2024年1月後半日経平均相場の振り返り
① 日経平均チャート
1月後半相場を振り返ると、日経平均は23日に33年11カ月ぶりの高値36984円を一時つけた。
ただ昨年末の終値33464円に対し僅か13営業日で3520円の急ピッチの上昇であったこともあり、過熱感から調整することになり36286円で1月の取引を終えた。
② 日銀金融政策決定会合
日銀は23日までの金融政策決定会合で現状の金融緩和策の維持を決めた。
ただ公表文ではマイナス金利政策解除の前提となる2%の物価安定目標について、「こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている」と表現した。
植田和男総裁は記者会見で「物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったとすると、マイナス金利を含めた様々な大規模金融緩和策の継続の是非を検討していく」と述べた。
これを受け24日の長期金利は一時0.740%と前日比0.105%上昇し、これが重荷となり日経平均の下げ幅は400円を超える場面があった。
③ プレミアム銘柄
東京証券取引所のプレミアム銘柄では7割にあたる1148銘柄が値下がりした。
しかし銀行株は大幅な逆行高を演じた。
三菱UFJフィナンシャルグループは5.2%高となり、終値として2007年6月以来およそ16年半ぶりの高値をつけた。
三井住友フィナンシャルグループは4.0%高、みずほフィナンシャルグループも4.2%高となった。
東証に上場する銀行株では79銘柄全てが上げた。
ただ市場関係者では、このような銀行株の上昇をみて、マイナス金利解除にとどまらず、さらなる利上げを織り込む水準だという声も多い。
④ 上場企業の自社株取得
日本経済新聞が上場企業の自社株取得枠を取締役会決議日ベースで集計したところ、23年は9兆6020億円と前年から1350億円増えて、2年連続で過去最高となった。
取得枠を設定した企業数は延べ1033社と2年連続で1000社を超えた。
東京証券取引所が企業に資本効率の改善を要請したことも背景にあり、余剰資金を株主に積極的に還元していることも、足元の株高の要因になっている。
⑤ ROEやPBR
自社株買いは企業の株式数を減らし、自己資本利益率(ROE)やPBR(株価純資産倍率)など財務指標の改善につながる。
配当よりも機動的に実施でき余剰資金を株主還元に回しやすい。
以前は株高局面で一服することが多かったが、足元でも活発な動きが続いている。
目立つのはPBRが相対的に低い企業だ。
⑥ 三菱商事
三菱商事は計4000億円の自社株を取得した。
25年3月期までの3年間で配当と合わせて1兆5000億円以上を株主還元する方針を揚げている。
PBRは22年末の0.78倍から1.1倍に上昇した。
⑦ ホンダ
ホンダは前年比2.7倍の2700億円の自社株買いを実施した。
PBRは22年末の0.4倍台から0.6倍台に上昇した。
大株主の放出する政策保有株の吸収を狙った自社株買いも多い。
⑧ リクルートホールディングス
リクルートホールディングスは大日本印刷とTOPPANホールディングスの株式売り出しに合わせ、約1100億円の自社株買いを実施した。
⑨ KDDI
KDDIはトヨタ自動車から約2500億円で自社株を取得した。
企業が自社株買いを積極化するのは、余剰資金が膨らんでいるためだが、上場企業の23年9月末の手元資金は101兆円、自己資本比率は43%といずれも過去最高水準となった。
23年の自社株買いと配当の合計は約28兆円、純利益に対する割合は5割強に上る。
1月から東証による資本コストや株価を意識した経営に取り組んだ企業の開示が始まった。これにより益々自社株買いの動きは強まると思われる。
⑩ トヨタ自動車
最後にトヨタ自動車について一言述べておこう。
去年のダイハツに続き豊田自動織機の不祥事が発覚した。
豊田自動織機においてはトヨタ自動車の6車種にエンジンが搭載されている。
これによってトヨタ自動車は生産を一時停止することとなった。
しかしトヨタ自動車の株価はほとんど下がらない。
さらに不祥事の本丸である豊田自動織機も下がらない。
摩訶不思議な事態である。
業績見通しに修正はないということなのだろうか、今の段階では解説できないのである。
この件については今後どこかで解説したいと思います。