映画『すずめの戸締まり』は、金熊賞を獲るのか!?
今回はkayserが担当します。
2022年11月に公開が始まった新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』。新海監督が原作と脚本、監督を務める作品としては、今回で8本目の劇場公開作となります。公開されてからこれまで、日本における興行成績はすでに130億円を超えています。
そして、2023年2月16日より開幕されたドイツのベルリン国際映画祭では、「金熊賞」を競うコンペティション部門にノミネート。日本のアニメ映画がコンペティションにノミネートされるのは、2002年の宮崎駿監督作『千と千尋の神隠し』以来のことです。実に21年振りとのこと。この年、同作は「金熊賞」を受賞しました。
2月25日には審査結果が発表される予定。果たして、『すずめの戸締まり』は、「金熊賞」受賞となるか、世界中が注目していることでしょう。今回は、そんな『すずめの戸締まり』を紹介しながら、ベルリン国際映画祭の金熊賞の可能性についても考えたいと思います。
『すずめの戸締まり』とは
『すずめの戸締まり』は、『君の名は。』で知られる新海誠監督の最新作です。『君の名は。』でもわかるように、新海監督作品は、日本の都市や自然の美しさを繊細に表現し、音楽とのコラボレーションで独自の映像美を追及してきました。本作でも、その映像美はもちろんのこと健在で、観客の満足度を満たしてくれます。
幼い頃、震災を経験し母を亡くした女子高生のすずめが主人公。そんな彼女が、ある日出会った青年、草大とともに災いをもたらす「扉」を閉じるため各地を巡っていくというお話です。
各地の廃墟となってしまった場所に存在すでする「扉」。幼い頃、この「扉」の向こう側に迷い込んだすずめが、自身の過去と向き合い、未来へと歩んでいく姿を描いています。
新海誠監督作品といえば、『君の名は。』が興行収入251億円を記録し社会現象ともなりました。続く『天気の子』でも140億円超え、『すずめの戸締まり』もすでに130億円を突破しています。そんなスーパーヒットメーカーの新海監督が本作で選んだ題材は、東日本大震災でした。
東日本大震災を描くということ
『すずめの戸締まり』の中で、すずめが幼い頃に遭遇した震災とは、東日本大震災のことです。この時、まだ4才だったすずめはたった1人の家族である母を亡くしてしまいます。そんなすずめを引き取り育ててくれたのは、母の妹である環。
環の住む九州へ移り住み、そこで17歳となったすずめは、これまで封印してきた震災の記憶と初めて向き合うことになります。
この『すずめの戸締まり』で新海監督が今回、震災を描いた理由をあるインタビューで「ある種の後ろめたさ」だと答えています。11年前に震災が起きた時、東京にいて直接被災したとは言えない自分に何ができるのか、何をすべきなのか、これまで葛藤してきたと。
そして、今、震災を取り上げるのは、新型コロナウィルスや戦争といった社会情勢が理由だといいます。「1人ひとりの力ではなす術もない状況に翻弄される今という時代を描くとき、震災など災害は避けて通れない」と。
劇中にも登場する廃墟となってしまった場所にも、かつてそこに人がいて、生活を営んでいました。そのことに思いを馳せるということこそが、災害がもたらしたものを理解することだと監督はいいます。
扉を閉める度に過去の人たちの思いを感じていくすずめ。その彼女が過去の自分と向き合い、その時の自分を励ますことで、今の自分へもエールを送ることになる。それが本作の監督からのメッセージであり、最大のみどころです。
ベルリン国際映画祭のコンペティションにノミネート
そんな『すずめの戸締まり』が、ベルリン国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされたことが、多くのメディアで報道されました。『千と千尋の神隠し』以来21年振りの快挙を果たすかどうか。世界中が注目していることでしょう。
この作品が世界の観客にどう受け止められているのか、多くの震災などの災害を経験した日本から発信された本作が、世界の人たちにどう影響を与えたのか。非常に気になるところ。
実際に、災害を経験した人の中には、触れてほしくない人もいるでしょう。一方で、風化させてはいけないと思う人もいることと思います。いろいろな思いが錯綜している中、2月25日には、いよいよ結果が発表されます。
もし「金熊賞」受賞となれば、それは作品が認められたことはもちろんですが、本作で取り上げたテーマを世界的に考えるきっかけのひとつになるかもしれません。そういう意味でも、いい結果を出せたらいいなと思います。
kayser
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