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クリアカバーの文庫サイズ小説同人誌装丁とかまとめ(2021~2024年)

 クリアカバーに憧れて作り始めたら奥が深くて、4年経ってもまだまだ作り足りない人の記録です。
 自分用の備忘録です。印刷所、仕様、工夫点、反省点など。
 一部タンブラー(https://www.tumblr.com/ykmur)からの再掲です。
 ノベルティや頒布時の装丁についてのメモもあります。

全て二次創作BLかつ成人向けの小説なので、その点ご了承ください。
(この記事内の画像には、そうしたイラストは一切ありません)

 全てPixivに本文を全て掲載し、書き下ろし無しの、紙で欲しい人向けの再録本にしています。
 Webの表紙と本の表紙のデザインを同一にしたいので、Pixivに上げる時点で装丁はほぼ決めています。
 表紙やカバーなどのデザインは素人が感覚だけで作っているので、優しい目で見て頂けますと幸いです。

 楽しく本作りやってるな~が伝われば嬉しいです。
 めちゃくちゃ楽しいです。

12/24追記)
思っていた以上に読んで頂いているようで恐縮です。
ブックカードって何??という声をちらほら拝見したので補足です。
ブックカードという名称は自分が勝手にそう呼んでいるだけのもので、実質はその本にまつわるデザインの名刺サイズのカードというだけのものです。話のワンシーンをイメージしたデザイン+SNSのIDを記載したものになります。栞の代わりとしても使って頂けるので、本の世界観の表現の助けになるものでもあり、実用性も兼ねたノベルティとしてつけています。

ただのメモ書きだから良いか~と私が勝手にブックカードと呼んでいるだけだったので…戸惑わせてしまったようで、お恥ずかしい限りです…


2021年

◆2021/1/24発行分(226ページ)

カバー

【カバー/表紙/本文】カバー:高透明フィルム200ミクロン(CMYK+白印刷)/雲竜紙220kg/淡クリームキンマリ72.5kg
【遊び紙】前のみ:ミランダ濃緑
【その他】カバーにマットPP

【無配】ブックカード(名刺サイズ)
 紙:ファーストヴィンテージ 270kg(アップルグリーン) / 箔押し表:メタリック黒箔 裏:つや消し銀箔
【印刷所】本:プリントオン / ブックカード:あさだ屋

カバー下、表紙
ブックカード

【メモ】
 今まで作ってきた同人誌のサイズは基本的にA5だったので、文庫サイズに挑戦しました。
 和紙系を使うのが初めてだったので、和風のイメージに引っ張られ過ぎないデザインを心がけました。クリアカバーで雲竜紙の質感を透かしつつ、カバーの大きいイラストの下に白印刷で透け感を消し、更に小さなイラストを表紙に印刷してちょっとした仕掛けに。
 初めてのクリアカバーということもあり、シンプルな装丁です。

 反省点は、背表紙のタイトルです。
 本体に文字を入れるのか、カバーに文字を入れるのか、クリアカバーなので完全に位置を合わせたとしても物理的に浮くので、文字がブレて見えてしまいます。
 演出っぽくて良い感じにはなりましたが、視認性は良くないのでどちらかに統一した方が良かったです。

ブックカードは黒箔を使ってみたかったのでとても良い感じになりました。
栞代わりにもなる&SNSやPixivのIDなどが記載できておすすめです。

◆2021/7/11発行分(258ページ)


カバー

【P数/総字数】P258 / 92,266字
【カバー/表紙/本文】カバー:高透明フィルム200ミクロン(CMYK+白印刷)/新・星物語パウダー150kg/淡クリームキンマリ72.5kg
【遊び紙】前のみ:霞トレペ遊び紙(緑陽社オリジナル/トレペに金印刷)
【その他】表紙ゴールド赤口インク(DIC619)
【印刷所】本体:緑陽社(オフセット) / カバー:プリントオン

【無配】ブックカード(名刺サイズ)
 紙:パチカ、空押し
【印刷所】箔押しのズガ

本体、カバーを外した状態
パチカ名刺と緑陽さんのオリジナル遊び紙

【メモ】
 挿絵を初めて描いて頂いたので、どうしてもオフセットで刷るぞ! で仕上がりの評判が良い緑陽さんへ。
 本編に出てくるアイテムをピクトグラム風に描き、表紙に金刷り1色です。カバーの白インク部分の模様が、白い表紙の上で影になる仕掛けでお気に入りです。
 カバーと本体で印刷所が違うので位置合わせがめちゃくちゃ大変でした。
今後もこの冷や汗は毎回体験します。(結構失敗しています)
ピクトグラム作成時、ほぼ初めてイラレを使って脳みそがよじれるかと思いました。一部はEfonというフォントで代用しました。

反省点は、やはりカバーと表紙のデザインがほんの少しズレたところです。
許容範囲内ですが、回数をこなして慣れていくしかないですね。。

 ブックカードは憧れのパチカを使いました。表紙に使ったピクトグラムが可愛かったので流用。

◆2021/11/28発行分(718ページ)

カバーなし、カバーあり

【P数/総字数】P718/311,171字
【カバー/表紙/本文】カバー:高透明フィルム200ミクロン(CMYK+白印刷)/タスヴェラス200SKYクリスタルホワイト/淡クリームキンマリ72.5kg
【遊び紙】前のみ:キュリアスTLイリディセント
【その他】表紙に箔押しオーロラ
【印刷所】本体:緑陽社 / カバー:プリントオン

【無配】
<ブックカード(名刺サイズ)>
 紙:白黒ケンラン貼り合わせ400kg(あさだ屋オリジナル) / 箔押し表:スカイブルー箔 裏:つや消し赤金102
<水引栞>
 絹巻水引(濃藤)、羽衣水引(銀)、花水引(若草)
<栞の台紙>
 しこくてんれい しろ135kg、シルバーインク
【印刷所】ブックカード:あさだ屋 / 水引栞:大橋丹治株式会社 / 台紙:プリンパ
細かい経緯はここ:https://www.tumblr.com/ykmur/671518584425611264/2021books

水引の栞、台紙(セット済み)、ブックカード表・裏

【メモ】
 使いたい紙や予算であちこちお見積もりをお願いし、4社ほど比較して緑陽さんに落ち着きました。
 絶対に本体に箔押しをしたクリアカバーの本を作りたかったので、色々調整しました。
 カバーのロゴ部分は降雨になっていますが、カバーを外すと太陽に見立てた「○」のみがあり、カバーを外すと雨が晴れる演出になっています。
 印刷所が違う+箔押しの位置を合わせる必要があったので、位置合わせに苦労しまくりました。

 反省点は、表紙や背の上下の一部に潰れが発生したことです。
 表紙のタスヴェラスが柔らかいのか、単純に物質としての本が重すぎるのか不明ですが、こういうものが出るから余部って必要なんだな~と思いました。
 本文用紙をもう少し薄くしてみようと決意した本でした。

無配の水引は話題から外れるので、詳細はnoteでは割愛します。
ただ可愛いので見て欲しくて掲載しました。
栞を固定する台紙をカッターで切りすぎて、指がもげるかと思いました。


【おまけ】
クリアカバー楽しすぎて、装丁イメージのアクリル物質も作りました。

化粧箱入り3つセット(アンブレラマーカーでした)

お付き合い頂きありがとうございました。

https://oishiiyado.booth.pm/items/3767746
白押さえの知識が役に立ちました。
概念アクリル物質、楽しすぎる・・・・!!!!

2022年

◆2022/11/12発行分(216ページ)


【P数/総字数】P216 / 91,160字
【カバー/表紙/本文】カバー:高透明フィルム200ミクロン(CMYK+白印刷)/コートカード紙/淡クリームキンマリ72.5kg
【遊び紙】前のみ:トーシングペーパー
【その他】表紙にオーロラ箔、ベルベットPP。遊び紙印刷

【無配】ブックカード(名刺サイズ)
紙:スタードリーム(ナイトブルー) / 箔押し表:チャコールグレー箔 裏:メタリック金箔
【印刷所】本:プリントオン / ブックカード:あさだ屋


カバーの透け感 1
カバーの透け感 2
ブックカード

【メモ】
 カバーと表紙のデザインがズレるなら……ズレてもいい感じになるデザインにすれば良いのでは?!
 そんな不埒な考えで作りましたが良い感じになりました。
 カバーに箔押しするのではなく、本体に箔押しをして、表紙から透かすことで奥行きが作れます。
 上下の白文字で表紙に影を落とすデザイン、やっぱり楽しいな……と思いました。

反省点は、元々表紙には別の用紙を使う予定だったのですが、
ベルベットPP加工不可となり、泣く泣く変更した点です。
PPの相性は早めに確認した方が良さそうです。

2024年

◆2024/5/5発行分(668ページ)

カバー全体図

【P数/総字数】P668 / 296,712字
【カバー/表紙/本文】カバー:高透明フィルム200ミクロン(CMYK+白印刷)/マーメイド_スノーホワイト 153kg/淡クリームキンマリ62kg
【遊び紙】前のみ:タントセレクトTS-9_N-52_100K
【その他】カバーにマットPP。梱包も装丁の一部にしました。
【印刷所】本体:STARBOOKS カバー:プリントオン

【無配】<ブックカード(名刺サイズ)>
紙:ビオトープ210kg(マゼランブルー) / 箔押し表:ホログラム箔(アイス)
【印刷所】ブックカード:あさだ屋

表紙別角度
ブックカード
梱包全体図
梱包接写

<梱包>
 登場人物の重い過去についての話なので、「絶対に開封しないように」と注意書きのある梱包を開封した上で読み、過去を知る体験ができる!というコンセプトで梱包も装丁の一部にしました。粘着力の弱いシールなので、一度剥がすと戻せません。剥がし方の攻略方法を見つけている方もいて、こっそり覗き見る体験をする方や、暫く開けることを悩んだりと、それぞれの読書体験になる装丁でした。

 A5サイズのタトウ式折り包みダンボールをアスクルで仕入れ、本のサイズに合うようにカット。2種類のラベルシールで梱包を固定しました。
 剥がれると困るので、さらにその上からOPP袋で閉じています。
 2週間くらいずっと段ボールを切り続け、2021年からお世話になっていたカッターマットがお亡くなりに。
 ギリギリまで使ってましたが、カッターマットの表面が削れる=摩擦が増えるので、新品にしてから指への負担が大幅に減りました。
 新調したのは作業進捗90%の頃だったので、普通に指は死にました。
 皆さんもカッターマットは消耗品なので、なるべく早めに交換しましょう。


【メモ】
 クリアカバーのクリア部分面積が珍しく少ない本です。
 これは表紙のカーテンの写真のように、カーテン越しの光が表紙に落ちるイメージにするため、面積を減らしてささやかなものにしました。
 昼下がりのぼんやりとした光のある表紙のイメージです。
 今回初めてキンマリの62kgを使いましたが、あまり次のページの文字が透けるような感じはありませんでした。

 反省点は、表紙の裏面が黒いので、マーメイドでは折れて印刷が削れてしまうところです。どうしても手触りのある紙を使いたかったので、トナー剥がれは悩ましいところです。。
 デザインとの折り合いを付けなければならないので、今後の課題です。

(全然関係無い話)

いつも名刺カードをお願いしているあさだ屋さんなのですが、たまに職人さんが箔と紙の組み合わせを変えたサンプルを入れて下さることがあります。
毎回組み合わせが素敵でとても勉強になるのですが、今回の作品のキャラクターが赤と青のイメージカラーを持っており、青でお願いしたところ偶然にも赤の紙でもサンプルを入れてくださってあの…すみません…天才とお呼びしても……? と大はしゃぎしました。すぐにLINEで自慢しました。

本当にいつも丁寧で素敵な箔押しありがとうございます。

◆2024/11/23発行分(628ページ)

カバー全体、ブックカード

【P数/総字数】P628 / 284,250字
【カバー/表紙/本文】カバー:高透明フィルム200ミクロン(CMYK+白印刷)/ファンタス_ミズ_200K/淡クリームキンマリ62kg
【遊び紙】前のみ:てまり(金銀)
【印刷所】本体:STARBOOKS カバー:おたクラブ

【無配】<ブックカード(正方形サイズ)>
 紙:透明PET 角丸 マット
【印刷所】ブックカード:OHPRINT.ME

別角度
カバー裏面

【メモ】
 クリアカバーで初めて白黒以外の透け感のあるデザインにしました。
 また表紙と本体の位置が違うので位置合わせに冷や汗をかいた話はさておき、景色が額縁の中に収まるようなデザインにしました。ロゴは細めで景色に影が落ち、額縁部分も繊細な柄で影がほんのり見えるようにしました。
試し刷りの段階では柄が小さめでしたが、大きくして影がくっきり見えるものに修正。
 裏面は水面をクリアカバーにカラー印刷し、裏表紙に印刷した文字が水底に沈んでいるイメージに。
 元々表紙に金の箔押しで、本編に出てくるアクセサリーを表現する予定でしたが、デザインがうまくいかず断念。
 遊び紙にてまり金銀を使うことで、箔押し部分の野望を果たしました。
 500ページを超える文庫本で、どうしても使いたい紙があると印刷所さんが特に限られました。

 たまたま運良く常備紙のSTARBOOKSさんの枠が空いていたのでなんとかなりました。
 今回でスタブさんにお願いするのは20回目でした。
一生愛してます。

反省点は、カバーと表紙の位置合わせ以下略。いつも通りです。本当に正解が見つけられてません。

(背幅計算の与太話)

 背幅の計算ですが、ページ数が嵩む本でカバーを作る時にどうしてもズレたり、印刷所さんの背幅計算ツールによって、なぜか背幅に差が出ることありませんか?
 私は今回めちゃくちゃ、いや毎回それに悩まされています。
 クリアカバーかつ分厚い本だから顕著なだけかもしれませんが……。

 どうやら、紙ごとの小数点以下の厚みの部分を計算ツールにどう設定しているか、ツールによって異なるために発生する違いのようです。
 スタブさんのツールで計算するとほぼ必ず3mm分厚く数字が弾き出されたので備忘録として記載しておきます。
 多分、500ページ超えの本を出す時にしかあてにならないメモです。
 200ページ前後の本の背幅は実測したところツールと一致していました。

500ページを超える文庫サイズの同人誌が作れる印刷所(2024/12/20時点)

実際に使ったことのある印刷所と、実際に自分が検討・やりとりしたものの仕様や締め切りの関係で見送ったものを分けて記載します。(敬称略)

今回掲載した本を制作するにあたり、やりとりをしなかった印刷所さんについてはここに記載していません。
ただ体感として、オーダーメイド見積り可能な印刷所さんには一度問い合わせだけしてみると良いかもしれません。
大抵が優しく答えて下さる方々ばかりなので、あまり恐れず……。

・STARBOOKS
https://www.starbooks.jp/
オンデマンドのみ。1000ページまで可能。
個人的に思い入れが深い印刷所さんなので基本的にお願いできるならここにお願いしたい。
箔押しの種類と遊び紙の種類は圧巻です。
小口染めや特色をオンデマンドでも使えます。
特色はホワイトや蛍光ピンク・イエロー、ゴールドやシルバーもあります。神。
使えば使うほど(回数、使用したオプションの種類など)会員ランク的なものが貯まってどんどん割引してくれて、本当に良い印刷所さんです。
この記事を書いている2024年12月時点では人員不足でなかなか枠が無いことがあるので、ギリギリまで粘って納品日を調整しながら探してます。
かなり昔にオーダーメイド対応されていたので(糸スピンつけていただきました)、ご無理の無い範囲での再開を心から祈っています。

・緑陽社
https://www.ryokuyou.co.jp/doujin/
オフセット、オンデマンド両方。
ページ数の上限不明。私は700ページ以上でお願いしました。
相談すれば紙の取り寄せも何でも対応して頂けます。神。
早割+総集編割など割引の組み合わせ次第で40%オフとかできました。
余部サービスにとても助けられました。

・プリントオン
https://www.print-on.jp/doujin/doujin_index.htm
オンデマンド(オフセットは別ブランド)。
ページ数の上限不明。オンデマンドお見積もりで500ページ超をお見積もり頂きました。
締め切りがめちゃくちゃきついですが、オンデマンドで特殊加工の選択肢がとにかく広いです。

・印刷通販ちょいのま (やりとり/検討のみ)
https://choinoma.com/
オフセット、オンデマンド両方。1000ページまで可能(用紙種類による)。
早割などは無いのですが、そもそもが納品が爆速で設定されています。
なんといってもオンデマンドでPUR製本の選択肢があるのが神。
PUR製本は分厚い本ほどありがたみがあります。
HPに記載の無い用紙の取り寄せも問い合わせでご対応頂けるものもあるようでした。
お見積もり依頼からのレスポンスも爆速で、こちらが不勉強な事柄についてもとても分かりやすく丁寧にご回答頂けました。
制作実績には袋とじや上製本、角丸加工、スピン加工もあったのでお問い合わせで色々伺ってみると良いかもしれません。

おわりに


終わってません。クリアカバーの本を作りたい欲、全く収まっていません。

これからも楽しく本作りするぞ~~!

何か少しでも創作のヒントになりましたら幸いです。