見出し画像

ずっと座ってるんだから、ご飯くらい立って食べればいいじゃない

我が家は、夫婦2人とも在宅勤務だ。

夫は会社で人事の仕事、私はフリーでライター(一応)の仕事である。

一時期流行った、昇降式の机などという高級品はうちにはないので、必然的に2人とも座りっぱなしで仕事をすることになる。

文字通り座りっぱなしで、始業から終業までの約8時間、へたをすると10時間以上、文字通り座りっぱなし。

寝たきり、ならぬ座ったきり生活だ。

もう3年は座ったきり生活なので、そろそろおしりが3センチほど潰れているんじゃないか、と心配になるくらいである。

普段座ってばかりなので、久しぶりに電車に乗ったりすると、ガラガラであっても進んで立つほうを選ぶ。座る方が楽だと頭は思い込んでいるのだが、体が、立ちたがっているのだ。

そんな我が家だが、多くの家庭がそうであるように、昼・夜のご飯とおやつは着席スタイルで行われていた。

ただし、唐揚げだけは例外である。

唐揚げは揚げたてが美味いに決まっている。せっかく家で揚げるのに、時間が経って冷めきったのを食べるなんて大損失だ。唐揚げは、最高の状態で口内まで運ばれるよう、最善の努力をせねばならぬ。

唐揚げが何よりの好物であるわたしは、それくらいの執着を持っている。よってわたしの唐揚げスタイルは、必然的に「揚げながら食べる」となっているのだ。それ以外は認めない。キッチンでのスタンディングスタイルでいただくのが、我が家の唐揚げの作法である。

昨晩、鶏の唐揚げを行った際も、当然このスタイルであった。夫もわたしのこだわりはよく存じているので、文句も言わず狭いキッチンに集合してくれる。唐揚げを頬張り、ビールを飲み、尽きないおしゃべりをしながらの食事時間。

いつになく話ははずんだ。話の内容はまた別の記事で書こうと思うが、夫の悩みに対して、一筋の光となるような、そんな有意義な話となった。

「今日唐揚げをして本当によかった」

そんなことを夫が口走ったくらいである。

そこでわたしは、はて、と思った。

なぜ、これまでわざわざ唐揚げ以外は着席して食事をしていたのだろう。

立ちっぱなしで疲れて帰ってきて、ああ一刻も早く座りたい、という状況なら、わかる。

立ちっぱなしで疲れているどころか、こっちは座りっぱなしで疲れているのだ。

そういえば、立っている方が座っているよりも思考に良い影響を及ぼす、という記事も、随分前に見たような気がする。
そうなると、唐揚げの時に有意義な会話ができたことは偶然ではないのだ。

改めて考えてみると、作りながら立って食事をするメリットはまだある。

できたてを味わえるメリットは、唐揚げに限らないはずだ。テーブルまで料理を持っていく手間も省ける。

食べたらすぐさま調理器具と食器を洗えば良いので、効率的である。洗い物の億劫さは、せっかく座って食事をしているのに「よっこらしょ」と立ち上がり、わざわざキッチンまで戻る、という初動にハードルがある気もする。食事を終えたらその場で洗い物をすれば、なんと軽やかなことか。

お行儀が良いとはいえないが、ちょっとしたものはフライパンからそのままつつけば、皿さえ不要かもしれない。

なんだ、立ちながらキッチンで食事、メリットだらけじゃん。

「食事くらいは、ゆっくり座っていただく」

そんな当たり前は、ガラガラと音を立てて崩れた。

かくして、唐揚げだけに許された「キッチンでスタンディングスタイル」が、我が家のスタンダードとなったのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?