ふるさと納税は、金持ちほど得をする累進「減税」政策だ
ふるさと納税は、地域活性化を目的とした日本独自の税制制度です。寄付者には、自治体への寄付額に応じた税控除や特産品の返礼が提供される仕組みですが、その恩恵の大きさは寄付者の年収に大きく左右されます。特に高収入者がより多くの控除を受けられる仕組みとなっています。
本記事では、年収500万円と2000万円のケースを比較しながら、この主張を掘り下げます。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、個人が自治体に寄付を行うと、その寄付額から2,000円を引いた分が翌年度の住民税や所得税から控除される仕組みです。控除の上限額は、寄付者の年収や家族構成、居住地の自治体税率に応じて決まります。この上限額の範囲内であれば、実質的に寄付者は2,000円の負担だけで自治体に寄付を行い、返礼品を受け取ることが可能です。
この「控除上限額」の存在が、ふるさと納税における収入格差の議論を生む大きな要因です。
年収500万円と2000万円のケースを比較
年収500万円のケース
年収500万円、扶養なしの独身者を想定します。この場合、ふるさと納税の控除上限額は約6万円です。つまり、この人が6万円を自治体に寄付すれば、翌年度の税負担から5万8000円が控除され、自己負担額は2,000円だけとなります。
返礼品として、例えば地域の特産品(高級なお米や牛肉、フルーツなど)を選べば、寄付金額の30%程度の価値があると仮定すると、18,000円相当の返礼品が得られます。この場合、実質的には16,000円分の「利益」を得ている計算です。
年収2000万円のケース
次に、年収2000万円、扶養なしの独身者を想定します。この場合、ふるさと納税の控除上限額は約140万円です。140万円を寄付した場合、翌年度の税負担から139万8000円が控除され、自己負担額は同じく2,000円となります。
返礼品の価値を寄付金額の30%とすると、42万円相当の特産品を受け取ることができます。結果として、この人は41万8000円分の「利益」を得たことになります。
累進減税の構図
上記の例から明らかなように、ふるさと納税の恩恵は寄付者の収入に比例して増大します。収入が高いほど控除上限額が高まり、寄付可能額が増えるため、より多くの返礼品を受け取ることができるのです。これにより、高所得者ほどふるさと納税を有利に活用できる仕組みとなっています。
一方で、低所得者にとっては控除上限額が低いため、ふるさと納税を活用する余地が限られています。年収500万円の人が受け取る返礼品の価値(18,000円相当)と、年収2000万円の人が受け取る返礼品の価値(42万円相当)を比較すると、その格差は非常に大きいと言えます。
このように、ふるさと納税は累進課税を緩和し、高所得者に有利な税負担軽減策として機能していると考えられるのです。
ふるさと納税は誰のための制度か
ふるさと納税は、制度設計の上では「寄付」という形式を取っていますが、実際には高所得者が税負担を軽減しつつ特産品を得るための手段として利用されている面が強いと言えます。
累進課税が所得格差を是正する仕組みであるのに対し、ふるさと納税はその累進性を一部緩和する「累進減税政策」の側面を持っているのです。
ですので、所得格差を悪化させるふるさと納税は廃止した方が良いです