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子犬を迎える前に知っておきたいこと ~「8週齢」の落とし穴と、本当に大切な「子犬の社会化」の話~
はじめに
子犬のつぶらな瞳に見つめられたり、よちよちと歩く姿を見たりすると、思わず「かわいい!」と声を上げてしまいますよね。子犬と暮らすことは、毎日に笑顔と癒しをもたらしてくれる、本当に素敵な経験です。
でも、その小さな命を預かるということは、大きな責任を伴います。特に、子犬の時期は、その後の成長に大きく影響する大切な時期。初めて犬を飼う方は、分からないことだらけで不安になることもあるかもしれません。
今回は、そんな皆さんに、子犬を迎える前に知っておきたい「子犬の社会化」と、動物愛護管理法で定められている「8週齢規制」について、大切なことを分かりやすくお話したいと思います。
「子犬の社会化」って何?
~犬が人間社会で幸せに暮らすための準備運動~
「子犬の社会化」とは、子犬が人間社会でストレスなく、安心して暮らしていくために必要なことを学ぶプロセスのことです。人間や他の犬とのコミュニケーション方法、様々な音や環境への慣れなどを学び、人間社会という「新しい世界」に適応するための、いわば「準備運動」のようなものです。
例えば、散歩中に他の犬に会って、お互いに匂いを嗅ぎ合って挨拶の仕方を学ぶことや、車やバイクの音、電車の音などに慣れること、色々な人に優しく触れられる経験をすることなどが「社会化」にあたります。
子犬は、生後4ヶ月頃までの時期が、特に社会化に適した「特別な時期」と言われています。この時期は、色々なことを吸収しやすく、新しい経験に対して柔軟に対応できるからです。
この時期に様々な経験をすることで、成犬になってからの無駄吠えや怖がり、攻撃性などの「問題行動」を防いだり、心身ともに健康な状態を保ったりすることに繋がります。
もし、あなたの家の近くで、いつも吠えている犬がいたら、どう思いますか?おそらく、少し怖いと感じるかもしれません。社会化が不足していると、犬自身も常に不安を感じ、周囲の人も困ってしまうことがあります。社会化は、犬と人間、双方にとって、より良い関係を築くための大切なステップなのです。
「8週齢規制」って?
~法律で定められたルール~
動物愛護管理法では、子犬を親兄弟から引き離して販売できるのは、生後8週齢以降と定められています。これは、幼い子犬が親から早くに引き離されることによる悪影響を防ぐための、大切なルールです。
しかし、この「8週齢」という一律の基準が、様々な問題を引き起こしていることも事実です。
「8週齢規制」の問題点
~見過ごせない問題~
個体差の無視
子犬の成長速度や社会化の進捗は、犬種や育った環境、性格などによって、一頭一頭大きく異なります。人間の子どもたちも、成長のスピードが違うように、犬も同じです。
8週齢という一律の基準では、まだ親兄弟と過ごすべき、もっと学びが必要な子犬が引き離されてしまう可能性があります。
生年月日の改ざん
悲しいことに、早く販売して利益を得ようとする悪質なブリーダーは、子犬の生年月日を偽ることがあります(環境省「報道発表資料」)。
早期に母犬から引き離された子犬は、社会性を十分に学ぶことができず、他の犬とのコミュニケーションが苦手になったり、「分離不安(飼い主と離れると不安になる状態)」になったりする可能性があります。
社会化の誤解
「8週齢以降に引き取れば、もう安心」という誤解を生む可能性があります。「8週齢」はあくまでも目安であり、社会化はその後も継続していくことが大切です。例えるなら、小学校に入学する前にひらがなを覚えたとしても、その後も漢字や算数など、色々なことを学び続けるのと同じです。
コミュニケーションに難がある子への配慮不足
生まれつき、あるいは過去の経験から、他の犬や人間とのコミュニケーションが苦手な子もいます。無理に他の犬と遊ばせたり、知らない人に触らせたりすることは、かえって大きなストレスを与えてしまい、吠えたり噛んだりするなどの「問題行動」につながる可能性があります。
本当に大切なこと
~子犬の幸せを第一に考える~
子犬を迎える上で最も大切なのは、「個々の犬の状況に合わせた対応」です。
信頼できるブリーダーから直接迎える
信頼できるブリーダーは、親犬の健康管理をしっかり行い、清潔な環境で愛情を持って子犬を育てています。また、子犬の社会化にも積極的に取り組み、人間や他の犬との良い関係を築くためのサポートをしてくれます。
子犬を迎える前に、ブリーダーの元を訪ね、飼育環境や親犬の様子を見せてもらうことをお勧めします。
引き渡し時期はブリーダーに任せる
適切なブリーダーは、画一的な週齢ではなく、個々の子犬の発育状況や性格、社会化の進捗を見極め、最適な時期に引き渡しを行います。焦らず、ブリーダーの判断を尊重しましょう。
ペットオークションやペットショップでの購入は慎重に
ペットオークションやペットショップでは、子犬がどのような環境で育ったのか、親犬がどのように飼育されているのかが不明瞭な場合が多く、早期の母子分離などの問題も起こりやすいです。
衝動買いは避け、じっくりと検討することが大切です。
まとめ
~子犬との幸せな生活のために~
子犬を迎えることは、本当に心躍る出来事です。しかし、その小さな命を預かるということは、大きな責任を伴います。
法律で定められた「8週齢」という数字にとらわれるのではなく、子犬一頭一頭の状況を理解し、愛情を持って育てることが何よりも大切です。
信頼できるブリーダーから迎え、適切な時期に引き取り、その後の社会化もしっかりと行うことで、犬との素晴らしい共同生活を送ることができるでしょう。
さいごに
この記事を読んで、子犬を迎えることについて、少しでも深く考えていただけるきっかけになれば、幸いです。