曽水に生きて 成瀬正成編 上

3 弟 鍋助

早いもので、小吉が家康公の小姓となって、3年が経っていた。3年の間には何人かの小姓組の入れ替えはあったが、相変わらず小吉が年少であった。小吉が小姓組にあがったとき、小姓組の束ねであった大久保忠隣はその職を離れ、今は小吉の後に入った年上である井伊万千代、後の井伊直政が小姓組の束ねであった。小吉は和小姓組に上がってから、1度も城下の家に帰ることがなく、毎日浜松城で研鑽を積んでいた。

そんなある日、小吉宛の書状が届いた。何かとその書状を読むと母が弟を生んだという知らせであった。小吉は自分に弟ができたことが、すごくうれしかった。それは小吉がどこに行っても年少であり、いつも歯がゆい思いをしていたからでもあった。とにかく母が同じ弟ができたことに、小吉は素直にうれしく会いたいという衝動にかられ、胸の高鳴りを覚えた。

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