに反して現実はヘッジファンドはじめ金融界の不正行為を黙認しているだろうとAPEからは突っ込まれている。
・ゲイリー・ゲンスラー = Gary Gensler。SEC現議長(第11代)。ゴールドマン・サックス出身。
・合成株 = 正規に発行された株ではなく、第三者によって生み出された架空の株。必ずしも不正ではなくマーケットメーカーがオプションに対応する分を創り出す場合などに許容されるが、悪用されることも多い。
・ネイキッドショート = 合成株を用いた(正規ではない株を用いた)ショートによる値下げ作戦。
・ダークプール = 元来は、機関取引や企業の内部関係者(インサイダー)が大量に株を売買する際のマッチングを行い、株の市場価格に極力影響を与えない目的で設立された私的取引システム。取引報告のないダークプールも存在する。現在はダークプールの濫用により小口の取引までがここで扱われ、市場に本来反映されるべき取引までもが闇に沈んでいる。1月末現在、$AMCの全取引に対する過去30日のダークプール利用率平均は50%以上。$GMEは39%。
・HFT取引 = High-frequency tradingの略称。超高速取引。コンピュータプログラムによって市場に出された注文を素早く察知しミリ秒単位の時間差とわずかな差額で素早く対向注文を出すことで薄利を得る。大規模に行うことで勝率100%で大きく利益を得られる投資手法となる。
・PFOF = Payment For Order Flow(オーダーフローに対する支払い)の略称。顧客がブローカーに注文を出すとブローカーはその注文情報を市場より先にマーケットメーカーに流す。それによってマーケットメーカーは対向注文を先んじることができ、差額を利益とできる。マーケットメーカーはブローカーからのPFOFに対して手数料を払う。ブローカーはPFOFから収入を得られるので、顧客に対しては手数料無料を謳うことができる。顧客は、自分のオーダーが自分の不利益に悪用されているのに、それを知らずに手数料無料だからと喜ぶシカケ。「タダより怖いものはない」のわかりやすい事例。アメリカの個人投資家ブームの火付け役となったブローカー/投資アプリのロビンフッドRobinhoodの収益の大きな柱だったのがこのPFOF。注文の多くはダークプールに流される。
・LIT注文 = Limit If Touched Orderの略称。PFOFとは逆に、市場価格より安く買う、もしくは市場価格より高く売るトリガー価格に達するまで注文を保持する。注文は市場に流れ、売買が市場価格に反映される。
・FTD = Failure to deliver もしくはFails to deliverの略称。顧客が買った株を規定日までに準備できなかった状態。配達の失敗。日本株も含めた株式取引は、買いオーダーの注文成立(約定)と同時に購入した株が手に入るわけではない。約定から2営業日後にブローカーから顧客のアカウントに株が引き渡されるのが通常。これをT+2(Trading day[取引日]+2日の意)と呼ぶ。「取引成立したのでT+2以内に実際の株をお届けしますよ」というブローカーから顧客への約束の文書が「IOU(=I owe you)」。しかし、この方法はブローカーの立場からすれば顧客に渡すための株、つまり商品が手元になくても顧客から先に代金だけを受け取れる方法である。SECがこれまでに発表した公式データによると$GMEの過去最大FTDは2020年10月13日の321,0148件(出来高10,179,710件中)。実に31%の取引が商品を確保できない状態で行われた計算。普通の商売なら、ブローカーはとっくに信用を失って倒産しているだろう。
・T+21、T+35 = 買い注文が約定した株はT+2で顧客に引き渡すべし、とする基本ルールがある。にもかかわらず「それでも株が用意できないときには21営業日後、35営業日後までに必ず用意すること 」という、ブローカーに対して甘すぎる追加ルールも存在する。
・Threshold Securities(しきい値銘柄)リスト = 追加ルールであるT+35の期日になってなお株が用意できない状態が一定の条件で続くと、NYSEが日々更新している「しきい値リスト」に掲載される。「この銘柄はブローカーが必要な分の株を準備できていない状態です」という、被害者リストもしくは違反者リストのようなもの。
・オプション = 将来的な株売買の「権利」を販売する手段。米国市場で大流行中。