2024年1月後半日経平均相場の振り返り
① 能登半島地震、羽田空港事故
1月前半相場を振り返ると、年明け早々1日に石川・能登で震度7を観測する地震が発生し、建物の倒壊が相次ぎ多数の死傷者がでた。
そして2日には羽田空港で日本航空機が着陸直後に海上保安庁の航空機と衝突炎上した。
海保機に搭乗していた5人が死亡したが、日航機の乗客乗員379人全員が脱出することができた。
テレビでは滑走路で炎上する日航機が写し出されていたが、映画のワンシーンのような大惨事に人的被害が最小限にとどまったのは奇跡のように思えた。
② 日経平均チャート
このような出来事に株式市場も波乱のスタートになるのではと危惧したのでるが、4日の大発会は一時700円を超す下げとなったものの、建設株をはじめ道路株やインフラ関連株などが賑わい、終わってみれば日経平均は175安と小幅安にとどまった。
その後は米国株の上昇や円安の影響で半導体関連を中心に値を上げ6営業日で2600円強上昇し15日には一時36000円台に乗せた。
③ 「有事の円買い」とは
この間に気になる事例が2つあったので紹介したいと思います。
1つは外国為替市場で1日に発生した能登半島地震が円安・ドル高のてがかりとなっていることである。
過去の大震災や地政学リスクが意識された局面では、「有事の円買い」と呼ばれる円高が進んでいた。
足元では低金利を続ける円の魅力が低下、2022年は資源高を背景に円安が進行し、有事における円高の記憶は薄れ、円買いが進みにくくなっているのではないだろうか。
④ 消える「有事の円買い」
4日の外国為替市場で円相場は一時144円台となる円安・ドル高水準をつけた。
これは23年末から3円程度円安が進んだ状況で17日には147円台と6円程度の円安だ。
過去の大震災直後の為替市場の動きをみると円高進行が顕著である。
1995年1月の阪神大震災では約3カ月で18円程度円高が進んだ。
2011年3月の東日本大震災でも直後に7円程度円高が進み、76円台となり日米欧の主要7か国(G7)が円売り・ドル買いの協調介入を実施するほどであった。
2度の大震災後の円高の背景には国内勢が外貨建て資産を円に戻す「リパトリエーション」に対する思惑があった。
損害保険会社が外貨建て資産の一部を円転して保険金の支払いに充てるとの見方が浮上し、先回りして円を買う動きが強まった格好だ。
大震災以外でも2001年9月に米国で発生した同時テロ北朝鮮によるミサイル発射など、緊張が高まる局面では円高が進んでいる。
実際には大規模なリパトリエーションが発生しているわけではないものの、思惑が主導する「有事の円買い」が円高を誘ってきた。
しかし今回の能登半島地震では反対に円安が進んでいる。
23年末の時点では24年前半のマイナス金利解除観測が強まっていたが、今回の震災を受けて難しくなったとの観測がある。
マイナス金利解除を見込んだ円買いの解消が円安圧力となっている。
22年2月のロシアによるウクライナ侵攻でも「有事の円買い」に変調が見られた。
資源高による貿易収支の悪化が意識されたことから円安が進行し、低金利の継続も重なったことで32年ぶりの円安を招くなど、歴史的な円の弱さは市場関係者の脳裏に色濃く残っているのである。
⑤ 株価指数オプション
もう1つは、12日に算出された株価指数オプション1月物の特別清算指数(SQ)が36000円を超える水準となったことだ。
⑥ ファストリ株価
きっかけはファーストリテイリングが11日の取引時間後に発表した2023年9~11月期決算だ。
市場予想を上回る好決算から12日の東京株式市場ではファーストリテイリング株が午前9時過ぎに7%高の39180円を付け、株式分割後の上場来高値を更新した。
午前終値ではこの1銘柄だけで日経平均を212円押し上げた格好だ。
ファーストリテイリングのような値がさ株の急伸を受け、指数構成銘柄の始値で算出するSQ値は前日比976円高の36025円となり、9時15秒時点の気配値を使って算出する日経平均の始値(35601円)を大きく上回る異例の水準となった。
前引け時点で東証プライム市場の値上がり銘柄数417に対し値下がり数は1209に達しており、限られた銘柄が相場全体の上昇を主導するいびつな構図であった。
注意すべきは、SQ算出語の日経平均が大きく上げ幅を縮小したてんだ。
日経平均は午前9時過ぎに高値となる35839円を付けた後、同10時過ぎには高値から450円あまり安い35362円まで値を戻した。
この日の日経平均の終値は前日比527円高の35577円だった。
SQ値を一度も上回れないのは「幻のSQ」と呼ばれる現象だ。SQ値の水準では売買が大きく膨らむため、その後早い段階で日経平均がSQ値を上回ってこないと、この水準が強い抵抗線として意識される。
今回は17日にSQ値を上回った、このことは中長期的に日本株の上昇は続くとの期待感が大きくなったと言えよう。
⑦ 新NISAとは
最後に、2024年1月からNISAの新制度が実施された。
⑧ 新NISA購入予約額
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコム証券のネット証券大手5社は、現行NISA口座で証券会社の6割強のシェアを持っているが、5社合計の積み立て投資の予約額は月間2300億円を超えた。
積み立て設定で購入予約している銘柄は世界株や米国株に投資する投資信託がとても人気で実績も良く今回も注目が集まっている。
⑨ バブル後最高値更新
投資への関心が日本でも高まりつつある中、外国人投資家の資金なども流入した事が1月前半のバブル後最高値更新の連日更新に影響している。
この勢いはどこまで続くのか。目が離せない相場となっている。
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