2023年12月後半日経平均相場の振り返り
初めに、2024年1月1日石川県能登半島で起きた、地震の被災地の方々並びに被害に遭われた方々に、1日でも早く明るい未来が訪れるよう願っております。支援は交通状況の問題もある為、物資ではなく現金の方が好ましいとの事です。
「何か力になりたい」と考えている方々は、下記リンクから日本赤十字社を通して被災地への募金が可能との事です。
https://www.jrc.or.jp/domestic_rescue/2024notoearthquake.html
皆様いつもレポートを愛読して頂き、誠にありがとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
① 日経平均チャート
12月後半相場を振り返ると、日経平均株価は19日、日銀の金融政策決定会合で金融政策に変更なしの結果を受け、為替が円安に傾き2日間で900円超上昇したが、その後はクリスマスモードとなり、株価・出来高もジリ貧となった。
ただ27日は休暇明けの注文が集中したせいなのか窓開け上昇となった。
終わってみれば11月末の終値に対し22円安、月間値幅も1600円程度と小幅な動きであった。
② プライム企業のEPS
今年の日本の株式市場は、日経平均株価が33年ぶりの高値を更新するなど株高が進んだ。
この原動力となったのは言うまでもなく企業の稼ぐ力の向上だ。
東証プライム市場上場企業の1株当たり純利益(EPS)の平均は10月に177.72円と過去最高を更新した。
③ EPSとは
EPSを押し上げる要因の一つは収益力の増加だ。
日本経済新聞の集計にいると、純利益合計が24年3月期は前期比12%増と3年連続で最高となる見通しだ。
④ 自社株買いとは
もう一つは自社株買いだ。
自己株式はEPSを計算する際に分母の株式数から除かれる。
このため自社株買いはEPSを押し上げる効果がある。
日本企業は自社株買いを積極化しており、23年の自社株の取得実績は約8兆2000億円と過去2番目の水準に上る。
投資家が企業に対し豊富な手元資金を株主還元に向けるよう求めていることや、東証が資本コストや株価を意識した経営に取り組むよう要請したことが背景にある。
⑤ 時価総額1兆円超え企業
個別企業の時価総額で見ても、節目となる1兆円を超えた社数が165社に達し、22年末の140社から25社増えた。
23年に初めて大台を超えた企業は、今年の日本市場の特徴をよく表している。
⑥ 京成電鉄の株価
6月に1兆円を超えた京成はインバウンドの増加による鉄道需要の回復もあるが、足元ではオリエンタルランドの好調とそこに目を付けた投資ファンドの動きも関係している。
10月に投資ファンドが京成株の保有と、京成にOLC株の売却を要求したことが明らかになり、株価上昇に弾みがついた。
京成とOLCは、OLC株の保有時価が京成の時価総額を上回るねじれの関係にある。
親子上場の解消など、非効率な資本関係の是正が日本企業全体でも大きなテーマにもなっている。
⑦ ゼンショーHDの株価
7月に1兆円を超えたゼンショーHDは、積極的な海外でのM&Aに加え、新型コロナウイルスの影響がなくなった後の外食需要回復や値上げによる収益改善期待を集めた。
半導体製造装置のSCREENホールディングスは11月に初めて1兆円を上回った。
主力の半導体洗浄装置のシェアが高く、来期以降の半導体需要回復の恩恵を受けるとみられている。
米金利の上昇が一服し、成長株に資金が向かいやすくねっていることで追い風も吹く状況だ。
⑧ 出光興産の株価
出光興産は11月に26年3月期を最終年度とする中期経営計画を見直し、自己資本利益率(ROE)の目標引き上げや自社株買い、配当下限の引き上げに踏み切った。
このように株主側を向いた経営の広がりも株高につながっている。
そして1兆円クラブよりさらに狭き門の5兆円クラブの社数は32社と過去最多となった。
⑨ ベネフィット・ワン買収
最後に今月の話題としてあげるのは、第一生命ホールディングスがベネフィット・ワンの買収に向けてTOB(株式公開買い付け)を表明したことである。
ベネワンには医療情報サイト運営のエムスリーが1600円でTOB中だ。
第一生命HDはTOB価格を1800円以上とする対抗提案であるが、パソナ側とは事前に接触しておらず、協議をこれから本格化させるという。
これを受けエムスリーはTOB期間をもともとの12月13日から24年1月17日まで延長することを決めた。
そして第一生命HDは21日にTOB価格を2123円にすると発表した。
ベネワンの今の親会社であるパソナグループはエムスリーのTOBに応募する契約を結んでいるがエムスリーの価格を上回る提案が出た場合は、エムスリーと協議を申し入れることができるようになっている。
パソナはエムスリーのTOBに応じることもできるが、高値で売却機会を逃したとして株主からの反発を受けることも想定される。
今後はエムスリーがTOB期間となる24年1月17日までに、ベネワンが第一生命HD案への賛否をどうするか、パソナが第一生命HD案に賛同するか、エムスリーが第一生命HDに対抗して条件を引き上げるかなど、3社の判断が焦点となる。
⑩ 「同意のなき」買収提案
日本では相手先の同意を得ないままの買収提案はまだ少ない。
2020年にはDCMホールディングスが買収で合意していた島忠に対して、ニトリホールディングスがより高値の提案をして買収している。
今年はニデックがTAKISAWAに同意なきまま買収提案し実現させた。
これらは似鳥昭雄氏や永森重信氏といった個性派の創業者が手掛けた案件で、ほとんどの日本企業にとってはM&Aに対抗することや、相手の同意を得ずに買収を提案することは「お行儀が悪い」とされていた。
経済産業省は今年8月に「企業買収における行動指針」を出している。
株主価値や企業価値の向上に資する買収提案であれば、経営陣は真摯に検討すべきというのが盛り込まれた。
日本企業の時価総額が海外に比べて見劣りする理由の一つは、M&Aの活性化で後れを取ったからとの危機感がある。
大手機関投資家である第一生命HDがこれまで日本企業にとって非常識とされていた手法に乗り出したことはM&Aの活性化につながりそうだ。
実際今年TOBと通じて上場廃止となった企業は増えている。
2023年は65社となり、集計できる2000年以降で過去最高となった。
これは東京証券取引所や投資家から株価を意識した経営を求める動きが強まっているなか、短期的な株価変動や株主への利益配分にとらわれず中長期の視点で経営改革を進めるために、株式市場からの撤退も選択肢になっているからである。
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