日薬
以前に母から電話で、
「今の人ってやっちゃ場て知らないのかしら?」
と聞かれた。
我が母親は納得がいかないと、とことん食い下がって質問してくるので少し時間を貰って「やっちゃ場」を調べてみた。
多数の辞書には、
【江戸および東京の青果市場(セリの掛け声が「やっちゃ」であるところからこう呼ばれている。】
【江戸・東京の方言】
…とあった。
複数の情報を要約し伝えた。
母曰く「なるほどね。東京方言だったのね。老人会の若い人(週に二度ばかり通うデイサービス的な集いでお世話をして下さる職員の方の意)が秋葉原にパソコン買いに行ったって言うから、あそこは昔はやっちゃ場があってねって言ったらさ。やっちゃ場って何ですか?て聞かれちゃったのよ。」
だそうだ。
母は生まれが神田で戦時中の一時期を縁故疎開で地方に行った以外は神田・日本橋周辺で暮らしていた。なのでいわゆる「東京弁」でしゃべる。それが通じないことはそこそこあるので、都度ごとに私に「これって通じない言葉なの?」と聞いてくる。
そして今回のお題(笑)が日薬だった。
若い方だけでなく周囲の同年代にも通じなかったと不思議そうに連絡してきた。
そういえば子供の頃から転んで膝を擦りむいたり、工作で指を切った時など「日薬だから明日には痛くなくなる」「ほら、かさぶたになった。日薬とはよく言ったものね」など云われた覚えがある。
それは母以外の祖母や近所のおばちゃんからも掛けられた言葉だった。
いつも通りに辞書やネットで調べたら、日薬なんて言葉は載っていない。ネットでは日薬→日にち薬と飛ばされ「関西での言い方」とあり、意味的には同じ解説が出てくる。
気になって図書館にも行って調べてみたが、結果は同じ。
「日薬」は物凄く狭い範囲、実家の近所でだけ使われていた言い方だったのだろうか?
日薬(または日にち薬)
怪我や病気或いは辛い想い等が時間や日にちの経過により良くなる事。
日にちが薬と同じ効果となる事。