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まじめなNOTE: 株価はどうやって決まるの?―代表的な評価方法とポイントを総まとめ

こんにちは!手抜き投資ラボの「まじめなNOTEシリーズ」です。
「そもそも株価って、どうやって決まるの?」「PERとかPBRとか、どの指標を見ればいいの?」
そんな疑問を持つ初心者さんも、「DCFとかリアルオプションとか、もっと複雑な手法はどう使えばいいの?」という上級者さんも、この記事では株価評価の主要な方法を体系的に解説します。

読むと分かること:

  • 代表的な株価評価手法の概要と計算式

  • それぞれの指標の長所・短所、使いどころ

  • 最新の研究や実務でのアップデート状況

  • どんな企業・場面でどの指標を使うとよいか

簡単に言うと
「いろんな評価方法を知ると、株価を“立体的”に捉えて投資判断がしやすくなる!」


1. PER(株価収益率)による株価評価

簡単に言うと
「その会社が1株あたりどれだけ儲かっているかと、株価を比べて“割安or割高”をざっくり見る指標!」

  • PER(Price Earnings Ratio)は「株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)」で算出される指標。企業の利益水準と株価の比較をする際に用いられる。

  • 一般に「PERが低いほど割安、PERが高いほど割高」とされることが多いが、業界ごとの平均や企業の成長率、景気変動等も考慮が必要。

より詳細に
1株あたりの純利益(EPS)は、企業が最終的に株主にもたらす利益を「発行済株式数」で割ったもの。PERは「何年で投資額を回収できるか」の目安と見られることもある。

  • 例)PERが10倍なら、理論上は企業の年間利益を10年分合計すると、投資額相当になるというイメージ。

  • ただし実際は企業の利益は一定ではなく変動する。また、企業の成長性が高い場合にはPERは高くなる傾向がある(投資家が将来の成長を織り込むため)。

  • 科学的根拠・最新情報:近年のデータサイエンスやAIの普及により、PERだけでなく企業の将来利益成長率(EPS成長率)の予測も考慮し、PERを「PEGレシオ」(PER ÷ EPS成長率)として評価する動きがある。これにより、高成長企業の「割高・割安」をより適切に判断できると期待されている。


2. PBR(株価純資産倍率)による株価評価

簡単に言うと
「会社が持ってる“本来の資産”と比べて、今の株価が高いか低いかを測る指標!」

  • PBR(Price Book-value Ratio)は「株価 ÷ 1株当たり純資産」で算出される指標。

  • 企業の純資産(自己資本)に対して株価がどの程度の評価を受けているかを見る。

より詳細に

  • 一般には「PBRが1倍を下回ると割安」と言われるが、業種やビジネスモデルにより「妥当なPBR」は異なる。

  • 純資産(Book Value)は企業の簿価(会計上)の価値であるため、無形資産が多いIT企業などではPBRが高くなりやすい傾向がある。逆に、成熟産業や資産が多い企業では、PBRが1倍以下となるケースも珍しくない。

  • 科学的根拠・最新情報:無形資産(ブランド価値、特許、ソフトウェアなど)の評価は従来型会計では十分に反映されない。そのため、無形資産の評価を補正した“Adjusted Book Value”を用いる研究も進んでおり、より精緻なPBR評価を目指す動きがある。


3. DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)による株価評価

簡単に言うと
「会社が将来稼ぐお金を“今のお金”に直して合計し、それを株価の目安にする方法!」

  • 将来見込まれるキャッシュフローを割り引いて現在価値に換算し、企業全体の理論価値を求める方法。

  • 理論的には最も合理的・科学的根拠のあるアプローチとされるが、将来予測の精度に依存する。

より詳細に

  • DCFでは、企業が将来生み出すフリー・キャッシュフロー(FCF:営業CF - 設備投資など)を予測し、資本コスト(割引率)で割り引いて合計を出す。

  • 割引率には「WACC(加重平均資本コスト)」を用いることが多く、企業の株主資本コスト(期待収益率)と負債コスト(借入利息など)を企業の資本構成比率で加重平均したものとなる。

  • 企業価値を求めた後、そこから純有利子負債を差し引くと「株主価値(株式時価総額)」が算出できる。さらに発行済株式数で割れば1株あたり理論株価が求まる。

  • 科学的根拠・最新情報:

    • 現在は「シナリオ分析」や「モンテカルロシミュレーション」を用いて、将来の不確実性を定量的に考慮するアプローチが増えている。

    • ESG要因(環境・社会・ガバナンス)を考慮したDCFモデルを提案する学術研究もあり、将来キャッシュフローが環境規制などでどう変化するかを加味する企業評価が注目されている。


4. DDM(配当割引モデル)による株価評価

簡単に言うと
「もらえる配当金だけに注目して株価を評価する方法。でも自社株買いが増えた今は補助的な指標!」

  • 将来の配当を割引率で割り引いて合計した理論価値を株価とみなす方法。

  • 「株主にとっての最終的なリターンは配当」という考え方がベース。

より詳細に

  • DDMは企業が将来的に支払う配当金を何らかの成長率(g)で成長すると仮定して、その合計の現在価値で評価する。

  • Gordon Growth Model(ゴードン成長モデル)と呼ばれる単純化されたモデルでは、株価=「1期後の予想配当 ÷ (株主の必要収益率 - 配当成長率)」という形になる。

  • 成長率をどう見積もるか、配当に回さず再投資する部分の成長効果をどう反映するかが課題。

  • 科学的根拠・最新情報:配当よりも自社株買い(Buyback)が株主還元策の主流となりつつある市場も多く、従来のDDMだけでは捉えにくい面がある。そのため、配当と自社株買いを合算した“総株主還元”を評価対象に含めたモデルが提案されるなど、研究や実務のアップデートがある。


5. EV/EBITDA倍率による評価

簡単に言うと
「企業まるごと買うコストと、その会社が生み出す“キャッシュ力”を比べるイメージ!」

  • 企業価値(EV) ÷ EBITDA(税引前利益+金利+減価償却費)で評価する方法。

  • キャッシュフローに近い指標であるEBITDAを使うことで、減価償却費や利子などの影響を除き、事業の収益力を比較的フラットに比較できるとされる。

より詳細に

  • EVは企業の時価総額に有利子負債を足し、手元資金を引いた値。企業が“実質的に買収された場合の総コスト”に近いイメージ。

  • 資本構成が異なる企業同士を比較するときに使われることが多い。利子や減価償却費に左右されにくいため、特に異なる業界間での比較で用いられることがある。

  • ただし、EBITDAは会計上の利益指標のため、一時的な項目・会計上の処理によっては歪みも生じる可能性がある。

  • 科学的根拠・最新情報:プライベートエクイティの投資判断でEV/EBITDAがよく使われるが、近年はEBITDAだけでなくEBIT(利払い前・税引前利益)やEBITDAR(EBITDA+リース料)など、業種特性に合わせた指標を使う例も増えている。


6. PEGレシオ

簡単に言うと
「ただのPERだけじゃなく、成長のスピードも加味して“割高or割安”を判断しよう!」

  • 「PER ÷ 予想EPS成長率」で計算され、企業のPERがその成長期待と比較して割高か割安かを見る指標。

  • 高い成長率を見込む企業ではPERも高くなるのが自然だが、成長率を考慮して株価が過大評価かどうか判断できる。

より詳細に

  • 例えばPERが30倍で、年間のEPS成長率を15%と見積もる場合、PEGレシオは30 ÷ 15=2。一般的にPEGレシオ1倍程度なら妥当、1倍を下回れば割安、2倍を超えると割高などと言われる。

  • 株式市場ではハイテク企業など成長企業への期待が高い場合、PERが過剰に高くなる傾向があるため、成長率も織り込んだPEGは参考になる。

  • 科学的根拠・最新情報:成長率(g)をどれだけ正確に推定できるかが鍵。AIや機械学習を使って成長率を予測する試みがあるが、不確実性は依然大きいことが学術研究でも示唆されている。


7. その他の株価評価方法・指標

7.1 PSR(株価売上高倍率)

  • 簡単に言うと

    • 「株価 ÷ 1株あたり売上高」で算出。利益ではなく売上に着目する。

  • 詳細

    • 赤字企業やスタートアップなどで利益が安定しない場合にも評価がしやすい。

    • ただし、売上高と最終的な利益が乖離しているケースもあるので、業種・ビジネスモデルに合わせて慎重に利用する。

7.2 ROE(自己資本利益率)・ROA(総資産利益率)と組み合わせた評価

  • 簡単に言うと

    • ROEやROA自体は「株価」ではなく企業の収益力の指標。これらの指標とPERやPBRを組み合わせて、株価の割安・割高を推定する。

  • 詳細

    • ROEが高い企業は資本を効率的に稼いでいるとみなされ、PBRが多少高くても市場で高評価されやすい。

    • 逆にROEが低いと、PBRが1倍を割っていても「適正」であることがある。

7.3 グラハムのミックス係数(Graham Number)

  • 簡単に言うと

    • バリュー投資の代表的な指標で、EPSとBPS(1株当たり純資産)を組み合わせて簡易的な適正株価を推計する方法。

  • 詳細

    • グラハム式の式:理論株価 ≒ √(22.5 × EPS × BPS)

    • バフェットの師であるベンジャミン・グラハムが提唱したが、現代では企業のビジネスモデルが多様化し必ずしも万能ではない。補助指標として用いられることが多い。

7.4 リアルオプション評価

  • 簡単に言うと

    • 企業が将来に行う投資や事業撤退など“オプション”を考慮して評価する手法。

  • 詳細

    • 石油・資源開発など不確実性が大きいプロジェクト、あるいは新薬開発を含む製薬業界で、プロジェクト単位の意思決定に応用されている。

    • 学術研究では、伝統的DCFにオプションの価値を上乗せする方法が検討されており、特にスタートアップやハイテク企業の“成長オプション”を評価するのに重要とされる。


株価評価方法の活用と注意点

  1. 単一指標に頼らない

    • PERやPBR、DCFなど、どれか一つの手法で株価を「正確に」求めるのは難しい。複数の評価方法を組み合わせることで、より立体的に企業価値を把握できる。

  2. 予測の不確実性を常に意識する

    • 将来キャッシュフローや成長率の推定には不確実性が伴う。シナリオ分析や感度分析によってどれくらい評価が変わるかを試算するのが望ましい。

  3. 業種特性・会計上の違い・地域差を考慮する

    • 無形資産の比率が高いIT企業と、設備投資が中心の製造業とでは、適切な評価指標は異なる。業種・国・規制環境の違いを考慮しないと評価を誤りやすい。

  4. 最新の研究・知見を取り入れる

    • ESG評価やリアルオプションなど、新しい観点を加味した評価が近年注目されている。特に長期投資を目的とする場合、環境規制の強化や技術革新の影響を織り込む必要がある。

  5. 投資家のリスク許容度や投資目的を踏まえる

    • 同じ銘柄でも、短期トレードと長期投資では重視する指標が異なる。自分の投資スタンスに合った指標を優先的にチェックするのが効率的。


まとめ

  • PER・PBRなどの伝統的な指標は分かりやすく、株式市場の“ざっくりとした”割高感や割安感の判断に有効。

  • DCFやDDMは理論的裏付けが強いが、将来予測の精度や前提条件の設定に不確実性が大きい点に注意。

  • EV/EBITDAやPEGレシオ、PSRなどは企業の業種や成長ステージによって適切に使い分けよう。

  • リアルオプションやESG要因など新しいアプローチも登場し、複数の指標を組み合わせる“複合的なアプローチ”が重視されつつある。

  • 投資家のリスク許容度や投資目的を踏まえつつ、ファンダメンタルと市場の流れを総合的に判断するのが鍵。

簡単に言うと
「いろんな指標を知って、お気に入りの組み合わせを見つけながら、自分の投資に活かそう!」


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株価の評価方法を理解したら、次は具体的にどの銘柄や市場に注目すればいいか、一歩踏み出してみましょう。
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補足: 用語解説リスト

これまでの株価評価方法の解説で出てきた専門用語についてまとめています。

1. PER(Price Earnings Ratio / 株価収益率)

  • 定義: 企業の株価を1株あたり利益(EPS)で割った指標
    PER=株価EPS\text{PER} = \frac{\text{株価}}{\text{EPS}}

  • 意味: 株価が企業の利益に対してどの程度評価されているかを見る。一般的には「PERが低いほど割安、高いほど割高」とされるが、業界水準や成長率を考慮する必要がある。

  • 最新のポイント: AIなどを用いたEPS予測が注目され、将来の成長性を踏まえたPER(PEGレシオ)も併用される。

2. EPS(Earnings Per Share / 1株あたり利益)

  • 定義: 企業の当期純利益を発行済株式数で割ったもの
    EPS=当期純利益発行済株式数\text{EPS} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{発行済株式数}}

  • 意味: 企業が1株あたりいくらの利益を生み出しているかを示す指標。PERやPEGなどの計算で用いる。

  • 注意点: EPSは会計上の利益ベースのため、一時的な利益・損失や会計処理によって変動する可能性がある。

3. PBR(Price Book-value Ratio / 株価純資産倍率)

  • 定義: 株価を1株あたり純資産(BPS)で割った指標
    PBR=株価BPS\text{PBR} = \frac{\text{株価}}{\text{BPS}}

  • 意味: 企業の純資産(自己資本)に対して、株価がどの程度の倍率で評価されているかを見る。PBRが1倍未満だと「帳簿上の資産以下の評価=割安」と言われることが多い。

  • 最新のポイント: 無形資産(特許やブランド)が会計上の純資産に含まれない場合が多く、それらを補正した“Adjusted Book Value”の評価が注目されつつある。

4. BPS(Book Value Per Share / 1株あたり純資産)

  • 定義: 企業の純資産(自己資本)を発行済株式数で割ったもの
    BPS=純資産発行済株式数\text{BPS} = \frac{\text{純資産}}{\text{発行済株式数}}

  • 意味: 1株あたりの簿価上の資産価値を示す。PBRの分母として使用される。

  • 注意点: 有形資産中心の企業と、無形資産の大きい企業ではBPSの意味合いが大きく異なる。

5. DCF(Discounted Cash Flow / 割引キャッシュフロー法)

  • 定義: 企業が将来生み出すキャッシュフロー(FCF)を資本コストなどの割引率で現在価値に割り引いて合計し、企業価値を算出する手法。

  • 意味: 理論的に最も妥当とされる評価法の一つ。将来の実際の“お金の流れ”に着目するため、キャッシュ創出力が分かる。

  • 最新のポイント:

    • シナリオ分析やモンテカルロシミュレーションによって不確実性を評価する方法が進んでいる。

    • ESG要素を組み込み、将来の環境・社会的リスクをキャッシュフローへ反映させる研究も増加。

6. FCF(Free Cash Flow / フリーキャッシュフロー)

  • 定義: 企業が本業(営業活動)で稼いだキャッシュから、将来の事業運営や成長のための投資(設備投資など)を差し引いた余剰キャッシュフロー。
    FCF=営業CF−資本的支出\text{FCF} = \text{営業CF} - \text{資本的支出}

  • 意味: 企業が株主や債権者に実質的に還元できる現金の流れを示す。

  • 注意点: 会計上の営業CFや投資項目は企業の会計方針によっても変化し、特別要因の扱いなどを精査する必要がある。

7. WACC(Weighted Average Cost of Capital / 加重平均資本コスト)

  • 定義: 企業が資金を調達する際に、株主資本と負債(借入金)のコストをそれぞれ加重平均して求める指標。
    WACC=ED+E×re+DD+E×rd×(1−t)\text{WACC} = \frac{E}{D + E} \times r_e + \frac{D}{D + E} \times r_d \times (1 - t)

    • EE: 株主資本(Equity)

    • DD: 負債(Debt)

    • rer_e: 株主資本コスト

    • rdr_d: 負債コスト(借入利息等)

    • tt: 法人税率

  • 意味: 企業が資金を集める際の期待リターンの平均値。DCFの割引率としてよく使われる。

  • 最新のポイント: 低金利下では負債コストが下がりがちだが、株主資本コストは企業リスクや市場要因によって変動。ESGリスクを反映したWACCの試みもある。

8. DDM(Dividend Discount Model / 配当割引モデル)

  • 定義: 将来の配当金を割引率で現在価値に換算して合計し、株価とする方法。

  • 意味: 「最終的に株主にとってのリターンは配当」という考え方がベース。Gordon Growth Modelなどが有名。

  • 注意点: 近年は自社株買いなど配当以外の株主還元策が増えており、DDMだけでは企業価値を捉えきれないケースも。

9. EV(Enterprise Value / 企業価値)

  • 定義: 企業の時価総額に有利子負債を加え、余剰資金や現金同等物を差し引いたもの。
    EV=時価総額+有利子負債−現金同等物\text{EV} = \text{時価総額} + \text{有利子負債} - \text{現金同等物}

  • 意味: 企業を“まるごと買収”する場合の実質的な価格に近い。

  • 活用例: EV/EBITDAなどの指標で、企業の収益力を資本構成の違いを排して比較しやすくなる。

10. EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)

  • 定義: 税引前利益(EBIT)に減価償却費(Depreciation)や償却費(Amortization)を足し戻したもの。
    EBITDA=営業利益+減価償却費+償却費\text{EBITDA} = \text{営業利益} + \text{減価償却費} + \text{償却費}

  • 意味: 企業の本業のキャッシュ創出力に近い指標とされる。投資家やアナリストが企業間比較に使う。

  • 注意点: 減価償却費や償却費が大きく変動する業界(重工業・製造業・ITなど)で評価が分かれることがある。

11. EV/EBITDA倍率

  • 定義: EV(企業価値)をEBITDAで割った比率。
    EV/EBITDA=EVEBITDA\text{EV/EBITDA} = \frac{\text{EV}}{\text{EBITDA}}

  • 意味: 企業の収益力に対して、買収コストが何倍かを示す。PERよりも資本構成の違いに左右されにくい。

  • 最新のポイント: M&A評価でよく使われる指標。リース会計や無形資産の扱いによってEBITDAの定義がぶれる点に注意が必要。

12. PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio)

  • 定義: PERをEPS成長率で割った指標。
    PEG=PEREPS成長率\text{PEG} = \frac{\text{PER}}{\text{EPS成長率}}

  • 意味: 成長率を考慮したPER。高成長企業の「割高・割安」をより適切に把握するために使われる。

  • 注意点: EPS成長率の予測が当たるかどうかで評価は大きく変わる。不確実性を考慮したシナリオ分析が望ましい。

13. PSR(Price Sales Ratio / 株価売上高倍率)

  • 定義: 株価を1株あたり売上高で割ったもの。
    PSR=株価1株あたり売上高\text{PSR} = \frac{\text{株価}}{\text{1株あたり売上高}}

  • 意味: 利益が出ていない企業やスタートアップでも、売上高ベースで評価できる。

  • 注意点: 売上が伸びても利益構造が脆弱な企業では、PSRが高くても必ずしも将来の利益に結びつくとは限らない。

14. ROE(Return on Equity / 自己資本利益率)

  • 定義: 企業の自己資本に対する当期純利益の割合。
    ROE=当期純利益自己資本\text{ROE} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{自己資本}}

  • 意味: 株主が出資した資金を使ってどれだけ利益を上げているかを示す。企業の資本効率を測る代表的指標。

  • 活用例: バリュエーション指標(PBRなど)と組み合わせることで、企業の株価評価を補完する。

15. ROA(Return on Assets / 総資産利益率)

  • 定義: 企業の総資産(自己資本+負債)に対する当期純利益の割合。
    ROA=当期純利益総資産\text{ROA} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{総資産}}

  • 意味: 企業が保有する総資産をどれだけ効率よく運用しているかを測る指標。負債も含めた資金効率を見る際に有効。

  • 注意点: ROAは産業特性・業種(資産の重い業種 vs. 軽い業種)で大きく異なるため、単純比較は慎重に行う必要がある。

16. グラハム・ナンバー(Graham Number)

  • 定義: バリュー投資の祖であるベンジャミン・グラハムが提唱した理論株価の簡易計算式。
    理論株価≈22.5×EPS×BPS\text{理論株価} \approx \sqrt{22.5 \times \text{EPS} \times \text{BPS}}

  • 意味: EPSとBPSの両面から企業価値を概算する。伝統的バリュー投資で人気がある。

  • 注意点: 現在はビジネスモデルの多様化で必ずしも当てはまらない企業も多い。参考値として用いられることが多い。

17. リアルオプション(Real Options)

  • 定義: 企業の将来的な投資機会や事業撤退の選択権など、“オプション価値”を考慮した評価手法。

  • 意味: 通常のDCFでは捉えきれない、不確実性に応じた柔軟な戦略(オプション)の価値を評価する。

  • 活用例: 新薬開発・資源開発など成功確率や資源価格の変動が大きい領域で応用される。

  • 最新のポイント: スタートアップの“成長オプション”を評価する際にも注目されている。

18. ESG(Environmental, Social, Governance)

  • 定義: 環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮した企業経営の総称、またはそれらを考慮した投資判断基準。

  • 意味: 財務面だけでなく、企業の社会的責任やリスク管理を評価に織り込む。

  • 最新のポイント: 欧米を中心に機関投資家がESG要因を重要視しており、企業価値(株価)にも影響を与えるとされる。DCFなどのモデルに炭素税や環境規制コストを織り込む試みが進んでいる。

19. シナリオ分析・モンテカルロシミュレーション

  • 定義: 将来キャッシュフローや成長率などの前提を複数のシナリオ(楽観・中立・悲観など)で変化させ、DCFなどの結果がどう変わるかを分析する方法。

  • 意味: 不確実性が高い将来予測を単一の数字で判断しないようにする。リスクの幅を可視化できる。

  • 注意点: シナリオの設定が不適切だと、結局バイアスがかかった結果になる可能性がある。専門家の意見や統計データを元にシナリオを設計することが重要。

20. 自社株買い(Share Buyback / Stock Repurchase)

  • 定義: 企業が市場から自社株を買い戻し、発行済株式数を減らす行為。

  • 意味: 企業に余裕資金があるときや、株価が割安と判断されたときに行われ、1株あたり利益(EPS)を上げる効果がある。

  • DDMとの関連: 従来の配当だけを見るモデルでは、株主還元の全体像が把握しづらいため、配当+自社株買いを合計した“総株主還元”を重視する考え方が増えている。

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