部下が問題行動にでる組織とは
最近、若手が問題行動に出た上で、退職するという事象をよく目にする。急に仕事をしなくなったり、上司の言うことを聞かなくなって、最後はやめてしまう。上司としては原因が分からずほとほと困り果てて、私に相談にくる、そんなことが続いた。組織としての反応は大抵同じだ。上司の反応としては、「最近の若い人は、、一体何を考えているのかさっぱり分からない、、こんなに指導しているのに分かってくれないんだなぁ、、」というものであり、人事部としても「個人の資質の問題」ということで一定の結論付けをする。
このような場合、何が原因でどのように対応したらよいだろうか。このような思いから、私は実際にそのような問題行動にでた若者の話を聞いてみることにした。本人たちの言い分は千差万別だ。組織への不満、世の中への不満、あの時こんなことがあったなど。
但し、2つだけ共通点があった。それは、上司のことが嫌いである、組織のトップが変わったタイミングである。ということだった。これは何を意味するだろうか。私は、これらの問題行動を起こす本人に共通項を見つけようとしたが見つからなかった。一方で面白いことに、共通項は本人ではなく本人の外側にあったのだ。
「関係性の質」という話をご存じだろうか。組織の成功と失敗の循環とは、「関係性の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」で起こるというMITの元教授のダニエルキム氏が提唱する理論だ。この理論に照らし合わせると、こう言うことだ。問題を目の当たりにしたマネジメント達は、部下が辞めるという結果の質や問題行動に出るという行動の質までは見えている。しかし、なぜ部下がそのような思考になったのかということは皆目見当がつかない。そしてその更に前段階である関係性の質には意識すら及んでいないのだ。
この出発点である上司との「関係性」が良いと、部下は上司を信頼して言うことを理解しようとする、いわゆる思考の変化だ。そしてその思考もとに行動して結果が出る。一方でこの「関係性」が悪いと、上司が全く同じことを言ったにもかかわらず、部下は拒否反応を示して上司の言ったことを無視する、もしくは反対行動をとり、それが悪い結果につながる。
つまり、上司は問題を部下の中に見つけようと一生懸命になるが、実は問題は部下と上司の「間」にあり、それを作り出している原因のかなりの部分は上司自身にあることが多いのだ。
余談になるが、これは家庭にも当てはまる。嫁が家事をしなくなった、子供が言うことを聞かない、猫がトイレを決まったところでできない。これらの問題の原因を相手に見つける前に、相手と自分の関係性を見つめ直してみる、そんなことが必要かもしれない。