技能実習生受け入れの仕込み
技能実習生というと、どういうイメージがあるだろうか。メディアの偏った報道から、一般にあまり良いイメージがないように思われる。今の日本は、彼らの労働力を頼り、共存しなければ社会は循環しない。にもかかわらず、外国人労働者と日本社会との距離が縮まらないのを、とても残念に思っている。
なので、監理団体を興し、東京の文教地区に研修所をつくり、主に介護職の技能実習生の研修事業を始めようとした大学時代の仲間が、どのように仕事をしていくのか興味を持った。脱サラした50代の仲間が、コロナ禍直前に事業を興し、いよいよヴェトナム、ミャンマー、フィリピンなどから技能実習生を日本に受け入れるという段階で、コロナ禍が始まってしまったのだ。まさか数年にわたってコロナ禍が続くとは思わず、想定外だったはずだ。その結果、外国から技能実習生が一人も入国できず、完全に開店休業状態に陥った。
しかし、その間、仲間は地域のフードバンクでの定期ボランティアや、地元小学校に通う外国人生徒の通訳を探すボランティア探しなど、さまざまな地元の助け合い活動に参加していたようだ。また、社会福祉や国際交流団体などに関わる、元気で好奇心旺盛で人生経験が豊富な人たちと仲良くなってネットワークを築いていた。地元コミュニティに入り込んで溶け込み、近所の人たちと信頼関係を築き、持ちつ持たれつの関係を構築する。そうして技能実習生受け入れが解禁される時を待った。
ようやく技能実習生が来日するようになり、研修所に寝泊まりしながら研修が始まると、全国に散らばるボランティアさんと実習生をつなぎ、オンライン日本語会話を開催。オフラインでは、ご近所さんがわらわらと集まり、思い思いにボランティアをしてくれるようになった。
40日間にわたる技能実習生の研修期間中、介護職にかかわる勉強以外に、ボランティアさんが、折り紙講座、カレーライス・みそ汁・おにぎりの作り方講座、そば打ち体験、生け花体験、お寺での座禅体験、スーパーでの買い物方法など、さまざまなイベントを行ってくれるようになった。近所の小学生英会話教室の生徒さんが研修所にやってきて交流したり、大学生が持ち込み企画を行い、盛り上がったりしたと聞く。もともと仲間があわせ持つ社交的な性格もあるが、皆が気持ちよくボランティアをしてもらえるような仕組み作りを行うのに、相当、努力したのではないか。
技能実習生たちも自ら隣り近所に出向き、高齢な大家さんが経営するアパートの清掃や、庭木の剪定、雑草取りなどボランティアを行い、コミュニケーションをはかったと言う。週末には、BBQ企画のほか、地元の盆踊り大会や花火大会参加などもあり、私は技能実習生と一緒に、わいわいと日本の夏を楽しんだ。
外国からやって来た技能実習生が、さまざまな年代の日本人と、生きた日本語でコミュニケーションを図る訓練をすることは、研修後に派遣される介護施設で、利用者さんと会話したり、日本人と共同で仕事をしたりする上で、とても大切になる。ボランティアをする側も同じだ。元気で好奇心旺盛で、そして一芸に秀でた人たちが次々と研修所にやってきては、工夫を凝らして、思い思いに技能実習生をもてなし、交わっている。そうした姿を見ると、日本の地域活性化、多文化共生のヒントがあるのではないかと思った。地域の高齢者を巻き込んだ介護職の技能実習生研修。こうした形はありだし、あるべき姿なのではないかと思った。
さまざまな研修を受けた技能実習生は今、鹿児島や福岡、広島、兵庫、香川、群馬などの介護施設へ旅立ち、働いている。SNSでつながり、彼らの発信をみていると、皆、必死である。技能実習としての任期終了後をにらみ、日本語能力試験だけでなく、介護士の資格も取ろうとする者も多く、仕事と勉強に真面目に頑張っているのである。