2022年12月前半日経平均相場の振り返り
12月前半相場を振り返ると、
日経平均株価は右肩上がりの25日移動平均線を一時下回るも14日には上抜け堅調な一面を見せ、15日の終値は、11月末の終値27968円に対し28051円と横ばいであった。
12月の前半相場で注目すべき事象は
まず中国のゼロコロナ政策の緩和である。
ロックダウンや行動制限により、生活に一般市民である。
10月の党大会前後から「ゼロコロナ」政策への不満は隠しようがなくなり、11月下旬には広州市や新疆ウイグル地区、上海市、北京市など多くの都市で抗議行動が確認された。
党大会と党人事で、
最高指導部を自らの腹心で固め、3期目に突入した習近平にとって、こうした下からの突き上げは衝撃的であったに違いない。
中国政府は12月7日に
「新型コロナウイルス感染症の予防・抑制措置の実施をさらに最適化することに関する通知」を出し、10項目の措置を発表した。
具体的には高リスク区の設定・認定は建物や職場、フロア、世帯単位とし、みだりに範囲を拡大しない。
行政区全体の住民を対象としたPCR検査は実施せず、その範囲を縮小し頻度を減らす。
PCR検査の陰性証明の提示と行動履歴のチェックを行わない。
感染者のうち無症状者や軽症者は自宅隔離を行い、症状が重くなったら医療機関で治療するなどであった。
11月の段階では濃厚接触者も施設などの集中隔離が求められていたことからすると、大幅な緩和と言える。
12月に入り2023年に
米国が景気後退に陥る懸念が台頭し米国株は調整を余儀なくされ、大幅下落となった。
ただし、日本株は中国期待に救われた格好で、
中国事業が成長を支えるファーストリテイリングや資生堂、産業用ロボットのファナックも中国の工場再開で業績回復が見込まれることから週間で3%以上上昇した。
またインバウド関連銘柄も買いを集め、
日経平均の下げ幅は縮小された。
しかし14日の東京株式市場では、インウンド関連銘柄の下落が目立った。
百貨店のJ・フロントリテイリングと松屋は一時3%安まで下げた。
免税店事業のラオックスホールディングスや
訪日外国人向けの団体ツアーを手掛けるハナツアージャパンなども逆行安となった。
日本航空などの空運株や
JR東日本などの鉄道株もさえなかった。
これは中国の防疫措置の緩和によって
北京など主要都市で感染者が急増していると伝わったことにより、関連株の重荷となってしまったわけだ。
もう一つは
防衛費の増額である。
自民党安全保障調査会は今年4月に防衛費の5年以内の大幅増額を盛り込んだ提言書を提出していた。
これは年末に予定される国家安全保障戦略の改定に向けたものであったわけだが、政府・与党は9日、防衛費増額のための増税の検討を本格化した。
自民党税制調査会の幹部は14日、防衛費増額の財源として法人税、所得税の一部の東日本大震災の復興特別所得税、たばこ税の3つを軸とする素案を示した。
党内には反発もあり、
週内にまとめる与党税制改正大網に具体的な税率や実施時期を明記できるかが焦点となるが、それはさておき、東京株式市場では防衛関連銘柄として川崎重工、三菱重工、IHI、東京計器、石川製作所などが買いを集め人気化している。
最後に
今回の米連邦準備理事会(FOMC)について書いておこう。
利上げ幅は市場予想通り0.5%と、4回連続での0.75%の利上げから減速したものの、声明文やパウエル議長会見では、利上げの長期化が示され、ターミナルレート(利上げの最終到達地点)が引き上げられ、引き続き積極的な引き締め姿勢が示された。
ダウ工業株30種平均はFOMC結果公表前に一時287ドル高まで上昇したが、パウエルFRB議長発言を受けて404ドル安まで下げを見せる場面もあった。
ただパウエルFRB議長の記者会見が進むにつれ、思ったほどタカ派寄りではないとの見方が広がったことで、引けにかけ下げ幅を縮小し142ドル安で終了した。
結果大きな波乱は無く、次回のFOMCは1月31日~2月1日であることから、日々の材料に一喜一憂する相場が続くものと思われる。